倉雁洋の蔵の中

まあ、そうはいってもまーたすぐ戻ってきそうな気はするんですけどねー。

歯車仕掛けの女の子

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「まったくね。私の仕事を増やさないでほしいわ。ってことで、はい」
「ござ?」
 
 縁さんがまた鞄から何かを取り出し、司に渡していた。……何処かで見たことのある手帳。
 いやまて、それは間違いなく。
 
「司奈ちゃん、月曜日から倉雁高校2年生だから。住所は面倒くさいから平賀君とこにしておいたわ」
 
 うん。うちの高校の生徒手帳だ。
 
 …………。
 
「「「ええええええ!」」」
 
 その場にいた縁さん以外の全員が硬直し、一拍置いた後源六以外が綺麗にそろえて声を上げた。ちょっと待て。この人は何をさらっと言ってくれてるのだ!? 高校だけならともかく、うちに下宿なんて聞いていないぞ?!
 
「なに、乗り気じゃないの? ちゃんと生活費とかはこっちで支給するわよ。もちろん色付けて」
「いやその、そうじゃなくて!?」
「じゃあ何? ……理事長には話通ってるわよ? あの人、うちとの付き合いも古いから二つ返事でOKくれたわ」
 
 理事長、昔から顔が広かったがそんなところにもコネがあったとは。
 
「で、でも、別に均の所に住まなくったって……近くのマンションとか」
「んー却下ね。一つ、予算がもったいない。二つ、司奈ちゃんの生活能力が微妙。三つ、私が楽しめる。ね? どれをとっても平賀君とこに住むのがいいでしょ?」
「楽しめるってなんですか!?」
 
「そりゃ勿論、平賀君が口ではノーと言いながら司奈ちゃんのちょっとしたしぐさにドキッとして徐々に徐々にロリぃもしくはショタぃ方向に転落していく様を各機関の最高の科学力を持って作り上げたこの『絶対にばれない隠しカメラ&盗聴器』を使って廃もといハイデジタル録画して同士達に――」
 
「そ、そそそんなこと聞いてないです!」
「――あらそう残念。後三十分は語れそうだったのに」
 
 もういいです、出来れば黙っていてください縁さん。後俺を勝手に変な方向に持っていく妄想をしないでください。ついでにそんな怪しいものを開発した機関は事業仕分けしてください。予算あげないでいいです。
 
「あのえと、それに司奈ちゃんは女の子なんですよ!? 一人暮らしの男の子と一緒に暮らすってのはどうかと……ほら、私の家とかなら今部屋余ってますし、なんとか私が両親に言って――」
「却下」
「――あう……」
 
 次美がせっかく世間一般的な常識から縁さんを諭そうとするが、片手を上げた縁さんに止められる。
 
「一応『戦間司』で転校手続き取ったから。学校では、司奈ちゃんは司君っていう男の子よ? 思春期の男の子と女の子が同棲しちゃまずいでしょ」
「え! い、いや、ええ!?」
 
 縁さんが極めて常識的な言葉で次美を黙らせてしまった。……ちょっと待て、確かに『思春期の男と女が同棲しちゃまずい』という事はわかるが、何かがおかしい。
 つまり、学校では昨日みたいに『戦間司』として生活しろということなのか。そうすると、学校側としては俺、つまり男と共同生活してるって認識になる、と。決して同棲ではなく。
 ……うわ、ものすごい詭弁。
 どうしたものかと、ちらりと司奈の顔を見る。すると司奈もこちらを見ていたのか、二人の目があった。俺の目線に、司奈は若干顔を赤らめ何かを期待しているような瞳をしていた。
 
 ………。
 
 見つめあうこと数秒間。……少しばかり悩んだが、俺の答えなんてひとつしかないだろう。
 
「ほら! 均も何とか言って――」
「わかった、うちで構わないんならいいですよ」
「――え! ちょ、均!?」「――平賀殿……」
 
 俺の言葉に次美と司奈が驚く。特に司奈は俺の言葉を聞いた瞬間、大きく目を見開いていた。縁さんは気にせずパフェを食べているが、若干俺を見ている目がにやにやとしている。
 
「あら、案外すんなり認めてくれるのね。もうちょっと渋るかと思ったんだけど」
「正直、困りますが……何にせよ、楽しそうですから。それでいいです」
「ん……若いうちはそれでいいと思うわよ。司奈ちゃんもいいわよね?」
 
