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うちのイヌ(黒柴メス、もうすぐ6歳)は、御近所の嫌われ者である。柴のなかでもとくに神経質にして臆病、何かあるとすぐ吠えるからだ。
隣の家の人が、自分ちの庭で洗濯物を干したり、庭仕事をしたりしていると、必ず吠える。お隣なんだから、慣れろよと思うのだが、どうやら人に吠えているのではなくて、何かやっている、その“何か”がたぶんコワイのである。
その証拠に、散歩の途中、お隣さんたちとすれ違うと、むしろ喜んでジャレつくような仕種を見せる。向こうにはすっかり嫌われているので、相手にされないが。
でも、けっして無駄吠えはしない。吠えるときは、必ず理由がある。
そのハナが、ある晩、真夜中にひどく遠吠えをした。眠れないからなんとかしてくれと子どもが言いつけにきて、起こされた。
真っ暗な空を見上げ、連続的に吠えている。ガラスを叩くとやめるが、またすぐ始める。水でも切れたのかと思って出てみたが、変わったことはない。しばらく落ち着かせて家に入ると、またウォーンと悲しそうに吠える。
ウンコでもしたいのかと考えて、散歩に連れ出した。夜中にこんなこと初めてだ。遠吠えなど滅多にしないし、し続けるなんてことはかつて一度もなかった。
でも、ウンコのウの字でもない。長く連れ歩いてもウンコをしないときは、「出ない!」と声が聞こえるくらい、ぼくを見上げて独特の表情をするのだ。行きも帰りもいつものようにガシガシとリードを引いて歩くから、どこか痛いわけでもなさそうだ。
散歩から戻ると、もう遠吠えはしなかった。新聞配達のバイクが走っていたから、明け方の5時くらいだったろうか。
とすると、それから8時間半後である、あの大地震が起きたのは。太平洋プレートと北米プレートが三陸沖でせめぎあい、地殻の圧力がいよいよ最終局面に達していたときの超音波か何かが、ハナには聴こえたのだろうか。聴こえたのだすると、たいした名犬ではないか。
うちの近所には立川断層が走っている。いつ来てもおかしくない首都圏直下型地震の震源最有力候補に挙げられている活断層だ。
今度の地震で誘発されたかのような揺れが各地で観測されている。立川断層もそうとうヤバイのではないかとひそかに心配している。緊急地震速報よりはるかにリードタイムの長いハナの予知能力に期待だ。
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