倉雁洋の蔵の中

まあ、そうはいってもまーたすぐ戻ってきそうな気はするんですけどねー。

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ひとまずは。

新作、『しけた英雄の使い道。』人呼んで『しけゆう。』のプロローグ〜三までが掲載終わりました。
元々ここまで今日あげる予定だったんですが、少し手直ししてたら時間かかりました。
途中で読んでくれた方、スイマセン。
一応、8万〜10万字の長編ぐらいの作品を目指しています。

今回の主人公のイアン。まぁ名前は適当なんですけど。
ぶっちぎりで私の作品の主人公年齢を引き上げてます。
三十九って。四十路手前って。
自分より年上の人間をどうやって描いていくかの練習でもあるのですが、これは難しそう。
今までは一人称、今回は一応三人称ですしね。練習練習。
プロローグの人達は次ぐらいで合流してきます。

時代背景とかは適当なのであしからず。16世紀位に蒸気機関を突っ込むとか、そんなノリでしょうか。
あくまでフィクションであり、現実とは何も関係ありません。

そうそう、なりダンX、ひとまずノーム倒しました。鍛えたら時間かかる。

それでは今日のところはここまでで。
皆さま、本日もお越しいただきありがとうございました。それでは、良い夜を。
「おい、イアン。うちで食ってくのは構わないけど、いい加減つけ払えって」
「スマン、今金欠でなぁ」
「ほんっとうにすいません! あの、僕が払いますから……」
 
 それならまあ、と言って奥に引っ込む店主。
 とある路地の奥まった場所。そこにそのパブはあった。この辺りは大きなゴミ捨て場が近くにある所為で、土地の値段が安い。そのおかげで安く食べられるこの店を、イアンは気に入っていた。一兵卒時代からたびたび訪れているが……最近は、少し店主の態度が芳しくない。何所か、イアンの事を腫れものを扱うような感じになってきている。
 それも当然か、とイアンは思う。いい加減つけを貯めすぎた。この年齢となればさすがに出生払いも効きそうにない。正直、店主から見て上客どころかお荷物でしかないだろう。
 だが生憎と、このイアンという人間はそんな状況でもへらへらと笑い続ける人間だった。店主には悪いが、追い出されるまでは此処にいる。そう、イアンは決めていた。
 二人は大きな丸テーブルに隣り合って座る。店の中には、もう結構な数の客が来ていた。数少ない給仕たちがせわしなさそうに働いている。
 
「って、隊長お酒飲むつもりですか? 弱いんだからやめてくださいよ」
「んー、でも飲まないってのもなぁ。少しだけにしておくさ」
 
 イアンとリックの前には葡萄酒。意外かもしれないが、リックの方が酒は飲める。孤児院では暖房器具の使用が限られていたため、早くから飲んでいたからだ。その点、何年飲んでもイアンはほとんど酒が飲めない。一時期はあっちこっちで飲まされていたが、最近ではそう呼ばれることも無い。
 一杯の葡萄酒をチビチビと飲む四十路手前のおっさん。
 その姿に哀愁を感じずして何から感じろと言うのか。
 
「やれやれ、相変わらずしけてますね!」
 
 ふと、そんなイアン達に話しかけてくる人物がいた。うざったいまでの長い金髪、ムカつくほど爽やかな青い目、人目を引く長身。そして、常に幸せそうににやけているその笑顔。イアンの対極にいるようなその男はイアンの隣の席に勝手に座ると、給仕に適当に料理を持ってくるように指示を飛ばした。
 そんな人物を見るイアンやリックの目は厳しい。リックはともかく、イアンがこれだけ嫌そうな目で他人を見るのは珍しいことだった。普段の彼なら、大抵どんな相手に対してものへっとした目線を送る。
 
「イシュー……どっから湧いてくるんだよ」
「固いこと言わないでくださいよ、イアン。私と君の仲じゃないか」
 
 じと目で二人に睨みつけられても、我関せずにふるまうエセイケ面。店の中にいる女の子に声をかけながら、イアンの呟きに答えていた。
 自称、遊び人のイシュー。どこぞの貴族の息子とか言うふれこみの彼は、イアンより少し年下。つまりは三十路すぎ。それでもこれだけ遊び回っているのは何の冗談だろうかと、孤児院出身のリックはいつも思う。
 
