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とても面白くて素敵で格好いい小説を読み終えました。
「約束の冬/宮本輝」
ドラマチックな展開も刺激的な話もないんだけど(必要ないし)、様々な登場人物が織りなす言動、過不足を感じない絶妙な描写、がこの小説独自の空間を生んで心地良く楽しく読めました。
前から本の帯に書いてある「空飛ぶ蜘蛛を見たことがありますか?」というフレーズが気になっていていつか読みたいと思いながらも、「十年後、地図の場所でお待ちしています。ぼくはその時、あなたに結婚を申し込むつもりです」という一節を用いた解説に、メロドラマか!と思って後回しにしてました。
まったく甘くないロマンチックな面もあるけど、恋愛話ではなくて素敵な人たちの話でした。あとがきで作者が、このような人が自分の近くにいてくれればと思える人物だけをばらまいた、と書かれていますが、ホントそんな感じで素敵な人たちが到るところに出てきます。
ちょっとした仕掛けとしてお金の話も出てきます。素敵な登場人物はお金についても、ほどよい関わりと対応をします。浅ましくもなく敬遠するでもなく、綺麗な距離感です。贅沢の仕方も素敵です。ヒロインの弟の滑稽でロマン溢れるお金がない様もいいなぁ。
「約束」というものとの関わり方も主要テーマです。小さいものから大きいもの、目先からずーっと先、意識のある約束から自覚無いのや本来無関係のものまで、いろんな約束が出てきます。説教臭くはないんですよ、人としてこういうのが良いよねでもいろいろ葛藤もあるよね、と優しく捉えています。
安っぽい感動の押し売りのない気持ちの良い小説です。
ちょっと荒んでる人も(^_^;そうじゃない人も、ぜひ読んでください。
そうだな、言うなれば、デトックス小説ですね。心と頭の老廃物や不要なものを排泄してスッキリすると思いますよ。
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