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2012年のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)の会場で、イメージングリソースのデイブ・エッチェルズとショーン・バーネットは、シグマCOOの山木和人氏にインタビューを行った。

シグマの製品は全て日本の福島県会津にある自社工場で生産されている。それゆえ、昨年の震災が、他のメーカーと比べて、シグマにさほど大きな影響を与えなかったということを、山木氏本人から聞くことができたのは幸いだった。それでも被害はゼロではなかったようで、当時の状況について聞いたときはやはりショックだった。

また、近年ますます競争が激しくなっているミラーレスカメラ市場の動向についてうかがうと共に、山木氏にどのミラーレスマウントがシグマのようなサードパーティメーカーにとって重要であるか、話を聞くことができた。

さらに、レンズの設計技術の向上や新素材の開発について、高画素数のカメラに必要なレンズの開発について、フォビオンセンサーを搭載したシグマの新しいカメラの開発について、それぞれ話を聞いた。


デイブ・エッチェルズ:私たちが最後にインタビューしたのはもう2年も前になると思うのですが、それからレンズマーケットに何か変化はありましたか?ユーザーの趣向や売れ筋のレンズについて、何か新しい動きはあるのでしょうか?

山木和人:そうですね、もう2年ですか。その間に何か特別な変化があったとは私は思いません。基本的な傾向は同じです。デジタル一眼レフカメラの画素数が増えれば増えるほど、それに合わせてレンズの性能も向上させていかなくてはいけないということです。

デイブ:つまり、画素数がさらに増えているので、それに必要なレンズの性能も上がっているということですか?

山木:そうです。

デイブ:そのことによって単焦点レンズや高級ズームの売れ行きが伸びたということはあるのでしょうか?

山木:高級なレンズを欲しがる人は増えているので、世界中で単焦点レンズの売れ行きは伸びていますね。数年前までは日本、韓国、台湾など一部の国だけで単焦点が人気だったのですが、今ではすべての国で単焦点が売り上げを伸ばしています。もちろん、単焦点だけではなく、高級ズームレンズも売れています。

デイブ:近年多くの新しいマウントが登場したことで、交換レンズ市場はとても複雑になっています。ソニーNEXマウント、サムソンのNXマウント、マイクロフォーサーズ、そして新たにニコンがCXフォーマットを作りました。シグマは交換レンズメーカーとして、このような状況にどうやって対応していくのですか?どのマウントでレンズを開発するのか、どうやって決定しているのでしょうか?

山木:現在シグマは、写真に真剣に取り組んでいるハイアマチュアやプロを対象にレンズを製造しています。できる限り多くの種類のマウントに向けてレンズを製造することは私たちに課せられた使命だと認識していますが、その中でもより画質の高いシステムに集中しようとしています。それゆえ、ミラーレスでは、マイクロフォーサーズとソニーのシステムに向けてレンズを製造すべきだと判断しました。

デイブ:新たなマウントに向けてレンズを作る時は、どれくらいそのシステムが浸透しているかによって、ビジネスとして成功するかどうかが変わるのですか?マーケットの大きさがどのくらいであれば新しいマウントに参入するのでしょうか?

山木:もちろん、ユーザーの数によって成功するかどうか決まります。もし、あるマウント向けにレンズを製造して、それがまったく売れなかったら問題です。それが少ない数であっても、コンスタントに売れ続けるものでなければいけません。それが最低限の条件です。

シグマは自社工場を持っていますから、ほとんどすべての工程を自社で行うことができます。それゆえ、生産数に関してはかなり融通がきくのです。例えばあるレンズをわずかの数だけ生産することはできますが、それが数ヶ月から1年や2年もの間、ずっと在庫のままだったら大きな問題です。そのようなレンズは生産を続けることはできません。逆に、わずかな数でも売れ続けていれば、生産量が少なくても作り続けることは可能です。

デイブ:一度レンズの設計を行ったら、あるモデルの生産をやめて別のレンズを作ることは容易なのでしょうか?例えば10万個といった生産数を一度決めたら変更できないといったわけではなく、売れ行きに応じて生産数を調整し、少量だけを作り続けるといったことは可能なのですか?

山木:はい、可能です。もちろん、電子部品やレンズ構造はマウントによって異なりますが、生産計画を調整することはできます。

デイブ:同様のことはレンズの設計についても言えると思うのですが。例えばバックフォーカスが短い設計を行ったら、それをマイクロフォーサーズやNEX用に変更することは可能なのでしょうか?もちろんそれはイメージサークルにもよるとは思いますが。

山木:バックフォーカスだけに集中するわけにも行かないので、画質とバックフォーカスの長さについては常にバランスを取るようにしています。

デイブ:ということは、画質とバックフォーカスというのはトレードオフの関係なのですか?

