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お涙頂戴には負けない

 今年は戌年なのに、ウチには犬がいない。ペットロス2年目突入。それまでは柴犬を2匹続けて24年飼っていただけに、このペットロスは治りませんね。

 こないだ駅構内の本屋に入ったら、『犬が伝えたかったこと』という本が平積みになっていた。こっちを見てお座りしている犬のイラストが入ったオシャレな白い本。“伝えたい”こと、じゃなくて、伝えたかったこと。過去形ですよ。サブタイトルに「泣」や「涙」の文字が見えた。まさにぼくみたいなのを狙い撃ちにしているのだろうか。反則だろ!と思って、立ち読みもしなかったけど。内容が違っていたらゴメンだが。


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 犬の本で好きなのは、高橋三千綱の『明日のブルドッグ』だ。大の犬好き、というかイングリッシュブルドッグ好きの芥川賞作家が書いた小説だ。初版は12年前だが、ガンと闘っているいまも何匹目かを飼われていて、ホームページには愛犬の動画がいくつも載っている。

 牛と闘うためにつくられたイングリッシュブルは、アゴが発達し、頭がデカイ。そのため、産道を通過するのが大変で、“犬の子のように”一度に何匹も産まれてはこない。繁殖数が少ない。ぼくもまだ一度も触ったことがない。
 
 顔はちょっとお気の毒なほど不細工で、歯の噛み合わせは悪く、ふつうにしていてもベロの先がちょっと出ているような犬が多い。設計ミスって感じだ。
 性格は唯我独尊。でも、そのマイペースぶりが一緒に暮らしていると非常におもしろいらしい。

 この本を読むと、ぜったいイングリッシュブルがほしくなる。最後はファンタジー仕立てで、何度読んでもンガンガ泣いてしまう。結局、泣くんじゃん。

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下野康史(かばた・やすし)
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