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 山道を自転車で走っている時、けっこうビビっているのは、ハチと山ヒルである。
 ハチはある程度、用心ができるが、ヒルは油断ならない。しかも、山の中だけでなく、身近にもいる。

 以前、多摩ニュータウンを走っていると、太ももに一瞬、冷たい感触を覚えた。レーパンでこいでいる下半身に視線を落としたら、太ももでヒルが垂直立ちして、今まさに吸血態勢に入ろうとしていた。ギャっと叫んで、手で振り払い、ことなきを得る。街路樹の木から落ちてきたのである。というか、明らかにナマ足めがけて下りてきたとしか思えない。

●●●●

 先週末、インプレ用のジャイアントで近所の公園を通りがかった。クロカンコースにもなっている林間の散策路を抜けてくると、フロントフォークにツルが巻き付いていた。と思いきや、それが山ヒルだった。輪ゴムぐらいの細さなのだが、見ていると、動いていたので、ツルじゃないとわかったのだ。

 その後、走りながらヒルの動きをつぶさに観察した。

 意外や動きが速い。ちょっと目を離したスキに、かなり移動している。
 そして、何度目かに見て、目を疑った。端から5cmくらいのところで切れて、ふたつになっていたのだ。エーッ、なんで!? 

 おそらくこのとき、走行風で体の水分がどんどん奪われ、ヒルは生命の危機にさらされていたのである。それで活発に動き回り、いよいよ最後の手段で体の一部を切り離したのである。
 短いほうはもう動いていなかった。先っぽから何か黒いものが出ているのは、いまわのきわに失禁(脱糞)したのだろうか。 


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 20cmくらいの生き残り組は、フォークづたいにハブのほうへ下りていった。おーい、そっちのほうに行くと、危ないゾー、と念を送ったのだが、通じなかった。
 先端がフォークからハブに伸びると、案の定、ヒルの体はホイールの回転に巻き取られた。と、そのとき、ワタシは見たのである。クルクル回り出した直後、ヒモ状だった体がほぼ瞬間的に収縮して、ナメクジくらいの長さと太さに変わったのを!

 こんな糸みたいに長い種類のヒルもいるんだ、と思っていたのだが、そのときは、知っているノーマルヒルの姿に変わっていた。環境によって、様々に形状を変える生き物なのである。このツルンとした体を自ら切断するメカニズムといい、いったいどうなっているのか。ある意味、高等な動物である。

 その後、ヒルは再び長くなり、クイックレリーズの軸に巻き付いてじっとしていた。ここなら回転しないという場所をすかさず見つけて、身を潜める。処世術にも長けたやつである。

 でも、家に着くと、死んでいた。生乾きの状態でしっかり巻き付いていたため、掃除するのに手間取った。
 
 ヒル、おそるべし。


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下野康史(かばた・やすし)
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