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 壁の花と化していた固定ギヤのホルクスを引っ張り出して、最近、お使い自転車として乗っている。

 最初に乗ろうとしたら、前輪チューブラータイヤのバルブがダメになっていて、何年ぶりかでタイヤを張り替えた。これまでは、毎回、爪剥がしそうになるわ、リムセメントまみれになるわで往生したのに、手の使い方を変えたら、力いらずでウソみたいに簡単にタイヤをはめられた。長いことパッケージに入れたままだったヴィットリアが不良品で、円周がちょっと大きかったんじゃないかと思うくらいである。
 
 チューブラーを愛用していたころにはなかった充填式のパンク修理剤も登場して、小さい穴なら応急修理して帰ってこられるようになったらしい。タイヤ交換のわずらわしさがWOタイヤに転向した大きな理由だったのだが、そんなわけで、またチューブラーに乗ろうかなという気分になっている。

 固定ギヤはあいかわらずサイコーだ。ぼくのはちょっとした峠も越せるギヤ比だから、スピードは出ないけど、そのかわり低速が効く。ゆっくり走っていると、一歩一歩、路面を踏みしめている感じ。こぐのをやめれば休めるフリー付きに比べると、単位時間当たりの“自転車こいだ感”がハンパないのだ。
「自転車だと遠くへ行けるのは、ほとんど休んでるからなんですよ」。20年近く前、固定ギヤ車を初めてつくろうと思ったとき、話を聞きに行った愛好家(クォークの細山さん)がそう言っていた。

 こんなローギヤだって、こぐのを止めた瞬間からペダルに押し寄せる怒涛のような回転力は、固定ギヤならではだ。ワーッ、止まらない! というこのパワーを捨てずに電気エネルギーに変えて制動したり蓄えたりする。クルマの電動化が必然なのは、固定ギヤ自転車に乗ると一発で理解できる。


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 ぼくのはハブの反対側にフリー付きギヤも付けた“ダブルコグ”。車輪を外して左右をひっくり返せば、普通のシングルギヤになる。


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 ちなみに、固定ギヤシングルフラットバーハンドルに改造する前のホルクス。93年に買った上野・横尾双輪館のこのオリジナル自転車が、マイファーストロードバイクである。サンマルコ・ロールス、いいサドルだったなあ。

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下野康史(かばた・やすし)
下野康史(かばた・やすし)
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