「イシューさんも暇そうですよね……うちの隊長とどっこいじゃないですか?」
「はは、リック君。そんなことを言うものじゃないよ。私の方がどう考えたって仕事しているでしょう?」
「……遊び人なのに?」
「遊び人だからこそ、です!」
 
 リックの言葉に即座に反応し、立ちあがって叫ぶイシュー。足をテーブルにガッとのせ、店の中を見渡しながら演説を始める。
 
「遊び人とはそもそも何か。それはそう、遊ぶ人の事です。ただ遊んでいるわけじゃない、遊ぶことを職業としているということ。それは一体どれだけに困難な職業でしょうか、なぜなら仕事していても周りからは遊んでいるとしか見られず決して仕事しているとは思われないのですから。仕事をしているはずなのに誰も金を払ってはくれない! ああ、何と言う世知辛い世の中! これほどに失業者が世に溢れ、もはやどんな仕事も貴賎なしとまで言われるようになったというのに我々遊び人の仕事は蔑まれたまま! そんな失業者達に国は何をしてくれているだろう、炊き出し? 彼らが求めるのはそんな物ではない! 彼らに必要なのは、そう、仕事なのです! 我々が我々らしく、人間が人間らしく生きていくためには社会に貢献していきたい! それは遊び人とて同じこと、否! 遊び人として仕事を見つけその体を世間の冷たい目線に曝し続ける我々をこそ国は認めるべきだ! つまり何が言いたいかというと私も仕事しているのだということだよ、分かったかいリック君!」
「……はぁ」
「いいぞあんちゃん!」
「でも仕事しろよ!」
「ありがとう諸君! 今日の私は機嫌がいい、なぜならギャンブルでたっぷり勝ったから! さあ、ここの払いは任せてください!」
 
 おおおっ!! と店中で雄たけびが聞こえてくる。その直後、注文の嵐が数少ないスタッフを困らせることになった。その原因を作った男は、いい仕事をしたと満足げな笑顔を作って改めて席に着く。イアンとリックはただただその店の雰囲気に圧倒されていた。
 
「相変わらず金遣いが荒いなぁ、イシューは。親父さんも泣くんじゃないか?」
「別に構わないでしょう。ただ使わずにため込むよりは、私みたいな放蕩息子が使った方が経済を回せるってものです」
 
 貯蓄は消費を滞らせ、消費が減れば国の経済が弱まる。何処かの学者だかが唱えたその新しい説を、このイシューという男は何かと引き合いに出してくる。単に自分の浪費を正当化するための詭弁としか思えないが、学のないイアンにしてみればその真実は分からない。偉い学者が言ったんならそうなんだろ、という程度にしか考えていなかった。
 そうこうしているうちに、テーブルの上にはどんどんとイシューが頼んだ食事が運ばれてくる。見るからに、イシュー一人に対して多すぎる。
 
「おいおい、そんなに頼んでも食べきれないだろう」
「君達も手伝ってください。それでも無理なら残せばいいでしょう?」
「だ、ダメですよ!」
 
 イシューの言葉に一番反応したのは、他ならぬリックだった。彼にしてみれば、これほどの料理は見たことが無いどころか目の毒。どうにも心配になってしまう。
 
「そんな事をしたら、『赤い髪の魔女』に攫われますよ!?
 
 赤い顔をして叫ぶリック。喧騒に包まれていた店の中でも、その高い声はよく通った。店中の人間が彼の顔に注目している。
 
『プッ、ワハハハハハハ!!
 
 次の瞬間、店の中は爆笑の渦に巻き込まれた。中にはリックに対して拍手を送っている輩もいる。その笑いの中で、ただリックとイアンの王国中央軍第二十番隊の面々だけが静かにしていた。イアンは少しだけ真面目な顔をして無言。リックは顔を真っ赤にして俯いている。
 
「ハハハ、『赤い髪の魔女』は懐かしいですね。昔話の、悪魔たちを従えた魔女。子どもの頃は悪いことをしたら連れて行かれるぞっていうのが大人たちの脅し文句でしたね。いやぁ、懐かしい。こんな時代になってからすっかり聞かなくなってました!」
 
