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書庫チェロ好き達の宴

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シチュー会

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 総選挙と都知事選の投票をしてから、磯野正明チェロ教室の忘年会へ。
 毎年、この会はシチュー会といって、先生お手製のおいしいビーフシチューが50人を超す参加者に振る舞われる。

 今年はその前に、八王子いちょうホールで6月に開かれた「チェロ好き達の宴」を聴く会が開かれる。当日は録音録画禁止だったので、70人近い参加者のだれも自分たちの演奏のリプロダクションを聴いていない。

 会場で録られた本番の演奏は、思っていたよりずっとよかった。ステージで弾いていると、いちばん大きく聴こえるのは、しばしばトチったり、外したりしている自分の音だが、カタマリで前に出ていく音は、それよりずっとイイ。集団の力というのはスゴイものである。

 シチュー会の余興で、われらが「アンサンブル火曜日」は、小学5年生(友情出演)からオーバー還暦に至る5人編成でおそれおおくもラベルのボレロをやる。2重奏の楽譜をぼくが持っていたので、それを手分けしてやればいいかなと思っていたら、メンバーのオックンVCがオーケストラのフルスコアからつまんで、5重奏譜をつくってくれた。

 2週間前に一度集まって、3時間練習した。むずかしいし、思うようにいかなくて、一時はあきらめかけたが、ま、忘年会の余興なんだから、やっちゃおやっちゃお、というノリで臨んだ本番である。

 結果はまあ、楽しかった。ラベルのボレロというよりも、「低レベルのボロロ」みたいな部分もあったが、この曲をチェロだけでやる勇気とお調子者ぶりだけは示せたかなと。


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(磯野先生の模範演奏は、ラフマニノフ)

 日曜日は、磯野正明チェロ教室の発表会。「アンサンブル火曜日」5人で、夏の終わりからずっと格闘してきたクレンゲルの「ガヴォット」と、明らかに練習不足の「家路」をやる。

 だれでも知っている「家路」は6重奏。ほかのグループとの合同で11人の大所帯。これだけ人数が多いと、スケジュール調整が大変なこともあり、練習が足りなかった。しかも、正式名はドヴォルザーク作曲「新世界より」の第2楽章だから、10分以上かかる長い曲だ。個人的な事情としては、不祝儀があって、1回のみだった先生のレッスンに参加できなかった。

 時は経って、きのうの本番。担当は2番チェロ。中盤に16分音符8小節攻撃の難所がある。なんとか突破できる予定が、2小節目あたりでリズムを見失って、落ちる。その後はまさかのエアチェロ状態。「家路」どころか、完全に「迷子」。でも、先輩チェリストの「そういう場合は、わからないように平然としているべし。場合によっては、隣の演奏者の顔を見るなどして、罪をなすりつける」的なアドバイスを守って、切り抜ける。聴きに来ていたヨメさんに聞いたら、「わからなかった」らしいから、よかったよかった。
 教訓。君のことを、人は気にしていない。アメリカンロックの歌詞にしょっちゅうある。Who cares?

 しかし、チェロってものは、なんでこうもむずかしいのか。それにひきかえ、うまい人はなんでああもうまいのか。この落差がモチベーションにはなるわけだけど。                                                                                                                                                            

やっぱりドイツ物

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(わかりにくい比較……)

 バッテリー駆動のデジタルメトロノームがこわれてしまったので、ウィットナー(Wittner)の“タックテル・スーパーミニ”を買った。高さ10cm。世界一小さい振り子式メトロノームだ。家で使うときはそんなに小さい必要はないので、ノーマルサイズのセイコー振り子式も購入した。

 振り子式を使ったのは初めてなんだけど、いいですね。クルマのアナログメーターとデジタルメーターの違いと同じ。視野の片隅で振り子が動いていると、音だけのメトロノームと違って、視覚でもテンポ感がつかめる。“経過”がわかるのだ。

 ウィットナーのチビにはびっくりした。さすが19世紀からメトロノームをつくっているドイツの老舗だ。大きなセイコーより音色がいいのである。コツコツという打刻音はまるみがあって、しかも、ちゃんと通る。セイコーはガッチガッチいって耳に触るし、妙に音階を感じさせてしまう。うるさい指揮者みたいだ。

