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いたやのそば

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 すごくおなかがへっているときに、「そば食いてー!」と思う人はそういないだろう。昨今、そばは上品な食べ物、みたいなことになっていて、量が少ない。上品を通り越して、芸術かなんかだと勘違いしているような店もある。ウチの芸術作品で満腹にしようなんて、とんでもない! というような量で、もりが800円とか。

「driver」誌ニコドラ取材の途中に立ち寄ったそば屋は、その点、すばらしかった。新潟県南魚沼市にある「いたや」という店。野なかの一軒店だが、混んでいた。

 大もりをたのんだら、せいろからこぼれそうな量で、ドンと出てきた。布海苔(ふのり)を練り込んで打った越後独特の“へぎそば”で、モチッとした歯応えがあって、おいしい。信州そばよりゴハンっぽいというか。
 キンと冷えたそばつゆもいい。食べ進んだら、「そばつゆ足りてますか?」と聞きにきてくれた。天カスが添えられてくるのは、量が多いので、途中で味を変えてたべなさいってことなのか。

 初めて入ったそば屋が“当たり”だと、うれしい。幸せだなあ、と食べていたら、新潟美人の店員さんが、今度はどんぶりに入ったそばをドンと持ってきた。エッ、替え玉はたのんでないゾと思ったら、「すいません、まちがえて普通もりを出してしまいました」、だって。

 もりが650円、大は200円増し。


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下野康史(かばた・やすし)
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