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数年ぶりにH子に呼び出された私は、以前会ったことのある喫茶店に出向き、彼女と会いま
した。 彼女は私の顔を見るなりポロポロと大粒の涙を流して声を詰まらせながら語り出したのです。 彼氏が交通事故に遭ったこと。そして、植物人間同様な状態になったこと。 愛する彼氏が遭遇したこのあまりにも過酷な運命に彼女は泣いたのです。 彼女は、泣きながら声をしゃくり上げるようにして 「私ね。彼の看護をしようと思うの。わたし変わったでしょう。」 彼女のいじらしいばかり思いと思い詰めたような言葉に私はただただ励ますしかありません でした。 彼女が彼氏の看護に当たったのは、その翌日からでした。そしてその日から3週間あまり 彼女はほとんど寝ずの看護をしたのです。植物人間のようになってしまった彼氏の看護は大変 だったのです。寝たきりの彼氏の寝間着を洗う。下着を洗う。おおきなおしめを洗う。そして、 物言わぬ口にそっと食事を与える。 彼女、こう言いました。 「先生、大変なの。彼のおしめとっても大きいし、出る量も沢山なの。毎日クタクタ」 でも、彼女は頑張った。 あの学校きってのつっぱり女が、彼氏の交通事故を通して見事に変身していく。つっぱりス タイルを好んだ彼女が、このことをとおしてワンピースの似合う女性へと変貌していく。私は、 目を細めてそんな彼女を見つめていました。人間って素晴らしい。人は誰しも幸福になろうと し、又成長しようとする動物なのです。人間って素晴らしい。 私は彼女からまた一つ大切なものを教わった気がしました。 彼女と彼氏とのその後はどうなったのか。結局は紆余曲折があり、彼女は数年後、妻子ある 男性と恋仲になり、そのことの相談を持ちかけられたことがありました。彼女は恋い多き女性 でした。この件もまた大変は紆余曲折があり、一女をもうける母親になったのでした。 月日が流れて彼女とも連絡が途絶え、気になりながらも私の世界からも消えかかっていまし た。 そんなある年の入学式のことでした。入学式が終わって式場の後片付けをしていたら、事務 所から面会したいという人が事務所前に来ているので事務所にきてほしいという連絡が入った のです。急いで事務所前に行ってみると、なんと驚いたことにあのH子が立っていたのです。 それも一児の母親として・・。なんと娘が私の学校に入学してきたのです。こんな嬉しいこ とはありません。在学中、わるの女の子だった彼女が、今、立派な母親として私の前にいる! それは感激のほかありません。ましてや、中途退学した彼女が自分の娘を私の学校におくっ てくれたのです。 彼女は、照れながら言いました。 「先生!この子、私と違ってまともよ!」 美人のその娘はとても素直そうに見えました。嬉しくなりました。内心思いました。 ”違うよ。H子、君が素晴らしいからだ。君が美しくなったからだ!”と・・。 彼女は、学校給食の仕事をして、女手一つでこの娘を育て上げたのです。 人間って素晴らしい。愛すべきは人間だ。彼女に乾杯!彼女の人生に乾杯!(続く) http://members3.jcom.home.ne.jp/kabanotakara/ |

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