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「下北サンデーズ」を読む
下北沢小演劇界を舞台にした石田衣良の一本。
下北沢っていうところは、演劇で有名なんですねー。小生、勉強不足でまったく知りませんでした。
作中では、下北沢に松多グループという演劇マニアのオヤジの会社が所有する四つの演劇場があって、小さいほうから順に、駅の南口正面にある客席数80人の「ミニミニシアター」、同じビルの一階上で客席数150人の「駅横劇場」、南口から少し離れた場所にある客席数300人の「ザ・マンパイ」、そして、下北の頂点、北口にある客席数600人の「松多劇場」になります。
人気が出て、集客力が上がるにつれて、上の劇場へ出世していくシステムになっており、彼ら演劇人はこれを「劇場すごろく」と呼ぶ。
ちなみに、この「松多グループ」というのは、「本多劇場グループ」として下北沢に実在していて、背景として、そこそこリアルな設定がされているようです。ちなみに実在の本多グループが所有する劇場もほぼ同じような構成のようです。
で、本作の舞台となる劇団「下北サンデーズ」。結成以来この十年、最下層の「ミニミニシアター」の常連で、上昇志向は強いながらも、上昇気流を掴めない。そんな劇団一座な訳です。
大学進学のために上京してきた田舎娘、里中ゆいかは、何をトチ狂ったか、芝居経験ナッシンにもかかわらず、十年鳴かず飛ばずの弱小劇団「下北サンデーズ」の門を叩く。
なんでも、前回上京した時に観た彼らの芝居に心を打たれ、打ち込むならこれだ!!と閃いてしまったらしい。
しかし、天性の勘のよさと運動神経とクソ度胸で入団わずか一ヶ月で初舞台を踏み、それが大成功!
彼女の巻き起こした上昇気流で劇団はあれよあれよと「劇場すごろく」を駆け上がっていくわけです。
しかし、長年の極貧生活に慣れた劇団員に訪れた突然の成功によって、鉄の団結力を誇った「下北サンデーズ」に空中分解の危機が訪れる。成長痛ならぬ、成功痛ですね。
しかし、そんなサンデーズの内情とは裏腹に、世間評価はうなぎ上り。ついに下北演劇すごろくのアガリ、「松多劇場」で日本中から最も実力のある八劇団がトーナメントで日本一を争う演劇界の甲子園「下北ヌーベル演劇祭」へご招待!!
一体全体、どうなるのかーーー!!?っていうストーリー。
つぐのすけは全然知らなかったのですが、少し前に上戸彩を主人公にドラマになっていたらしいですね。
しかし、読んだ感想で言えば、十歳若いミムラ!!十歳若いミムラこそがこの主人公に相応しい。じゃぁ、ミムラが十歳若作りすればいいのか、と問われれば、それは難しいでしょう、と答えざるを得ないのですが、読んで感じた主人公のイメージが十歳若いミムラだったと申し上げたかっただけなのです。
一見ポーっとした印象ながらしっかりと自分を持っていて、クソまじめで、普通の女の子なのに、実はグラビアに耐えるルックスで、映画の主人公の話までくる。
上 戸 彩 で は 力 不 足 だ。
読んでみてください。きっとあなたもそう思うはずです。、、思わないかも知れませんが。
それに、上戸彩ではチャラけたイメージでドラマ化されたように感じてしまうのですが、この本を読む限り、主人公を含め、出演者は超真面目でなければならず、超クソ真面目に、社会的には不真面目と思われていて全く金にならないというか、借金までして演劇に全身全霊を傾けて苦悩し喜ぶマゾヒズムな変態的な姿が面白く、美しく、清々しく、それゆえに、成功とそれによって生じる不和や人間関係に感情移入ができ、読む者に感動を与えるのではないかと思う訳です。余計な笑いを添加すればするほど本書の良さが失われるのです。そんなものは、クリープを入れてしまったコーヒーです!って、ドラマを観てないのに想像だけで批判してもしょうがないんですけど。
主人公、里中ゆいかと、一癖も二癖もある下北サンデーズの面々の人間模様が実に面白く、本当に作品通りなのかどうかは知りませんが、演劇界の一端を垣間みることができる一冊。
成功というものは、一体なんなんだろうか、、と、ふと考えてしまう一冊でもある。
個人的には、石田衣良には「小演劇」という径の小さい穴を、もっと深く深く深く深ぁーーくコアなところまで掘り進んで冒険していただきたかった。演劇界の変態性について一体何が出てくるか分からない程の深さまで掘ってくれたらもっと良かった。
最後の展開が少々やり過ぎに思えましたが、なかなか面白かったです。
竹
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