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慎重社じゃなかったね

 小学生のとき、同じ学年にP君(仮名)という“女子”がいた。性別は男なのだが、見た目は“かろうじて男”くらい。振る舞いやしゃべりかたは完全に女の子で、休み時間は女子と一緒にゴム跳びばかりやっていた。

 しかもややこしかったのは、彼の苗字が女の子の名前みたいだったこと。たとえれば、百恵太郎。「ももえクンって、女みたいだよな」と言われてしまう名前がまたP君を強く印象づけた。

 同じクラスではなかったので、ふだんの様子や扱われ方がどうだったのかは知らないが、プール教室の着替えのとき、腰に巻いていたバスタオルを男子にはぎ取られて、悲鳴を上げていたのを目撃したことがある。
 P君はどうしているのかなといまでも思う。

 LGBT(性的少数者)の特集を組んだ出版社の月刊誌が休刊になった。寄稿文のなかには、LGBTを単なる趣味や嗜好の問題と片付けてしまう、どころか、痴漢と同一視する“論”もあった。オイオイ、痴漢は犯罪だろ。
 いくら言論の自由といったって、レスビアンやゲイを保障するなら、痴漢の権利も保障しろという意見を載せるのは、まともな言論機関ではない。
 この会社の売り上げに大きく貢献している村上春樹が動く前に、あわてて休刊の措置をとったのではないかと推察するが、それよりもまず、この雑誌の編集部員のまわりには、生まれてこのかた、P君のような子がひとりもいなかったのだろうか。

 でも、他人事ではない。
 こないだ移動中のクルマで馬鹿話をしていたら、三十代の編集者が、テレビに出ている有名人を挙げて、「〇〇って、在日ですかね」と言った。
 出たァ。ネット界ではおなじみの言葉だが、実際こうして聞くと、耳を疑いましたね。ヘイトを言わない側の業界にいると、長年信じてきたので。
「在日じゃ、いけないの?」と聞いたら、「いえ、いけなくはないですけど……、在日なのかなと思いまして」
 メディアも変わってきているのだ。


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いろいろ、それぞれ、だからおもしろいのにね。

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下野康史(かばた・やすし)
下野康史(かばた・やすし)
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