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 今月の「峠狩り」は、箱根の玄関口、乙女峠へ行った。
 箱根は新車試乗会のメッカでもあり、有料道路だった70年代後半から通い慣れた道だが、国道138号の乙女峠に止まったのは初めてかもしれない。道路から御殿場の町と富士山がこんなによく見えるとは知らなかった。

 天気がよかったので、峠茶屋の有料駐車場にクルマを置いて、本当の乙女峠へ登る。
 乙女トンネルの真上にある頂上までは、標高差200m。登山道入り口には25分と書いてあったが、石がゴロゴロしていて足場の悪いところが多く、かなりきつかった。


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 1005mの頂上は木が生い茂って、北側の視界はよくない。富士山もこんな感じ。乙女峠の富士は、国道からがいい。

 登山道を歩いていて、おっかなかったのは、おなかに響く「ドン、ドン」という音と地響きだ。自衛隊が東富士演習場で撃っている大砲の音である。平日の午前中だったが、周期的にほとんどずっと鳴りっぱなし。
 峠にいた山岳ガイドさんによると、沖縄の基地負担軽減が言われ始めて以来、砲撃音が増えたという。そういう事情なら仕方ないのかもしれないが、「でも、富士山を世界“文化”遺産と呼ぶのはどうなんでしょうね」と言っていた。もちろん、ユネスコが現地審査に入っていたときは、ピタリとやめていたそうだ。


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 下へ戻って、ふじみ茶屋でお昼。峠の一軒茶屋で、道の駅のように賑わっている。食事処からも富士山が見える。
 いちばん安いざるそばが980円。海抜標高より高い。カツ鍋定食が1350円。
 でも、おいしい。女将さんの客あしらいもキチンとしている。食前はお茶だが、食後には「富士山の伏流水です」と、冷たい水を出してくれる。きれいなトイレを食事客以外にも開放しているのは立派だ。

 
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 乙女トンネルを抜けて箱根町に入ると、右手に観光案内所がある。駐車場に昔からある公衆トイレの脇に「乙女道路」の石碑を発見する。乙女トンネルで抜けるこのルートができるまでは、御殿場から仙石原へは狭くてツイスティな長尾峠で行くしかなかった。

 東京オリンピックの1964年10月20日完成。総事業費9億2000万円。使ったセメントや鋼材の量まで石碑には刻まれている。
 84年までここに料金所があったらしいが、なぜかまったく覚えていない。その後、乙女道路の名前は跡形もなく消えてしまったから、貴重な痕跡だ。

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下野康史(かばた・やすし)
下野康史(かばた・やすし)
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