 俺、そして縁さんの目が司奈に向く。司奈は変わらず目を見開いたままだったが、そのまま悩んだように目を閉じ、そしてゆっくりと開いた。
 
「拙者は……大歓迎でござるよ……!」
 
 その顔に喜色をいっぱいに広げ。精一杯の笑顔を見せた彼女は、本当に嬉しそうだった。
 
「……うぅう〜。せっかく接近できたのに……どうしてこうなるの!」
「……仲良きことは美しき哉……と言いたいところだが、俺の胃腸は持つのだろうか……?」
 
 次美と源六がそれぞれ何かつぶやいてたがここは無視の方向で。気にしたら負けな気がする。
 
「それじゃあそういうことで。あ、ここの払いは任せなさい! 経費に出しとくから」
「あ、ちょ、縁さん!? 私はまだ――」
 
 言うが早いか、縁さんはさっさとファミレスから出ていった。いつの間にかあのパフェも食べつくしている。……本当に、最初から最後まで変な人だった。
 残されたのは、俺と司奈、次美、そして源六。
 時刻は十五時。まだまだ今日という日は長い。
 
「……とりあえずどうする?」
 
 このまま帰るのももったいないので、俺は何の気なしに他の三人に聞いてみた。
 
「はいはいはい!」
「おお司奈、元気だな。はい、それじゃどうぞ」
「はい! 拙者、買い出しに行きたいでござる! せっかく平賀殿の家に暮らすようになるなら、いろいろ買っときたいでござる!」
 
 ――皆で買い出しに行く。
 そういえば、昨日もそう言っていたんだったな。結局あの人形の所為でおじゃんになってしまっていたし、確かにこの機会に行っておくのもいいかもしれない。
 
「そうだな、俺もそれでいいぞ。次美も源六も、それでいいか?」
「…………(どうやったら私も均の家に住めるようになるかしら……? 手っ取り早いのは、やっぱり両親をキュッと)……え? あ、うん、私もそれでいいよ?」
「……俺も問題ない……が、後で薬局も寄ってくれ。……胃薬を買い込んでおく」
 
 次美はとりあえず了解してくれた。何かブツブツと言っていたが……まあいいか。そして源六。そう切実に言うのは止めてくれ。
 
「……OK、何か不安もあるがとりあえずウィンドウショッピングとしゃれこみますか。俺も久しぶりに服ほしいしな。新作のジャージとかあるかな?」
 
 満場一致で買い出しに決定。と、なればショッピングモールがいいだろう。あそこなら服から日用雑貨から、大抵の物は手に入る。
 
「早く行くござるよ! 平賀殿!」
「こら、手を引っ張るな。お前は犬か!」
「あ! 司奈ちゃん、待ちなさいよ! ずるいわ!」
「……ダース単位の胃薬が必要そうだな……」
 
 俺達はファミレスから出ると、皆そろって歩き出した。
 一昨日死にかけて以来色々なことがあったが、俺達はこうして誰も欠けることなく今を生きている。きっと、まだこの四人で色々あるんだろう。
 
 俺はふと、この全員の顔を見渡す。大きさも色も全てがばらばらな、四つの歯車。
 それらはキリキリ、キリキリと。
 
 ――今日も、仲良くかみ合って廻る。
 
 
 
 
 
歯車仕掛けの女の子 完
 
 エピローグ 裏へ続く
 
 
 
 
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閉じる コメント(6)

続きが期待できますね、このお話は…(笑)
ここで終わらせるのは、勿体無い気がします。

2010/9/15(水) 午後 10:18 [ - ]

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そんなAKARIさんには、次のエピローグ裏をお勧めします(笑)
一応、続編の構想だけはあるんですけどね。

2010/9/15(水) 午後 10:20 倉雁 洋

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期待できますねー^^
本になったら絶対買います

2010/11/21(日) 午前 10:21 [ - ]

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赤猫さん。
期待していただけて何よりで……一応、続編の構想だけはあるんですけどねー。
本には……色々と事情があって、難しそうです(笑)。

2010/11/21(日) 午後 6:00 倉雁 洋

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なんか続きを予感させる感じでしたが、
とりあえずHappyな終わり方でよかったです☆
・・・ただ、源ちゃんの胃腸が心配です(;一_一)

2010/12/21(火) 午後 11:13 [ セツ ]

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セツさん。
源ちゃんこと源六の胃腸は、外伝であからさまにまずくなってます(笑)。
続き、構想だけはあるんですけどね。
書くのはいつになる事やら。

2010/12/22(水) 午前 6:23 倉雁 洋


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