山木:それはレンズの種類によって異なりますね。例えば広角レンズはバックフォーカスが短いと利点が多いです。それに対して、標準レンズや望遠レンズではバックフォーカスの長さはあまり関係はないです。まれに問題になることもありますが。

デイブ:この2年間でレンズ開発に影響を与えるような技術的革新は何かありましたか?もちろん、技術は常に進化し続けるものですが、とりわけここ最近で特筆に値する変化はあったのでしょうか?

山木:まずガラスメーカーと協力して新しい素材の開発を続けているということですね。ちょうど2年前にFLDレンズを導入したと思うのですが、これもメーカーと協力して開発した、蛍石と同等の性質を持つ新素材で、これを使ったレンズを新しく作っています。

デイブ:ああ、前回のインタビューでFLDFFrighteningly(恐ろしいほど)低分散という意味なのかというジョークを言ったのを思い出しました(笑)。つまり、FLDはここ数年で導入された新しい素材で、現在では多くのレンズに使われているのですね。具体的にFLDを使ったレンズは何本くらいあるのでしょうか?

山木:10本にちょっと足りないくらいですね。

デイブ:それはこの2年以内に発売されたレンズということですか?

山木:はい、最近のモデルです。

デイブ:コーティング技術についてうかがいます。例えばナノクリスタルコートのようなコーティングは大きな技術的革新だと思うのですが、そのようなコーティング技術を使ったレンズはとても少なく、高級レンズでしか採用されていません。ナノテクノロジーを使ったコーティングはどのように作られているのでしょうか?そして、どうしてあれほど高価なのでしょう?限られたメーカーにしか作ることができない、特殊な技術だからなのですか?

山木:そうですね、ナノテクを使ったコーティングはメーカーごとに様々です。まず、コーティング作業そのものにとても時間がかかります。そのせいで大量に作ることができません。これが一番の問題ですね。さらに、コーティングをするとレンズ表面がとても柔らかく、脆くなってしまいます。それゆえ慎重に取り扱う必要が出てきます。

デイブ:コーティングに使われているのは実際にはどんな物質なのですか?

山木:すいません、詳細については明かすことはできません。


デイブ:シグマがナノコーティングを使う予定はあるのですか?

山木:現在開発中です。ナノコートはゴーストやフレアを減少させる効果はありますが、それだけで完全に消せるものではありません。あくまでもゴーストやフレアを減らす要素の一つにすぎないのです。シグマではコーティングだけではなく、レンズの鏡筒内の形状も工夫することで、ゴーストやフレアの対策をしています。実際に鏡筒内部の形状はコーティングよりもゴーストに与える影響は大きいのです。

私たちは研究を進めてゴーストやフレアの発生をシミュレートするプログラムを独自に開発しました。それを使って3DCADで設計したレンズにどれくらいゴーストが発生するのかシミュレートできるのです。その結果を見ながら、さらにゴーストの発生を抑えるために鏡筒の形状を改良していきます。シミュレーションではコーティングの影響も含めて計算しているのですが、コーティングだけでは問題は解決しません。あくまでも対策の一つですね。

デイブ:前回のインタビューで説明していただいたことですね。覚えていますよ。光線の反射をトレースするのに鏡筒内の形状も考慮に入れており、単に各レンズの形状や配置だけを計算しているわけではないということでした。鏡筒内の形状までも計算してシミュレートしているのはシグマだけなのでしょうね。

山木:そうでしょうね。

デイブ:現在では多くの人が携帯電話を使って写真を撮っており、携帯電話に取り付けられる交換レンズも発売されています。このような製品をシグマも作る予定はないのですか?

山木:そういうレンズを作って欲しいという要望は多くの人からいただくのですが、私たちが参入すべきだとは思いません。先ほども話しましたが、シグマは現在ハイアマチュアやプロに向けた製品に集中しています。もちろん、私個人もスマートフォンを持っていますし、それで写真を撮ったりしますが、デジタル一眼レフで写真を撮るのとスマホで写真を撮るのとでは目的が違うと思います。

デイブ:携帯電話にわざわざ交換レンズを付けるくらいなら、ちゃんとしたカメラで写真を撮る人が大半だということでしょうか。

山木:そうですね。そう思います。

デイブ:先ほど少し話題にのぼったのですが、カメラの画素数が増えることによってセンサー上のピクセルサイズが小さくなり、それによってレンズに対する要求が上がっているということでした。画素数の向上によって旧型のレンズをアプデートしていく必要があるのでしょうか?単に新しいスペックのレンズを作るだけではなく、古いレンズをそのままのスペックで新しく作りなおさなければならないのですか?

山木:はい、それはそのまま、現在私達が取り組んでいることです。もちろん、単にアップデートするだけではなく、手ブレ補正などの新しい機能も搭載させています。

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