 イシューは葡萄酒を飲みながら、心底面白そうにそう言った。食べ物を残したら『赤い髪の魔女』に連れて行かれる。物を大切にしなければ『赤い髪の魔女』に連れて行かれる。イシューくらいの歳の人間は、常にそうやって戒められてきた。
 しかし大戦からこちら、王国はずっと発展を続けてきている。巷には新製品が毎日のように発売され、以前から使っていた物はすぐさま捨てられる。そんな生活が普通になってしまったこの国では、すでに『赤い髪の魔女』も効果が無くなってしまっていた。
 大人たちがそんな生活をしているのに、どうして子ども達を戒められようか?
 この国では、もはやそうした伝承も数を減らして来ていた。科学の可能性が広がっていく。山は穴をあけられた。森は切り開かれた。そこに、魔女はいなかった。
 ――すでに、この国に魔女の住む場所はない。
 
「……まぁ、俺も子どもの頃は村の人達に口を酸っぱくして言われたからな。『赤い髪の魔女』が来るって。だから俺は未だに割れた皿で飯を食ってるぞ」
「……隊長は早く食器を変えてください。あれ、スープが零れるんです。もったいない」
 
 イアンは隣で俯いているリックの赤髪にポンポンと手を乗せる。思えばリックの髪も燃えるような赤髪。何らかしら、思うところがあるのかも知れない。リックも口ではそっけない言い方をしているが、それほど嫌がっているわけでもないようだった。
 
「いやぁ、リック君も面白い。今まで半年以上経ってイアンとそんなに仲良くしている兵士は初めてですよ。大抵はもう来なくなるか、呆れるかで関わらないようにするかのどっちかですから。そうしてるとアレですね、親子……いや、恋人みたいですね」
「誰がですかっ!?
 
 リックがイアンの手を振り払いながら立ち上がる。その顔は真っ赤なままだった。
 
「いや、リック君女みたいな顔してますし、結構ありかと思ったんですけど。今リック君、いくつでしたっけ?」
「やめてくださいよ! 僕は男ですし、仮に女だとしてもこんなうだつの上がらない中年のおっさんなんて絶対お断りです! 歳は十五です!」
「ほんと、お前は言うねぇ」
 
 リックの物言いに若干イアンも引いているが、彼はお構いなしだった。どれだけイアンが無能か、どれだけ使い道がないかをこんこんとイシューに説いていく。
 イシューの方はそれを面白がって聞いているだけだった。
 
「――だから僕がイアン隊長とだなんてあり得ない、って何ニヤニヤしてるんですか! 僕の話聞いてますか!?
「ええ、聞いてます聞いてます。――そうか、それだけイアンの事を知ってるのですね」
 
 リックに怒られながらも、イシューは楽しそうだった。
 さっき彼が言った通り、この部隊に配属されて半年でこれほどにイアンの事を理解しようとする人間は皆無だった。だいたいが辞めるか諦めるか。そのことが、イアンの親友を自称しているイシューには嬉しかった。
 イシューはにやにやしながらも、テーブルに載せられた料理を指差す。
 
「とりあえずこれを片付けましょう。もったいないというのなら、リック君が頑張って食べればいい。私は応援しましょう」
「だから、僕の話を……って、確かにせっかくの料理が冷めちゃうのももったいない! ほら隊長、さっさと手を動かして下さい! 足がダメでも手と口は動くでしょ!」
 
 そう言いながら、リックはその料理群をテキパキと小皿に分けて行く。何気にイアンに渡す量が多いのは嫌がらせなのかそれとも無意識の好意からなのか。
 なんにせよ、その日イアン隊+αは騒がしく面白い夜を過ごしたのだった。
 
 
 
(四へ続く)
 
 
 
 
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第二弾。その他編。


久野部 道 くのべ どう

名前のネタ:
敵の人形……木偶?→ 『木偶坊』→ でくのぼう DEKUNO BOU → KUNOBE DOU くのべ どう

ひきこもりつつ、神(笑)を目指した人。
黒幕にして捨て駒。この後に事は私も知りません。
頭は悪くないらしい。

実は最初は首を集める気がなかったり。
うっかり「君にもっと相応しい顔があれば」とか人形に言っちゃったら、
人形が勝手に首刈りしてきちゃって心がぶっ壊れたという設定があったりなかったり。

彼が殺された時を想像すると、何気に一番ホラーな気がする。


チエ(首刈り人形) ちえ

イメージ 1
『キャラクターなんとか機』(DLは此処)+「少年少女(navy) / にせ 様」の追加素材により作成

名前のネタ:
リ○ちゃん人形 → ○カ → 理科 → Science → Cie → チエ

敵の人形。
青い(っぽい)ショートヘア、メイド服なお嬢さん。
たぶん、久野部の趣味。彼の手作りの服に違いない。
次美の顔がついても青髪は変えなかったのかな?
戦闘能力は比較的高くない方。脚力、移動力に関しては司奈もびっくりの性能。
特殊能力:異常なタフネス(修復機能?)の実験も兼ねてる。

