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 この映画は、珍しく試写会に当たったので、公開前に、一度観ることができました。

 先日、二回目を観てきたので、思いついたことを書いておきます。

 キングコングといえば、本格的な白黒モンスター作品である1933年公開の映画、日本で作られた「キングコング対ゴジラ」(これは、今回の映画とも多少関係があります)や「キングコングの逆襲」といった和製亜流モノ、そして個人的には一番親しんだ「ウッホーウホウホウッホッホー」の歌でおなじみの1967年アニメ版キングコング(藤田淑子さんの声が素敵)や、実写では1976年版ジェシカ・ラング・コング、そして歴代コング映画では、一番好きな2005年版ナオミ・ワッツ・コングなど、数多くの作品が作られていますが、この「キングコング 髑髏島の巨神」(以下、髑髏コングと表記)が、これら前作品と違う点は大きく2点あります。

 まず、髑髏コングが大きいということ。
 ナオミ・コングが18.8mなのに対して、髑髏コングは31.6mと倍近い体格になっています。
 実際、ヘリコプターと比べても(そもそも髑髏コングはヘリコプターの高度まで手が届くのがすごい)、人間と比べてもかなり大きい。

 この変更は、もちろん、画面上で迫力を出すためなのでしようが、やはり2020年公開予定のGodzilla VS. Kongで激突予定の、あの渡辺謙出演の「アルマジロゴジラ」と大きさを合わすための巨大化でもあります。

 つまり、このコングは、2014年版Godzillaと同じ、キングギドラやモスラと世界観を共有し、人類と怪獣との戦いを描く「モンスターバース」シリーズ映画の第二作になるのです。

 これで、アイアンマンやキャプテン・アメリカ等、マーベルコミックの実写映画化である「マーベル・シネマティック・ユニバース」、バットマンやスーパーマン等の「DCエクステンディッド・ユニバース」と並んで、(過去の資産で食っていく)三大ユニバース・シリーズがそろい踏みしたことになりますね。


 「髑髏コング」は、広告チラシにあるように、日本怪獣映画、エヴァンゲリヲン、AKIRA、ジブリ作品、メタルギアソリッドなどの一連のゲームなど、ジャパン・カルチャーに対するオマージュに溢れています。

 しかし、観終わって、とりわけ感じるのは、コングの後ろ姿、背中に浮かんでくる「漢」の文字でした。

 彼は、髑髏島の住人(ヒト、水牛?を含め、地底から現れる「コノ世ナラザルモノ」以外のすべての生き物)の守護神です。
 もちろん、彼も猿型のイキモノなので、肉も食らえば果物も食べるでしょうから、折衝もするでしょうが無駄な殺しはしない。

 後に、自分を襲った兵士さえ、巨大タコに襲われる前に倒して守ってくれるシーンがありますが、その時も「これは、お前を守ってやったんじゃないぜ」とばかり、動くタコの足をスルメよろしく口にくわえ、「さっき怪我したから、タンパク質をとらねーとなー」とばかり、巨大タコを引きずりながら山間に消えていきます。

 まさに髑髏島の巨神。


 だから、突然やってきて、地中に爆薬を打ち込んで大音声をとどろかす(おそらく彼の見たことのないイキモノ)ヘリコプターを敵と見なすのは当然で、ローターで手を怪我し、彼にとってはネズミのフンほどもない銃弾をチクチク打ち込まれながらも、壊滅させるのは仕方ない。

 そもそも、それは、土中の形状捜査という名目で(その意味も多少あるのでしょうが)、騒ぎを起こせば、「怪物」がやってくるのを知っていた、ジョン・グッドマン演じるウィアリアム・ランダの計略なのですから。

 彼は、数十年間、怪物との遭遇だけを待っていたのです。


 時が経ち、ランダの計略を知り、髑髏島では人間が一番弱い生物であると悟った異邦人たち(兵士含ム)が、島の状況を知るにつれて「コングの行動やむなし」と納得するのはなかなかうまい作りです。

 その考えに、司令官としての資質にすぐれ、沈着冷静で、責任感のある、サミュエル・L・ジャクソン演じるパッカード将軍が文句をつけるのもいい。

 本来、良いソルジャーであるはずのパッカードは、泥沼で、永遠に勝利を得ることのない「大儀なき」戦い(本人とUSAは決してそうとは認めないでしょうが)ベトナム戦争の敗戦、撤退を受けて、ひどく傷ついたまま、最後にひと花咲かせるために髑髏島に乗り込んできたのです。

