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米坂線の謎

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 鉄道の大きな魅力は「レール」である。レールそのものに人をひきつける力があるのだ。と、最近とみに感じるようになったのは、トシのせいかな。いい線路があれば、べつに車両はなくてもいい、来なくてもいい。おかずがなくたって、おいしいゴハンさえあれば、みたいなことになってきた。いや、まさかおかずはなきゃいやだから、それだけレールには味があるということだ。

 ただし、電化路線はダメ。非電化路線のレール限定。架線やポールがあったら台無しだ。国鉄のSLが全廃に近づいていたころ、電化が決まった路線で工事が始まると、線路脇に立ち始めた真新しいコンクリの電柱のことを、撮り鉄(なんて言葉はまだなかったが)は「ハエたたき」と呼んで忌み嫌ったものである。


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「driver」誌の取材で米坂線を訪ねた。高校2年に上がる春休み以来である。
 山形県の米沢と、新潟県の坂町を結ぶから米坂(よねさか)線。1971年当時は、大正生まれのSL“キューロク”(9600型)がまだ旅客列車を牽いていた。

 この日は宇津峠の麓にある手ノ子駅へ行く。むかし来たときは日本海側の坂町から入って、小国(おぐに)で引き返したので、ここは初めて。 
 漫画みたいにショボイ駅舎! もちろん無人駅。国道のすぐそばだが、駅のまわりには人影なし、家も店もなし。


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 手ノ子駅のホームから米沢側を見ると、こんな美しいカーブがあった。大型車両が高速で走る幹線鉄道ではありえない曲率の小さい箱庭的S字カーブである。

 でも、なんでこんな細かいS字を描いているのだろう。見たところ、まわりはススキの原野である。いったい何を避けて曲がっているのか。

「driver」誌S君によると、距離を稼いで勾配をゆるくするためではないかという。つまり、自転車で坂道がきつくなると、否応なくジグザクに走るあの理屈か。


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 現場ではそれほどの急勾配には見えなかったが、ホーム足もとのレールを見たら、空転の補修箇所を示すペンキ文字があった。発進時に空転すると、クルマはタイヤが減るが、鉄道車両はレールのほうが減るのだ。山の中だと見当が狂うが、このへんからして実はけっこうな上り坂なのかもしれない。
 
 出力の微妙な調整がむずかしいSLで、発進時に空転はつきものだった。てことは、この空転痕、もしかしてキューロクの置きみやげか。                                                                                                                                   

川場村のデゴイチ

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 群馬県の川場村に村営のすごいアトラクションがある。圧縮空気で動くデゴイチ(D51)。蒸気機関車ならぬ、空気機関車だ
 線路は平坦の直線で、たったの150メートル。客車1両を牽いて、そこを2往復するだけだから、圧縮空気でこと足りるというわけだ。



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 デゴイチは、かつて北海道を走っていた本物。石炭と水を積む炭水車には、工事現場でよく見かけるコンプレッサーが搭載されている。
 運転と整備をひとりでこなす大忙しのО機関士も、元国鉄のホンモノ。デゴイチの動輪のメタルの溶融温度は430℃、なんてデータが即座に出てくるスゴイ人で、全国各地のSL復元に手を貸しているらしい。

 噂には聞いていたが、見るのも乗るのも初めてだ。正直言って、煙の匂いもしない、冷たいSLなんて、と、こっちも冷ややかな目で見に行ったのだが、いやあ、とんでもない。なかなかの迫力でした。

 ピストンを圧縮空気で動かすとはいえ、動輪やクランクのガチャガチャいうメカノイズは盛大に聴こえる。乾燥重量でもゆうに100トンを越すアナログ機関車が自力で動くさまは、やはり感動的だ。
 こんなスペクタクルを1回500円で体感できるとは、お安い。圧縮空気のせいなのか、濁りのない汽笛の美声を聴くだけでも価値がある。
 都心から関越道経由で150km。SLファンならずとも、夏休みのニコニコドライブにお薦めです。