ちなみに、首刈りをするときは、

1.チエちゃん、ビデオをもって街に出る
2.大通りとかで、女性を撮影。目立たないように注意。
3.帰る。久野部にビデオを渡して彼が気にいったらその女性を探す。気にいらなかったら1に戻る。
4.街中を探して、目的の女性を発見。いちいち目の前まで出て、宣告。
5.その後、怯える所を観察しながら、適当な時期に狩りをおこなう。

って感じ。次美の時は家まで後をつけてから報告して、さっさと狩りに来た。


戦間 縁 いくさま ゆかり


名前のネタ:
機械……エンジン? → エン → 縁 → じゃ、ゆかりで。

ショートヘア、眼鏡かけた理知的な女性。キャリアウーマン風。
年齢は秘密。
スリーサイズ:脱いだらすごいわよ?
かなりの変態淑女。それだけは譲れない。
能力はかなり高いはず。
ぽっと出で作ったから、あまり設定がないのが悲しいところ。
ショタ、ロリ、どちらでもOKである。
たぶん、乙女。

どの場面でも唐突に登場させられる、便利な人。
ただし真面目に話が進まなくなる恐れもある両刃の剣。



戦間 玄 いくさま げん

名前のネタ:
その場の直感

諸悪の根源その1。
執念の人。
司奈の実の父親。
結構な狂人だったっぽい。娘を蘇らせようと思うこととか。
ただし、司奈にかけた愛情は本物だった。


三賀 瑠曼 さんが るまん

名前のネタ:
あえて触れず。

諸悪の根源その2。
たぶん、興味本位で司奈作成を手伝った人。
多くは語れない。

何処にでも出てこれるあやしい錬金術を使える人、を考えたら、自然とこの人に。

たぶん知っている人には有名な、あの人。
もちろん作品内だけの設定で、現実世界のあの人とは関係ありません。
行方不明、生死不明。
生きてても不思議じゃない不思議な人。


以上。
思ったよりも少ないですね。
一応、外伝に備えて源六の妹とか母とか祖父とか恋人候補? とか名前もありますがそれはまたいつか。

そんなこんなで。

結局、『TOP なりきりダンジョンX』を買ってきました。
やっぱテイルズの戦闘はそれなりに面白いですね。
爽快感がある……んだけど、やっぱ昔より楽しめないのは歳かなー。
対象年齢的にもすでにアレだし。いつまでも少年でいたいと思う今日この頃なのに。
っていうか途中までやってて、とある軽音楽部のワンダーシェフが出てきたとこで思わず突っ込み。
いや、テイルズ何やってんすか(笑)。
普通に知らなかったから結構びっくりしましたね。
そんな話をしてると趣味がアレなのばれますが。

今はシルフと契約したばかり。少しレベル上げてきますかね。


さて。
お気づきの方もいると思いますが、左メニューが増えました。
『しけた英雄の使い道。』。こうやって書くと『。』を二回使わなきゃならんという微妙なタイトル。
いえね、たまには現代ものじゃないのも練習しようと思ってとりあえず掲載してみました。
まだ全部書き上がってないので、最後まで言ったら一気に書きなおされる可能性もありますが、
まあβ版みたいな感じです。
内容的には少しギャグ目のヒロイックサーガっぽい話を目指そうと思ったんですけど、私にコメディは無理だと断念。普通に書いていたら不思議と暗くなっていく妙な作品に仕上がってます。
頭の中では完結してエピローグ、スタッフロールまで見えてるんですけど、これを形にしていくのはいつになるやら。気長に待っていてくださいませ。
いや、その前に面白いかどうかもまだ判断できないでしょうけどね(笑)。

とにかく、しばらくはこの『しけゆう。』にお付き合いください。

では、この記事はこの辺りで。失礼します。

追記:
『しけゆう。』だとまおゆう見たいになってしまう。
うーん、『しけ』、『しけえい』、『しけ雄(オス)』……何でもいいか(笑)。
「ほらほら、もっと腰入れてドブあさらないと、全部綺麗にならないぞ」
「隊長……は、見てる……だけ。だから……いいですけどっ! こっちはもう腰が痛くてしょうがないんですよ!」
「腰が痛いだなんてそんな。まだ若いんだから頑張れよ。女の子に嫌われるぞ?」
「何の話ですかっ!」
 
