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 それは……とても暖かくて……とても美しく……本当に世の中がこんなに美しかったら……本当に世の中がこんなに幸せだったら……

 これは、物語の最後、厳しい現実と向き合い、肉体的にも傷ついて、辞職を願い出た岡田将生演じる青木捜査官に、生田斗真演じるリーダー薪 剛が、辞表を抽斗(ひきだし)にしまいながら、「時間があるときにでも見ればいい」とわたした、メモリー・スティック内の動画を再生しつつ青木がつぶやく言葉です。

 初夏を思わせる陽気、さわさわと、木のざわめきが聞こえてくる自宅書斎で、動画を再生するディスプレイを見つめる青木の目に、やがて涙が……

 この間、どんな映像なのかは写りません。

 おもむろに立ち上がり、痛む足を引きずりつつ、別室に昏睡状態で眠る父のもとに行き、手を取って、さらに涙を流す青木。

 なに?いきなり感動風ラスト?

 なんだよ、どうせ、さわやかな青空が広がる草原とか、生命に満ちあふれた海とか、そんな映像だろ……

 それまでの、登場人物たちの、大げさで滑舌悪く、通らない声でヒステリックに叫ぶ、浅薄(せんぱく)かつ薄っぺらい演技に辟易していたわたしは、斜(はす)に構えて早送りボタンを押そうとしたのですが……

 リモコンを探すうちに、

「忘れるな、美しい世界は、きっとすぐそこにある」

 この台詞とともに通路を歩み去る薪剛の姿が映り、

 少し色味のおかしい映像に切り替わります。

 そして……

 どうやら、わたしも、トシをとったようです。

 まさか、こんな映像を見せられるとは……卑怯といえば、こんな卑怯な手はない。

 泣きましたよ。泣いてしまいました。
 久しぶりに邦画で泣きました。

 確かに伏線は引いてありましたね。


 その前にもいくつか、コツン、コツンとひっかかるものはありました。
 ヒトは死ぬ直前に、現実かどうかはともかくとして「美しい映像を観る」という話(個人的には、それが天使の歌が聞こえる光の国の臨死体験だと考えています)だとか……
 友人の死に責任を感じていた薪剛が、友人が死ぬ直前に観た映像(ヴィジョン)を見ることで、精神的なダメージから復活するわけですから。

 原作漫画は未読ですし、アニメ作品も未見で、そもそも、この作品にはほとんど興味はなかったものの、「脳男」「予告犯」の生田斗真が主役だし、他に観るものもないし、時間は少しあるし、ということで、レンタルして観た作品です。

 物語の終盤まで、「フランケンシュタインの誘惑」ばりに、吉川晃司は頑張ってるけど、生田斗真以外の役者の演技と演出がなぁ、と思っていましたが、ラストで持っていかれてしまいました。

 観る価値があるかどうかは、ひとそれぞれですが、最後の映像に反応するかどうかが、この映画の評価の分かれ道であるような気がします。

 妙な表現ですが、「秘密」は、ストーリーではなく、評価に「大どんでん返し=秘密」が仕掛けられた作品であるように思うのです。

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