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ヘタのジョーズ

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もう6月ではないか! こないだ正月だったのに。
 なんだこの速さは。CIAの陰謀(古)か。それとも、トシのせいなのか。

 6月になって、いちばんアセっているのは、「第4回チェロ好き達の宴in八王子」が6月12日に迫っているからだ。
 レッスンはあと2回。2回目は本番前日のゲネプロ(通し練習)だから、磯野先生の細かい指導が受けられるのはあと1回だけである。

 チェロのみ70台以上のメガアンサンブルで演奏するのは、全15曲。いちばんタイヘンなのは「USJへの旅」と題された映画音楽シリーズで、ターミネーターとか、ジョーズとか、ハリーポッターとか、おなじみの曲を演奏できるのはうれしいのだが、トランペットのパラパラいう高音や、小太鼓の細かいリズムなんかを、もともと低音の伴奏楽器だったチェロで弾くのはむずかしい。

 すべての編曲譜を書かれた磯野先生はプロのチェリストで、「完全に弾けなくてもいいです。“感じ”が出ればいいんです。でも、あきらめないでください」とおっしゃって下さるが、当方、感じすら出せないのだから、困る。2010年の1回目からずっと参加しているが、「ここはどうしても弾けない!」というお手上げ箇所がいつになく多い気がする。
 C線でジョーズの低音リフを弾いていると、われながらアドレナリンが出てくるが、小節数を数え間違えて、本番ステージで自分ひとりだけオーバーシュートするなんていうのも恐怖だ。ジョーズに食われて死んだほうがましである。

 参加者に小学校に入ったばかりくらいの女の子がいる。いつも最前列に座って、しっかり弾いているし、先生の話もちゃんと聞いている。なにより楽しそうだ。
 
 エライなあと思っていたら、ある日の練習中、その子の弓が突然、折れてしまった。一生懸命直すような素振りをみせていたが、トップのところが完全にポキッといっている。「ああ、それ、もうだめだねえ」。指揮棒を持った磯野先生にそう言われると、ワッと泣き出したのである。
 かわいそうだが、どうすることもできない。レッスンは止まらず、演奏が続くなか、女の子の大きな泣き声がホールに響き続けた。
 うまくなる子どもって、すごいなあと思った。

 振りをするだけの「エアなんとか」が人気だが、本番のエアチェロは哀しい。というか、くやしい。けれども、無い袖は振れない。休符を守らないようなケアレスミスには、前回レッスンあたりからカミナリも落ち始めている。

 今週末のレッスンではステージでの席次が発表になる。ひとさまに迷惑のかからない奥座敷のほうになることを祈るばかりである。

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下野康史(かばた・やすし)
下野康史(かばた・やすし)
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