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 小淵沢の大カーブへ行く。
JR小海線が小淵沢を出ると、ほどなく大築堤の上で右にほぼ180度ターンする。始発駅を出てすぐ反転するなら、逆向きに走り出せばいいのに、なぜこんなふうにレールを敷いたのか。諸説あるらしい。

 でも、このミステリーのおかげで、“撮り鉄”御用達、小海線随一の撮影ポイントが出来た。あいにくこの日はこんな天気だったが、晴れていると、遥か南アルプスを借景にしたスゴイ写真が撮れる。

 鉄道写真では築堤がそもそも最高のお膳立てである。プラスここは180度ターンの急カーブだから、カントのついたレールの上で車両がきれいにバンクする。クルマはドリフトするけど、鉄道車両はしたら脱線なので、全体を傾ける。鉄道車両がちょっとでも傾いていると、カッコイイ!?と思ってしまうのは、やはり鉄ちゃんだからだろうか。

 衛星放送で、「鉄道チャンネル」というのがある。お金がなくて、昼はずっと地方競馬の中継をやっているので呆れるが、オリジナルメニューが始まるともっと呆れる。

「運転室展望」という番組では、30分とか1時間とか、運転士目線の車窓映像が流れる。地方の私鉄がほとんどみたいだが、始発駅から終点まで、ナレーションもなく、線路は続くよどこまでも的動画が延々続くのみ。ぼくくらいだと、さすがに全編付き合うことはないが、環境ビデオ的にずっとつけておくのはアリである。

 鉄道になんの関心もない大学生の息子が、その番組をたまたま目撃して「これ、どういうことなの?」と言っていた。
 でも、おまえだって人間椅子のギタリストの右手アップ動画が流れてたら、ずっと見るよな?

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小淵沢の大カーブ

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 中央道下り線の小淵沢付近を走っていたら、突然、斜め横にディーゼルカーが現れた。高速道路の下を十字に交差して、左手に抜けて走り去ってゆく。こっちもクルマで走っているので、見えたのはほんの数瞬だ。でも、順光が車両の横っ腹を照らし、しかも背景は見事な“空抜き”。助手席で目ざとく気づいたカメラマンはとくに鉄ちゃんでもなかったが、思わず顔を見合わせるほど美しい光景だった。
 そこが有名な「小淵沢の大カーブ」だったとは、あとになってから知った。小海線の写真を撮る人なら、知らない人はいないらしい。

 ハイブリッド車両の取材(ルボラン11/26発売)に行ったきのう、初めてその現場を訪ねた。東からやってきた小海線が、小淵沢駅に入る手前でほぼ180度ターンをする。中央道をくぐってから築堤をゆく南側のカーブ後半部が撮り鉄垂涎の撮影ポイントだ。

 バックは紅葉の連山。晴れていると甲斐駒ケ岳まで見える。このときは雲がかかっていたが、雲間から差し込む光が山肌に陰影をつけて、すごくきれいだった。
 しかし、いちばんきれいだと思ったのは、線路である。鉄道が人をひきつけるのは、何があっても変わらない鉄のレールがあるからこそだと思う。まっすぐでもカーブでも、レールって本当に美しい。

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井川線のアプト式

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 日本で唯一のアプト式鉄道、大井川鉄道井川線に乗りに行った。正確に言うと、今回は外から見ただけ。90パーミル(1000m進んで、90m登る)の急峻を行く列車を大井川河岸のキャンプ場から見る。

 しかし、90パーミルといえば、坂バカ自転車乗りの世界で言う9パーセントである。伊豆にあるサイクルスポーツセンター周回路の最高勾配は12%。10%を超すと、たしかに急坂の部類ではあるが、「激坂」というなら15%以上だろう。アプト式機関車のデッキから撮った現場写真(下)を見てもわかるとおり、9%なんて、自転車乗り的にはぜんぜん大した坂じゃないのである。

 なのに、鉄道はもう線路のラックと、機関車のギアを噛み合わせる奥の手を使わないと登れない。金切り声をあげて匍匐前進するアプト列車を見上げながら、あらためて「自転車(と人間エンジン)スゴイ!」と思わされたのだった。

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下野康史(かばた・やすし)
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