倉雁洋の蔵の中

まあ、そうはいってもまーたすぐ戻ってきそうな気はするんですけどねー。

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※まともに想像するとかなりホラーなのでグロ注意。
 
 
 
 
 
「ックソ! 何故だ、なんでチエが負けた!」
 
 その部屋は、いつもと変わらず暗闇の中にあった。しかし今までの闇とは違う。かつてはおぼろげなモニタの青い光が僅かに照らしていたその部屋は、今一瞬を閃く紫電の光に照らされていた。バチバチと音を立てて輝く青い電流が、仄暗い部屋を一瞬輝かせる。
 電気を放っているのはかつてのモニタだった。何か頑丈な物で上からたたかれ、ひしゃげて中の機械がはみ出している。電流は、そのはみ出した機械から放出されていた。
 モニタだけではない。かつて足もとに散らばっていた書類も今は無残なほどに破かれ。暗幕も、すでにその役を果たせなくなっている。
 そしてかつて整然としていた部屋の奥は散らかり、激しい異臭に包まれていた。棚にはもうかつての犠牲者たちはいない。彼女たちは今、瓶ごと地面にたたき落とされ、さらに踏みにじられてその原型を無くしていた。すでに、何人の犠牲者がいたのかもわからない状態である。
 
 そうした惨劇の全ては、今部屋の中心で呆然と立ち尽くす男が原因だった。やせ細っていた体のあちこちに傷を着つけ、眼鏡は割れ、ただ血走った瞳でモニタだった物を見つめている。それが、かつてチエに――首刈り人形に主人と言われた男であり、今回の事件の首謀者であった。
 
「僕が作ったんだぞ! 僕は神なんだ、神が作ったものが負けるはずないじゃないか!!」
 
 あり得ない。認められない。
 元々、彼は壊れていた。それでもチエという存在が、否、チエという存在を通してみる己の栄光だけが彼を支えていた全てだった。それがつい先ほど、全て否定されてしまったのである。男という物が、全て。
 現実を受け入れなくなった彼は、もう現実そのものを否定するしかできなかった。
 
「ガァァァァ!」
 
 彼は一人で踊り続ける。相手のいないダンスは、ただ紙を切り、ガラスを割り、棚を壊し、己を傷めつけた。
 ……そうしてひとしきり暴れ回ってようやく、男は静かになった。肩で息をしながら、血走った瞳で呟く。
 
「……そうか、チエが完璧じゃなかったのがいけなかったんだ。そうだよ、僕が悪いんじゃなくて、僕が作ったものがたまたま悪かっただけだ!」
 
 ……ああ、彼はこの期に及んでも自分の非を認められない。彼は今まで自分を支えていたものですら否定して、夢の中を生きようとする。もはや彼に、利用価値は、ない。
 
 ガチャ。
 
「誰だ! ……あんたか。ちょうどいい、今連絡しようと思っていたんだ」
 
 コツコツコツ。
 その闖入者は土足で部屋に上がるが、男は気にもしていないようだった。すでにそんなことすら目に入らなくなっている。
 
「そうだ、あんたにもらった『資料』と『材料』であそこまで作れたんだ。もっといい材料をくれれば、最高のモノができる! なあ、頼むよ。今度こそあいつ等を潰したいんだ!」
 
 男が何か言っていたが、それを見る闖入者の目は冷たかった。それはかつて、男が平賀達に向けていた目線。人を人と思わない、凍った目。
 人からもらったものを組み立てただけの分際で、神を名乗るなど腹立たしい。闖入者にとって、彼は数多ある実験の一つでしかなかった。ただ彼が試したかった機能を使わせるのに、都合のいい人材を選んだだけである。
 
「おい! あんた、聞いてるのか! ……なぁ、あんたが持ってるそれ、なんだ?」
「コレか? お前が作った人形だ」
「チエ!」
 
 ドサリ。
 闖入者が掲げた大きな袋の中から、上半身だけの首刈り人形が――チエが、姿を現した。首は継ぎはぎされ、右肩から下は全て失っている。残った腕で這いずり、それでも彼女は何も宿さぬガラスの瞳で己の主を見上げていた。表情は、何も変わらない。
 
「もうしわけございません、ごしゅじんさま」
 
 人よりも丈夫な人形とはいえ、普通はここまで見事に壊されると機能停止する。今まであの組織が戦ってきた人形であったなら終わっていただろうが、今実験を行っていたこの人形は一部新しい機能が付いている。図らずもその成果が確認できただけで、闖入者は満足していた。
 