 サディアス王国の首都サディアス。鉄とレンガでできたこの街も、大戦が終わってから人口が増加の一途をたどり続けている。それだけ人が増えてくるとやはり街も汚れてくるもので、道端にはゴミが散乱していることもしばしばだった。
 当然、国としては住環境も気をつけなければならず、ゴミが詰まって悪臭を放ち始めたドブには住民たちの苦情が殺到していた。そうした所をあさり綺麗にするのが……何故かイアン隊こと王国中央軍第二十番隊の役割だったのである。
 袖と裾をまくり、腰に下げていた剣を外したリックが必死にドブをあさる。そろそろ秋風が冷たくなってくる頃。ドブの中の水も冷たくなってきており、それに手足を突っ込んでいるリックとしてはたまったものじゃない。鼻もまがりそうだった。
 そんなつらそうなリックをよそに、隊長であるイアンはただその光景をぼーっと見ていた。
 
「おう、イアン! 今日も暇そうだな!」
「はは、俺はそれぐらいがちょうどいいだろ」
「ちょっとイアンさん。うちの周りのドブも綺麗にしてくれないかい?」
「んー、まぁ大丈夫かな。後で行くよ」
 
 そんなイアンに次々に話しかけて行く街の人々。誰もがイアンに気兼ねなく接し、彼に笑いかけてくる。かつてはイアンに熱狂していた国民達も、今では遠慮なく彼に話しかけてくる。その有様はどちらかというと近所の有名人。元英雄という感じはしないが、むしろそれがイアンらしくもあった。
 ただし、声をかけてくるのは精々二十代半ば以上。それも、年々減ってきている。それよりも若い子ども達はイアンに全く興味が無く、むしろ遠目にその冴えないおっさんの事を見て、嘲笑すらしているようだった。
 これが、イアンという人間の位置。忘れ去られて行く、過去の英雄という立場。彼自身が自分の銅像などを拒み、その姿を残すことを良しとしなかった事もそれに拍車をかけた。彼は決して自分から表に立とうとしない。いつだって――祭り上げられていた。
 イアンはそんな子ども達を見るたび曖昧な笑顔で微笑む。彼にしてみれば、今の立場こそが自身にふさわしいのだ。かつて英雄と呼ばれた方が似つかわしくなかった。それが分かるからこそ、彼はただ微笑む。
 ――その姿は、ただ哀愁があふれていた。
 
「隊長! もういいでしょう!? 十分綺麗になりましたよ!」
「ん? おお、悪い悪い。んじゃ次はあっちだ」
「って、まだあるんですか!?
「いや、軍のは終わったんだけどな。さっき頼まれた」
「な――――っ!」
 
 絶句しているリックをよそに、コツ、コツと義足で歩いていくイアン。その一歩一歩は決して軽くない。自身の体に合わないその義足は、思った通りに動いてくれない。ただ一歩踏み出すごとに、ぎしりと体に食い込んだ。
 右足切断。かつて戦場をその足で駆けまわり、独特の戦闘スタイルで戦い続けた英雄は、大戦における最後の戦いでその足を犠牲にした。理由は大したことない。ただ、仲間を助けるために少し無理をしすぎたというだけのこと。ただその相手が――国のトップの息子だったというだけの事。
 あまりに多くの敵を倒し、国の勝利に貢献し、さらには要人を守った。そんな人材を国が放っておけるわけもない。国民の熱狂的な支持を集め、国は平民出身の彼を『騎士』と認め英雄へと祭り上ることにした。彼の名前は他の国にも響いている。外交上、そして政治上彼の存在は都合がよかった。その結果が――今の彼の現状。まさしく、飼い殺し。
 
「よし、後は此処だけだぞ。ここが終わったら今日の任務は終了だ。適当に報告したら、飯でも食いに行こう」
「もちろん奢ってくれるんですよね?」
「…………ああ」
「なんですかその間!?
 
