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森野恭行さんを悼む

 森野恭行さんが箱根ターンパイクで亡くなった。報道では「自動車評論家」や「日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員」として紹介されているが、そんなお堅いイメージはぼくにはない。

 自動車専門誌の専属フリーで長く活躍し、自分でも所有するポルシェ911好きであったことから、完全なフリーになってからは“911通”として登場することが多かった。
 いちばん好きなクルマで命を落としてしまったのは、本人もさぞや無念だと思う。自分のモノサシを持ち、自分の言葉で原稿を書けるすぐれた自動車ライターだった。

 現場のターンパイク下りは、たしかにスピードが出てしまうところだ。でも、そんなことは箱根に通い慣れた彼ならよく知っていたはずだ。911の速さや難しさも、だれより理解していたはずだ。

 自分より年下の人は、すごく年下だと思ってしまう癖があるのだが、森野さんも53歳になっていた。昔ならもうすぐ定年のトシである。
 現場にブレーキ痕はあったのだろうか。態勢を立て直そうとした痕跡は残っているのだろうか。
 ニュース映像でGT3の壊れかたを見ると、事故直前、運転中に運転できなくなる何かが起きたのではないかと、直観的に感じた。ひとごととは思えないという意味で、ショックである。
 御冥福をお祈りします。

スズキ・イグニス

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 相変わらず飛ぶ鳥を落とす勢いのスズキ。
 1.2ℓクロスオーバーコンパクトのイグニスもタダモノじゃない感じだ。

 しかし、なんでスズキがこんなにカッコよくなったんだろう。イグニスのデザインは明らかにアルト系だから、これも元アウディの日本人デザイナーだろうか。スズキは公式には認めていないが。

 フェンダーをここまでオーバーフェンダーにしたのがスゴイ。ここを膨らませるということは、ボディ全幅の正味を削る、つまり室内を狭くするということである。

 カッコのためにここまで思い切ったことをするのは、昔のスズキじゃ考えられないことである。ある意味これも、ケータハムとの協業がもたらしたシナジー効果だろうか。「ケータハム7を見て下さい。タイヤがこんなにハミ出してますよ!」とか言って上を説得してたりして。

 最初に乗ったのはリアシートで、乗り心地がいいのに感心した。
 しかし運転すると、それほどでもなかった。
 最近のスズキには感じなかったフロアのペナペナ感が再発している。車台もパワーユニットもハイトワゴンのソリオと同じはずだが、あっちのほうが運転しているとはるかに上等で上質だった。
 
 と思ったら、イグニスはFFだと最軽で850kg。マーチの1.2ℓより90kg軽く、四駆のフル装備モデルでも1tを切っている。
 軽くするのが低燃費の第一歩と考えているのだろうが、軽自動車じゃないんだし、スタイリングもイタリアンコンパクトに負けていないのだから、ここまで車重を削らずに、その分、走りの質感を高めたほうがよかったのではないだろうか。

霊柩車最新事情

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 30年ぶりに霊柩車を取材した。前回はまだ他人事だったが、そろそろ自分が乗る日も遠くなくなったいま、最新事情を知っておきたかった、というのが発端なのだが、今回訪れた聞き慣れない製造メーカーは、なんと30年前に取材した会社が倒産し、その残党が立ち上げたものだった。

 トップメーカーがつぶれてしまうくらいだから、この業界も景気は芳しくない。いちばんの痛手は、ザ・霊柩車みたいな金色の宮型霊柩車(関西は無塗装の白木)がさっぱりウケなくなったこと。
 そういえば、最近、めっきりすれ違わなくなった。見かけて、親指を隠すこともなくなった、と思ったら、宮型はすっかり売れなくなり、すでにあるクルマも、お呼びがかからなくなった。葬儀の簡素化で、敬遠されるようになったからだ。


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 宮型にとって代わったのが、上のような“洋型”である。これはメルセデスEクラスワゴンがベース。
 数年前、父を送ったのも、たしかクラウンの洋型だった。父はクリスチャンだったので、宮型はあり得なかったが、洋型なら宗派を問わず使える。ベース車両が大型の外車なら、たとえば芸能人の派手な葬儀にも対応できる。工房では、クラウンマジェスタを1m80cmもストレッチした洋型霊柩車が鋭意製作中だった。

 だが、宮型なきいま、霊柩車の主流は、なんとミニバンだという。
 ミニバンの霊柩車なんてあるの!? と思っても不思議ではない。「霊柩車には見えないこと」が、ミニバン霊柩車の存在意義だからだ。

