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おいしい峠

 9月の晴天率の低さといったらなかった。
 
 天気が悪いと、シャレにならないのは、「峠狩り」の取材だ。峠は、例外なく高いところにある。雨が降るだけならまだしも、ガスが出たり、低い雲の中に入ってしまったりすると、走るのも撮るのもお手上げだ。

 3ケタ国道を起点から終点まで走る「ニコニコドライブ」のときは、途中の峠が悪天でも、ほかでいくらでもネタが拾えたが、峠狩りだとそうはいかない。はるばる出かけた先の峠道が濃い霧に包まれていた、なんて、悪夢である。
 幸い、ぼくはかなりの晴れ男なので、まだそんな目にあったことはない。御坂(みさか)峠やヤビツ峠のときなんか、ぼくらが行くと、雨がやんで、晴れ間が覗いた。

 しかし、今月はひと筋縄ではいかなかった。前日まで、目的地が決められなかったのだ。本当は新潟県北の峠へ行くはずが、降水確率を見て、断念。急遽、山中湖方面に変更した。そこも晴れマークは朝9時から12時というピンポイントで、それ以降はまた曇りの予報。その峠は、山中湖と富士山の眺望がテーマだから、朝、とりあえず現場に上がってみて、両方が見えなかったら、もっと標高の低い峠に移動する、というオプションも考えておいた。

 しかし、結果は、120点! 9時前に山中湖畔に着くと、望外の快晴。撮影先行で取材を始めると、10時過ぎからは富士山が雲に御隠れになった。神様ほとけさま天神さま、ありがたやありがたや。

 山中湖に下りてきて食べた「峠めし」は、200点だった。
 山中湖畔には観光客相手のオシャレな店も多いが、どこへ入っていいか、わからない。「ワンちゃんもどうぞ」とか書いてあってもなあ。


イメージ 1

 見つけたのは、店名看板すら出ていない、住居を兼ねた古い食堂。厨房はおばちゃんふたりと、娘ひとり、みたいなローカル食堂である。


イメージ 2

 席はけっこう埋まっている。ほかの人にならって、日替わり定食のハンバーグをたのむ。外でハンバーグを食べると、たいていハズレるが、見るからにウマそうなこれは、ヨメさんのハンバーグの次にウマかった。ご飯の盛りはこれがノーマルです。
 この定食が600円。ハンバーグもご飯も食べきれなかったので、編集部Aさんに手伝ってもらう。


イメージ 3

 30代のAさんがたのんだのは、この店の名物らしいカツ丼。肉の厚さが尋常じゃない。1000キロカロリー以上ありそうだ。しかも、これで500円。若者にはたまらんでしょうね。
 こういう地元の実用食堂に巡り合ったときがいちばんうれしい。

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下野康史(かばた・やすし)
下野康史(かばた・やすし)
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