「この! ポンコツが! 何負けてるんだ、この! この! お前なんかスクラップだ!パーツもいらん! さっさと壊れてしまえ!!」
 
 男は己の創造物を己の足で踏みつけていた。当然、丈夫な人形がそれで壊れるはずもない。闖入者から見ればあまりにも愚かな行為。しかし彼は、その行為に何か意味があると信じているようだった。
 その行為を受け続けても、人形はその瞳で元主人を見上げ続けていた。その瞳は何も映さない。何も感じない。何も思わない。
 
「ごしゅじんさま」
「知るか! もう僕をご主人なんて呼ぶな! 僕は新しい人形を作るんだ!」
「それは結構。確かに、お前はもう主人ではない」
 
 パチンと、闖入者が指を鳴らす。
 
「は?」
 
 ドス!
 
 その瞬間、男の胸に激痛が走った。僅かに目線を下げてみれば、そこにあるのは異物。人の腕を模したもの。――己の人形の、腕。
 
「は……チエ……なんで?」
 
 それがその男の最期の言葉だった。彼が見たのは、自分が作り出した人形の何も映さない瞳。その何も思わない瞳が、ただ自分を冷たく見下ろしている光景だった。
 ずるりと、かつて主人だったモノの胸から人形は心臓を抜き取る。闖入者が手を上げると、人形は何の躊躇も無くそれを握りつぶした。
 
「フン、何も面白くない」
「申し訳ございませんでした、ご主人様。少々、処分に手間取ってしまいました」
 
 人形が血にまみれた体のまま、闖入者の前へと這いずってくる。その姿はまさしく異形。怪談の中の出来事のようだった。
 
「いや、君の所為じゃない。それにしてももう効果が出てきたのか。これは驚いたな」
 
 闖入者は、ここに来るまでに少しだけチエの頭の中をいじっていた。いい加減に作られたためにねじれた言語機能の修復のため。そして、己が主となるために。
 主人変更はともかく、言語機能は本来ならもう効果が出るまでもう少し時間がかかると思っていたが、かなり早く効果が出てきたらしい。
 闖入者が思ったほど、元主人は悪い頭を持っていなかったようである。
 
「――まぁ、今更どうでもいい。さっさと帰ろう。君に新しいパーツを用意しなければな」
「ありがとうございます、ご主人様」
 
 ペキャリ。
 その音だけを残して、男たちは去っていく。彼らがいなくなった後、そこに残されていた物。それは犠牲者たちの首の残骸と、胸部を貫かれ頭を踏み潰された何かだけだった。
 
 
 歯車とは、本来何のためにあるのか?
 歯車とは、本来何かを動かすためにある。
 では、この歯車は何を動かすのか。
 誰もその事を知らないまま、キリキリ、キリキリと。
 
 ――今日も、歯車は廻り続ける。
 
 
 
 
 
歯車仕掛けの女の子  ――完?
 
 
 
 
 
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終わってしまった・・・。

実に楽しかったです!

ありがとうございました(笑)

2010/12/14(火) 午後 3:31 [ 蒼霜 ことり ]

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蒼霜さん。
いえいえ、お粗末さまでした。
最近小説書いてないですけど、いつでもおいで下さいませ。

2010/12/14(火) 午後 3:33 倉雁 洋

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終わっちゃいましたか〜( 一一)
おもしろかったです〜☆
ありがとうございましたっ

2010/12/21(火) 午後 11:19 [ セツ ]

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セツさん。
お粗末さまでしたー。
喜んでいただけたようで嬉しいです。
こちらこそ、読んでくださってありがとうございますね!

2010/12/22(水) 午前 6:25 倉雁 洋

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楽しく読ませてもらいました。また、訪問させてください。宜しく。

2011/2/20(日) 午後 11:50 [ feiken ]

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feikenさん。
ご読了、ありがとうございました。
いつでもお越しくださいませ!

2011/2/21(月) 午前 5:55 倉雁 洋

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っふー、一息つきます^^ 面白かった、深かったです^^

2011/6/29(水) 午後 1:18 [ ヤマト ]

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おれんじはーとさん。
楽しんでいただけたようで幸いです。
またどうぞー。

2011/6/29(水) 午後 7:43 倉雁 洋


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