 ぶつぶつと文句を言いながらも、リックはドブをあさる。なんだかんだと真面目な少年だった。
 
「相変わらず、部下の扱いが厳しいな、お前は」
「おや、誰かと思えば隊長殿。お忍びですかな?」
「忍ぶも何も、とうに引退した身だ。年寄りが街を歩いて悪い話はないだろう?」
 
 やっぱりリックの仕事をぼーっとみているイアンの横に、いつの間にか一人の老人が立っていた。杖をついた、初老の男性。体は小さいが、ただその目つきの鋭さなどから見た目よりも大きく見える。
 普段は不真面目なイアンも、彼に対しては少しだけ真面目になる。気だるそうに敬礼を続けるイアンに、老人は手を下げるように指示した。
 
「しかし、隊長か……お前を指揮したのももう二十年近く昔だと言うのに、お前はまだ私をそう呼ぶのだな」
「そりゃまあ、隊長殿は隊長殿ですから」
「……お前らしいな」
 
 イアンが一兵卒として戦場をかけていた頃、その指揮をしていた人。好き勝手に戦場を走り回っているイアンに、何度煮え湯を飲まされていたことだろう。今のイアンになら、その苦労が少しだけ分かる。ただ奇妙なことに、この人はそれでもイアンを切り捨てようとはしなかった。自分の汚点になると知りつつも、最後の最後まで彼が走り続けるのを止めなかったのである。
 
「結局、お前が英雄に祭り上げられたおかげで、その功績が認められて私まで名誉をもらうとはな。人生とはよくわからないものだ」
「まぁ、隊長殿には迷惑かけましたから。私の存在が少しでも役に立って良かったですよ」
「……お前には済まないと思っている。私にもう少し力があればお前をこんな飼い殺しみたいな形にすることはないだろうに」
 
 生かされるでもなく殺されるでもなく、ただ無意味に人生を送るイアン。元隊長に力が無いわけではない。彼の元にいた兵士の中には、今や重要な役職についている者もいる。ただ彼らを含め、軍や貴族の中の大多数がイアンにいい顔をしていないのが事実だった。
 ただでさえ平民上がりなのに、英雄とまで言われてしまっているイアンが。その独特の戦闘スタイル――騎士にあるまじき不意打ちを得意としていたイアンが。そんな彼が、仕方なしにとはいえ騎士として名前を与えられてしまっているという事実が。彼らにとっては、ただ憎らしいのだ。
 すでに大戦が終わってから十七年が過ぎたというのに、彼らの謂れのない憎しみはイアンに向けられ続けている。数少ない理解者がいなかったなら、とっくの昔に暗殺されていたかもしれない。イアンの幸運としてはそうした人達がいたということと、その右足を失ったことでそれ以上の戦働きができなくなったことだろうか。
 それらは同時に、彼の不幸でもあった。もしそうした理解者がいなければ。右足が失われていなければ。彼は今すぐにでも戦場に駆けて行って。
 そして――
 
「まぁ、そんな過ぎた話はどうでもいいんですよ。あと十年もすれば私も退役させられるでしょう。それまでのんびりすればいいだけですから」
「そうか……」
 
 二人はただ街を見る。煉瓦でつくられた町並み。遠くに見える、工場の煙突。笑う子どもたちの声、……半泣きで笑いながらドブをあさる少年。それらすべてが、彼らが戦い抜いた証。
 生き抜いた者たちはただそれを見続ける。それが今の彼らの役割でもあった。
 
「はぁ、はぁ、隊長、もういい、でしょう?」
「おう、お疲れさん。それじゃ帰るか」
 
 リックが汚水まみれになりながら、心底死にそうな顔をこちらに向けてくる。確かにドブは綺麗になっていた。これだけやればもう十分だろう。
 
「それじゃあイアンさん、私はこれで失礼するよ」
「おう、爺さんも達者でな」
 
 つい先ほどまで鋭い目つきをしていた老人は何所へやら。そこには柔らかな表情をした、年齢通りの小さな老人が立っていた。イアン、そしてリックに好々爺然とした笑顔を向け、杖をついて歩いていく。その姿はただの市民でしかなかった。
 
「? あのおじいさん、お知り合いですか?」
 
 リックがキョトンとした顔でイアンに質問した。その間でもドブから出たごみを片付ける事を忘れていないのが彼らしい。
 イアンはただその表情を見ながら、静かに微笑んでいた。
 
「何、ただの一般市民さ」
「ふぅん。相変わらず、あの人くらいの世代からは親しくされてますよね。今はこんなに使えないおっさんなのに」
「……お前、本当に言うねぇ……」
 
 リックの鋭い言葉にも、まぁいいやと笑いながらイアンは歩き出す。コツ、コツ、と義足が響く。リックは慌てて両手両足をきれいに洗い流すと、荷物をまとめてその後を追いかけるのであった。
 
 
 
(三へ続く)
 
 
 
 
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