汚名挽回

独断と偏見による「身代わり伯爵」二次創作ブログです!

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『身代わり伯爵の休日』3
 
すっかり夜も更け、暗くなった街路をフレッドが駆けて行く。
路地をいくつか曲がると、明るい街灯の並んだ通りに出た。
それまで人気もなく、眠ったようだった街が、そこだけ浮かれたように賑やかだった。
そこからまた、一本手前の暗い路地に入り、フレッドは人一人がようやく通れるほどの小道を、慣れた足取りで進んで行った。
ぽつぽつと灯る窓の明かりを頼りに、扉の形を確認する。
ようやく、一軒の扉の前で止まり、リズミカルに扉をたたいた。
 
トン、トトン、トトトン。
 
覗き穴からぎょろりと瞳が覗いて、すぐに閉まる。
とたん、扉が開いた。
「まぁぁ、フレッド。待ってたのよ」
扉が開くと、それまでの静寂が嘘のように賑やかなざわめきが漏れてくる。
巻き毛の少女が上気した顔で出迎えて、フレッドの手を取った。
フレッドは素早く部屋の中へ入り、扉を閉める。
「ごめんね、今日はお休みだっていうのに無理言っちゃって」
「あら、フレッドの頼みなら断れないわ。ほかのみんなもそうよ」
出迎えた少女が促すと、中にいた女性たちが口々にそうよそうよと賛同した。
「それで、ぼくの笑顔を一人占めできるのは誰になったのかな?」
片眉を上げておどけて見せると、我先にと手が上がる。
「あたしよ、あたしが飲ませたわ!!」
「違うわ、私の方が早かったわ」
キャーキャー言いながら群がってくる少女たちを制して、フレッドが口を開いた。
「分かった、じゃあ、順番にね。ところで、件の友人は何処かな?」
あそこ、と指さした先に、長椅子に沈んだロイが朦朧とした様子で横たわっていた。
 
「ロイ、ロイったら、起きて。こんなところで何やってるの」
聞き覚えのある声に、うっすらと目を開けると、可愛らしい顔が飛び込んできた。
怒ったようなぶっきらぼうな口調に我に返ると、思わずあたりを見回した。
見覚えのない部屋、周りを囲んでいる見覚えのない少女たち。そして、卓の上に並んでいる酒瓶と酒器。
一瞬の逡巡の後、自分の身に起きたなにがしかを理解する。
「いや、待て、誤解だミレーユ。俺は別に何もしてない。無理やり連れて来られて、無理やり飲まされたんだ。誓って言うが、俺の意思じゃねェっ!」
慌てて弁解するも、ミレーユはそんなことはどうでもいいと言った風情だ。
「別にかまわないわ。あんたがそんな調子じゃ、パン勝負はするまでもなくあたしの勝ちね」
「それとこれとは話が別だ、俺がお前に負けるはずがねェだろうがっ」
「そんなはずないでしょう。勝ちを確信して祝宴を上げるのは結構だけど、勝負の日を間違えて不戦敗になったらみっともなくて外も歩けなくなるわよっ」
酒のせいでただでさえ頭がぐらぐらするのに、ミレーユの挑発的な言葉に余計に頭に血が上った。
「んな訳あるかよっ、お前じゃあるまいしっ」
「じゃあ、勝負の日がいつか、言ってみなさいよ」
「9月の最後の定休日だって、散々確認しただろうがっ。忘れてんのはお前の方じゃねェのかっ?!」
それを聞いてミレーユは、ふむと顎に手を置いた。
「ミレー・・ユ?」
不意に、ミレーユの手が上がると、周りを囲んでいた少女たちが我先にとロイに抱きついた。
「わっ、おい、ちょっと待て、なんだ、ちゃ、おいっ、ミレーユっっんぐっ」
開けた口に液体が注ぎ込まれ、思わずむせる。
流し込まれたのは相当強い酒だったらしい、ロイは目を白黒させて長椅子の上に沈没した。
 
「9月の最後の定休日・・・ね、了解、覚えた」
にやりと微笑みを浮かべるのは、ミレーユのような格好をしたフレッドだった。
ロイが沈没したのを確認して、ドレスを脱ぎにかかる。
「協力ありがとう、可愛い子ちゃんたち。このことは他言無用で頼むよ」
「勿論よ。こんな面白いこと、誰にも教えてあげないわ。だから、また遊びに来てね、フレッド」
うんうん、と頷く少女たちに、きらびやかな笑みを振りまいて、フレッドは静かに扉を開けた。
外に誰かいる気配はない。
「その彼は、適当に放り出してかまわないよ。目が覚めたら叩きだしてやってくれ」
りょうかーい、と可愛らしい声の合唱を背中にフレッドはまた、夜の闇の中に身を置いた。
(やれやれ、世話の焼ける)
軽くため息をついて、細い小道を来た時と同じように歩いた。
パン勝負の話は聞いていたが、勝負の日にちがいつなのか、ミレーユは頑として教えてくれなかった。
定休日にするということだけは、ダニエルに教えてもらっていたが、いつの定休日かは知らないようだった。
(ぼくに邪魔されるのを嫌って、秘密にしてたんだろうけど、そうは問屋が卸すものか)
フレッドはにんまりと笑みを浮かべて、オールセンまでの道のりを心持ちゆっくりとした足取りで帰って行った。
 
つづく。
 
「・・・決闘」で、フレッドには勝負の日取りが教えられてなかったようなので(笑)
ロイをたぶらかして聞いてもらいました(^^ゞ
うん、何度書いてもロイは不憫だ(^_-)-☆
 
 

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閉じる コメント(4)

ロイロイのあまりの不憫っぷりに涙ではなく笑いが・・・いえ・・・なんでも(;・∀・)

フレッドのあのタイミングのよさは私も気になってました!
確かにフレッドなら事前情報キャッチしてそう(・∀・)ニヤニヤ

2011/7/20(水) 午前 0:00 [ ひな子 ] 返信する

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ロイが本当に不憫でなりません(悲)
それにしてもミレーユとフレッドを間違えてる時点で勝ち目はないね!!(断言)

しかもフレッドも利用するだけ利用してポイ捨てするなんて、よっぽっど嫌われてるんだねぇ〜♪
もしかしなくてもフレッドの抹殺目録が作られた原因ってロイ!?(笑)

2011/7/20(水) 午前 0:33 [ りみあい ] 返信する

>ひな子さま
ロイロイ・・・何度書いても不憫です、この子(笑)
ええ、もう、笑えるほどに(^^♪

「・・・内緒の追跡」の書き方だと、ロイはシジスモンに戻ってから、オールセンで働いているようですね。
フレッドとしては、ミレーユとの距離を詰められたくないので本気の妨害を仕掛けているというところでしょうか。
だからこそ、勝負の日時はフレッドに教えてないような気がしました♪
一世一代の(つもりの)求婚を邪魔されたくないですものね(邪魔されたけど)

2011/7/20(水) 午後 9:26 [ 杏美 ] 返信する

>りみあいさま
普段なら間違えないんでしょうけど、しこたまお酒を飲まされてますからねェ。
半分夢見心地なんだと思います(^^♪

自分のことを「馬鹿兄貴」呼ばわりする奴は、必要な情報さえいただければポイでしょうねぇ。
ミレーユ自らが抹殺してますから、わざわざフレッドが手を下す必要はないと思っているかもしれません(^_-)-☆
ああ、でも、閻魔帳には付けてるかも☆

2011/7/20(水) 午後 9:32 [ 杏美 ] 返信する

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