 さらに感心したのは、ゼンマイのもちだ。フルに巻いてから同じテンポで比べると、ウィットナーはセイコーの倍近く鳴り続けた。こんなミニでも20分以上もつ。10分強で終わったセイコーは、ちょっと短すぎだ。

 ただし、セイコーは2拍子から6拍子まで、拍の頭を告げるベル音が出せる。その機能がなきゃ、メトロノームはダメでしょ、という人もいるだろう。ウィットナーは携帯用だから仕方ないし、ミスるたびに拍の頭まで待たないといけないから、ぼくはベルなしでもいい。それくらいしょっちゅうこっちのテンポがズレるってことなんだけど(哀)。


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チェロの胸当て

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 案の定、「やっぱり梅雨開けしてました宣言」が出た。
 梅雨開けって、通常、太平洋高気圧の勢力が増して、梅雨前線をグイッと北に押し上げることだから、開けたての暑さは、開けたての七味唐辛子の辛さと同じで、格別なのだ。

 先週末の練習のとき、気がついたら、チェロの裏板のエッジがこんなに剥げていた。ちょうど胸で支える部分。汗のせいだけじゃないだろうが、これ以上、オレのストラディバリウスを傷めるわけにはいかない。

 プロでも、練習のときには手製とおぼしき布製のガードを付けている人がいる。調べたら、「チェロの胸当て」という名で既製品もあった。ただし4千円もする。いくらストラディバリウスでも、そこまでは出せない。

 よーし、そんなら自分でつくろう、と、ユザワヤで革の端切れと、革ひもを買ってきて、自作した。
 最初はウチにあった薄手のフェルトでつくったのだが、軽いし、滑るので、弾いているうちに、あるべき位置から外れていることがある。その点、革はしっとり吸いついてくれるので都合がいい。“見ば”は悪いが、裏側だからいいでしょ。材料費、500円ちょっと。



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チェロ好き達の本番

イメージ 1(開演前のリハーサルで、最後の熱血指導にあたる磯野正明先生。多摩地区でチェロを習うならこの人。3時間後、800人収容のこのホールが8割方埋まった)


 オーバー70台、チェロのみの大アンサンブル演奏会「チェロ好き達の宴 in 八王子」、無事終わる。
 無事といっても、演奏中の本人はしばしば“有事”に陥るが、自分がトチっても、ほかの人がちゃんと演奏している、してくれている、というのが素人アンサンブル(合奏)の妙味だ。

 きのうのリハーサルからゲストのプロ・チェリスト8人が参加。人数が1割強、増えただけなのに、演奏の質は8割増しくらいに向上する。正しい演奏に善導されて、ホント、いきなりみんなうまくなる。

 しかし、すごいな、プロって。こっちは出すだけでイッパイイッパイの高い音を、苦もなく取って、しかも発音と同時にヴィブラートがついている。隣で聴いていて背筋がゾクっとする。いいのか、同じ楽譜弾いているお隣さんに感動していて!?
 でも、本番ではプロと同じステージに乗れるというのが、このイベントの稀有な魅力でもある。 

 曲目は「G線上のアリア」からアンコールの「星に願いを」まで全15曲。前半の「エーデルワイス」では、なぜかリズムに急ブレーキがかかった。タクトでは収拾がつかず、ついに先生が鬼の形相を繰り出してスピードアップを図る。

 この曲だけはほとんど“事故”だったけど、あとはまずまずだったような気がする。
 大作の難曲「スターウォーズ」も、前のめりで弾けた。ジョン・ウィリアムスの曲をやれるなんて幸せだ。

 ブラボーコールもあったし、手拍子も起きた。客席の手拍子があんなにうれしいものとは思わなかった。自転車のイベントでも、沿道から声援してもらうと元気百倍になるけど、応援っていうのは、されるほうにとってはつくづく「エネルギーの供与」だなあと思う。

 開演前の最終リハーサル終了後、磯野先生がみんなに挨拶された。15曲の合奏譜を書き上げることから始まって、いちばん苦労したのは先生なのだが、4月から延べ40時間にわたる練習についてきた参加者への敬意と感謝が語られる。斜向かいの女性が泣きそうになっていたのを見て、ヤバイ!と思って別のことを考える。
 しかし、いくつになっても、こういう魂を揺さぶられる経験はいいな。


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下野康史(かばた・やすし)
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