 病院から自宅や葬儀場へ遺体を移送する、業界用語で「病院下げ」と呼ばれる用途に、以前からミニバンが使われていた。それが葬儀用に昇格するようになったのである。


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 霊柩車に“吊るし”はない。すべて受注生産で、持ち込まれた車両を改造する。今は注文の6割がミニバンだそうだ。
 大型ミニバンなら、リアオーバーハングを延長する必要がない。写真上のエルグランドは、左側のキャプテンシートがそのまま残っている。ベース車両もアルミホイールを履いた“ハイウェイスター”で、マイルドヤンキーのマイカーにしか見えない。

 霊柩車がこんなことになっているとは知らなかった。
 ミニバン人気は論を待たないが、最後に乗るクルマもミニバンか。
 昔日を振り返って、製造メーカーの社長はちょっと悔しそうにこう言ったのだった。
「人間が、燃えるゴミ状態になっちゃったんですよ」

プジョー208スポール

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 プジョーのモータースポーツ部門、プジョースポールが主に足まわりをイジった特製208が、208GTi by Peugeot Sportである。
 
 ヘタッピなこの写真じゃわかりにくいが、試乗車は専用色のアイスブルーというつや消し塗装。陽が出ていると、いぶし銀みたいに鈍く光って存在感を放つ。キズつけたら高そうだが、カメラマンには好評だ。ボディに余計なものが映り込まないから。

 スポールは左ハンドル。右はつくっていないから、プジョー人気の高いイギリスでもディーラーでは売っていない。あの国は、左ハンドルだとグレーマーケットで買うしかないのだ。「追い越し文化」が定着していると、たしかに左ハンドルは危ない。
 その点、日本は左ハンドルに甘い。そのかわり、イエローラインばっかりだ。

 最近の右ハンドルプジョーにとくべつ不満を感じたことはないが、これに乗ると、やっぱり本国仕様がイチバンだと思った。とくに208はコクピットがタイトにできている。デカイ人は窮屈だろうなと思っていたのだが、左ハンドルはそうでもなかった。ペダル配置がより自然で、体の左側に余裕があるのだ。

 スポールは、208GTiのサーキット用大吟醸という感じ。GTiは、GTiというわりには乗り心地重視だから、出るべくして出た決定版GTiといえるかも。ま、370万円もするけど。

 個人的には、トゥルトゥル軽快に走る ポート噴射1.2ℓ3気筒+5段MT のいちばん安い208(199万円)がベストだと思う。かつてのシトロエンAX・TRSを彷彿させる楽しさがある。

昔のトヨタ

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 取材先で程度極上のカローラ・レビンを発見した。初代も初代、1972年型オリジナル27レビンだ。

 オーナーは、このところニュースなどでよく紹介されている3輪EVトランスポーター“エレクトライク”をつくったM社長。初代ミゼット式3輪レイアウトの弱点だったカーブで“コケる”のを防ぐために、後ろ2輪をそれぞれのモーターで駆動し、操舵と連動したトルクスプリット機構を与えた。JR南武線の高架下にある小さな会社だが、技術担当役員は、R33スカイラインGT-Rのシャシーを設計した元 日産のCさん。取材の時、「ごぶさたしています」と言って、なつかしい顔が現れたのでびっくりした。


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 エレクトライクのベース車両は、インドメーカー(Bajaj)が製造する世界最量販の3輪トラック(オートリキシャ)だ。インドにおけるカレーくらいあたりまえなローテク3輪車をハイテクEVに生まれ変わらせたのがおもしろい。
 でも、GT-RでハイキャスをやったCさんに言わせると、モーターを2基搭載したその重さだけで安定し、トルクスプリットがなくてもコケないという。そこをぜひにとこだわったのはM社長だけだった。

 Mさんは今でも27レビンで海外のヒストリックカーラリーなどに出ている元ラリードライバーである。東海大学では同級生の篠塚建次郎と仲良し。東海大相模高校時代は自動車部で、部車のミゼットでよくコケたそうだ。というか、振り回してわざとコケさせたにきまっている。

 そういう武闘派の過去が、ぜったいコケないEV3輪車を生んだのであった。EVつくりたかったんですか、それとも3輪車つくりたかったんですかと聞いたら、ふだんC63 AMGでぶっとばすMさんは「コケない3輪車」と即答した。こういう、つくった人の顔が見えるエコカーはよろしいと思う。

 エレクトライクの工場内に置かれている新同27レビンは、Mさんの老後の楽しみである。44年物にしてこの博物館コンディションもスゴイが、こういうクルマなのに、まったく改造していないのが驚きだ。
 74年に免許をとったぼくも27レビンには乗ったことがない。しかし、エレクトライクに乗りに来て、まさかこれもと言い出す勇気はなかった。残念。
下野康史(かばた・やすし)
下野康史(かばた・やすし)
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