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書庫今日はファットバイクで行こう

モリアオガエルの道

 シルバーウイークの一日、自転車で浅川(多摩川の支流)を遡りにいった。

 晴れ。朝は半袖だと涼しいくらいの気温。湿気もない。8月下旬からの悪天を一気に挽回するような自転車日和である。あちこちに咲く彼岸花がきれいだ。


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 北浅川の有名な勝手橋が、先日の豪雨による増水で壊されていた。撤去せよと書かれた警告看板のポール根元に漂着物が巻きついていたから、この川もそうとうヤバかったようだ。
 しかし、鉄パイプでつくった橋脚も、ベニヤの床板も、ワイヤロープで近くの大木に繋がれているため、流失はしていない。
 近くで釣りをしているおじさんに聞いたら、「またすぐ、村の人がつくり直すから」と言っていた。


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 走りたかったのは八王子の西、陣馬街道の一本北側にある「モリアオガエルの道」だ。夏休みに陣馬街道から脇道にそれた時に見つけて、取っておいたのだ。道路沿いを流れる小川が天然記念物、モリアオガエルの産卵場所になっているらしい。あとで調べると、川は北浅川の支流、小津川だ。

 道そのものも、お寺やお宮さんが点在し、路肩に古い道祖神があったりで、実にのどか。小津安二郎の世界だ。観たことないけど。ロードバイカーもたまにやってくる。

 大通りから数km入ると、モリアオガエルの道は終わり、そのまま小津林道になる。人家は完全に途絶えた。
 林道スタート地点の標識には延長1514m、幅員3.6mとあった。少し走ると、鬱蒼とした杉林が立ちはだかり、チェーンロックが現れる。だいぶ手前にも「この先、行き止まり」の看板が立っていたから、どこかへ抜けられる林道ではなさそうだが、行けるところまで行ってみる。


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 この小津林道がすばらしかった。今まではほとんど見えなかった小津川の渓流がすぐそばを流れる。これが北浅川、浅川を経て多摩川に注ぐわけだから、そりゃ多摩川の下流でアユが釣れてもおかしくないな、と実感させる清流だ。
 そうかと思うと、渓谷に太い倒木が折り重なっているようなワイルドなところもある。この林道が本線で、たまに枝分かれした別の林道が左手に駆け上がってゆく。
 でも、「スズメバチのシーズンよ」と、出がけにヨメさんに脅かされたし、支線探索はまた今度にしよう。

 激坂はないが、それでも渓流沿いを遡るにつれて勾配はきつくなる。
 ひとっこひとりいない、と思ったら、上からおじさんと小型犬が楽しそうに下りてきた。帰りがけに追い抜くと、チェーンロックの手前に駐まっていた練馬ナンバーのプリウスの人だった。こんなところまで散歩に連れてきてもらえたら、室内犬も感涙ものだろう。


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 やがて軽トラの転回所が現れ、「大沢林道」という新しい標識が立っていた。
転回所の先は芝生のように見えたが、走り始めると雑草のすぐ下は尖った小石のフラットダートだった。勾配もきつくなる。ファットバイクの独壇場だ。

 数100m進んで坂を上りきると、ヘリポートのようなフラットな舗装が現れて、そこがどん詰まりだった。
 シンとした空気の中に瀬音だけが響いている。別世界感のある行き止まりだ。ああ、来てよかった。


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下野康史(かばた・やすし)
下野康史(かばた・やすし)
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