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火野正平、サイコー

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 こないだ観た「こころ旅」は大阪篇。中学生のころ、0系新幹線で叔父さんの家に遊びに行き、いとこと自転車で走った枚方(ひらかた)の町が出てきたので、なつかしかった。

 スタートして5年以上経ち、すっかり人気番組になっても、あいかわらずおもしろい。
 最近の日本はやたらとレース指向に走る人が多いが、「こころ旅」みたいなスピードののんびりした自転車ツーリングは、本来、自転車のいちばん楽しいところである。
 撮影も音録りも、すべてお付きのスタッフが自転車に乗ってやっている、というところもおもしろさの秘訣だと思う。自転車ツーリングの息遣いが聞こえてくるのだ。

 原稿書きはあとでいくらでも知ったかぶりや脚色ができるが、映像は、素が出る。とくに行き当たりばったりの旅モノは、素しか出しようがない。だから、バカの旅モノほどおもしろくないものはないけれど、その点、火野正平はサイコーだ。
 教養があるから、“気づき”が多い。言葉がしゃれていて、カッコイイ。ちょいちょいオモロイことを言う。

 一方、何年やっても、火野正平がサイクリストとしては洗練されない。自転車オタク化しない。そこもイイ。
「上り勾配は8%まで」とか言っていた。ペダリングもカッコわるい。ウェアのオファーなんかいくらだって来ているはずだが、コスチュームはあいかわらずアフガニスタンの牧童みたいだ。あんなカッコでロードバイクに乗っている人は、火野正平以外いない。
 
 でも、このテレビ番組に唯一“つくり”があるとすれば、「視聴者の思い出の景色を紹介するために、ただのオッサンが自転車で旅している状態」を、役者としてたぶん最初からずっと演じているところだと思う。
 だってこの人、昔から自転車小僧で、十代のころは六甲山や比叡山に上った、と、番組のなかでポロっと言っていた。それが本当なら、あんなにペダリングや自転車の乗り降りがぎこちないわけないと思う。

 いつもお尻のところにくくりつけている白いぬいぐるみはなんなのだろうか。ミスタービーンのテディベアみたいなものか。いや、飲み屋のおねえさんに「ワタシのつもりで乗せといて」かんなか言われたものに違いない。


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 下北半島の尻屋崎篇も、以前「ニコニコドライブ」で訪ねたところなので、なつかしかった。

 尻屋崎灯台の周辺で寒立馬(かんだちめ)が放牧されている。小柄でガッシリした南部馬だ。おっとりしているから、さわってもなんてことない。
 動物好きの火野正平が早速ナデナデしに行ったら、さすがNHK。画面に「許可を得てさわっています」というテロップが出た。馬がいいよって言ったのかい。

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下野康史(かばた・やすし)
下野康史(かばた・やすし)
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