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小指の思い出

 貴ノ岩がカラオケリモコンで殴られた事件が発覚したころ、ワタシは仕事中に左手の小指を怪我して病院へ駆け込んだ。

 処置室で診てもらうと、「こりゃ縫わなきゃだめだな」との宣告。この歳になって、生まれて初めての手術である。
 小指でも、ベッドに寝かされるんですね。麻酔の注射を持った先生が「ちょっと痛いですよ」という。エーッ、小指に打つの!? でも、打たなきゃもっと痛いんだよな。
 ホント、ちょっと痛かったけど、2回目に場所変えて打ったときには、もう感覚がなくなっていた。

 しかし、縫合手術って、本当に縫うんですね、人のカラダを。寝ているから、現場は見えないし、とっくに痛くはなかったが、糸がツーッと皮膚を貫通していくのがなんとなくわかる。おお、縫われてる縫われてる。あー、いま糸縛ってる。ぼくはけっこう裁縫をやるので、妙な感じだ。6針縫った。

 しかし、医者ってすごいな。小さい総合病院で、この日、整形外科は休診だったのだが、内科/泌尿器科/皮膚科担当の院長が昼休みにやってくれた。担当外のアポなしでも、技量維持のために、かえって燃えるとか、あるのだろうか。

「労災にしなくていいんですか?」。縫合中に先生がそう聞くので、どれくらいかかるんだろうと心配になった。小指とはいえ、手術である。ひと針いくら、なんだろうか。現金はそう持っていなかった。カードOKだったから、とりあえず問題はなさそうだけど。

 治療が済んで、会計で呼ばれると、初診料込みで、なんと2600円なにがしだった。エッ、CDより安いの!? ぼくは国民健康保険だから、勤め人より自己負担は多いのに、それでも1週間後の抜糸と合わせて、3000円いかなかった。病院によって、高い安いがあるのだろうか。あとで調べると、院長の前職は東大病院医局長だったけど。とにかく、日本の医療保険制度のありがたみを実感する。


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 あれからちょうど1ヵ月。傷はふさがったが、上からの圧迫による裂傷だったので、腫れと内出血はとれていない。弦を押さえる左手だから、チェロ活動がいちばんイタイ。

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下野康史(かばた・やすし)
下野康史(かばた・やすし)
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