 それが、連れてきたヘリコプターと兵士を、ほぼ壊滅された。

 ベトナム戦争は、第一次、第二次大戦と勝利してきた米国が、初めて負けた対外戦争(彼らは認めないでしょうが)で、しかも負けた相手が、ナチスドイツや日本のように、明確な軍事組織ではなく、民兵主体のゲリラ部隊(異論のある方もおられるでしょうが)、そして米ソ冷戦構造の変化や反戦イデオロギーといった、純粋戦力のぶつかり合いで勝敗を決めたのではなく、うやむやに負けと決めつけられた理不尽な戦いだったと、パッカードは思っているのです。映画の冒頭で、そういった表現が垣間見えますね。

 しかし、最後の戦いで、彼は、明確で、実体のある、倒すべき「意義」のある「敵」とであってしまった。

「死んだ部下の仇をうつ」

 何度かパッカードが口にする言葉ですが、それは嘘です。
 彼は、最後に戦うに足る敵に出会った僥倖を無駄にしたくなかっただけなのです。
 そういった兵士のルナティックな眼の光をS.L.ジャクソンはうまく表現しています。

 もう1点、これまでのコング映画と違う点が、ヒロインの扱いです。

 同じ類人系とはいえ、亜種とさえ呼べないほど大きさも見かけも違うヒトの女性を、コングが好きになるという、これまでの荒唐無稽な設定を、今回のコングはとっていないのです。

 正確にいうと、これはごく個人的な意見ですが、前回のナオミ・コングも、女性としてのヒロインに「恋をした」のではないと思っています。

 あれは、コングのすみかに連れて行かれた、コメディエンヌでもあるヒロインが、殺されないために、舞台で演じていたコミカルな動きを見せる。
 コングは、可愛いおもちゃ、いや綺麗なペットとして、その小さきヒロインを愛してしまったのです。

 ヒトも、愛するペットのために、車道に飛び出たり、命を危険にさらすことがあります。それは、決して男女の愛に劣るモノではないのです。

 話が横道にそれました。

 今回の女性カメラマン、ブリー・ラーソン演じるメイソン・ウイーバーも、コングから「オンナ」として愛されている設定ではないようです。これはいい。




 さて、長々と書き連ねてきましたが、今回の髑髏コングの最大の美点は、第二次世界大戦中に、零戦と戦って墜落し、以来数十年を島民と暮らしてきた、ジョン・C・ライリー演じるハンク・マーロウにあります。


 彼こそは、かつて希望に溢れ、今のようにひがみっぽくなく、おおらかで、陽気だったアメリカ人を体現しているのです。

 わたしが子どもだったころのアメリカ人像は、例外はあるにせよ、彼のような男でした。

 決してハンサムではないしヒーロー然ともしていない(ハゲてるし、腹も出てる)。
 でも、危機にあってジョークをいい、見知らぬ者と物怖じせずに友だちになり(かつて撃墜しあったゼロファイター・パイロットとさえ)、勇気を持って怪物に立ち向かい、お天道さまに恥ずかしいことはしない、他人の理不尽な言動にもキレずに落ち着いて話しかける。

 おそらく、彼のキャラクターこそが、この映画で監督の描きたかったものなのでしょう。
 エンディングの、あせたフイルムによって写される「兵士の帰還」のシーンがそれを表しています。


 以上、わたしにとって、髑髏コングは好きな映画のひとつになりましたが、二点だけ、実質一点だけ気に入らない点があります。

 それは、敵を、実在したイキモノにしなかったことです。
 少なくとも、古代生物そのものでなくとも、過去の生き物につながる生命樹から伸びる進化系生物にすべきでした。
 ナオミ・コングでは、敵はティラノ・サウルスが進化、巨大化したバスタトサウルス・レックスでした。ヒロインを捜す途中で、じめついた谷間に落下したクルーが遭遇する気味の悪い生き物は、線虫が巨大化したカルニティクスです。

 しかるに、今回の敵は、誰もみたことがない、地底からわいてくる嫌らしい生き物、足のないスカル・クローラー(命名:ハンク・マーロウ)です。
 実際は、1933年版に出てくる由緒正しい敵らしいのですが、これを、コング最大の敵にしたのが納得できない。

 2005年ナオミ・コングとの差別化もあったのでしょうが、こいつがハバをきかせすぎているために、敵にリアリティを感じられないのです。
 世にアマタいる恐竜ファンの機嫌をそこなわないように、あえて架空の生物を持ち出したのでは?と勘ぐってしまいたくなります。
 ナオミ・コングの髑髏島生物は魅力的でした。

 ともあれ、髑髏コングは魅力的なモンスターです。
 寡黙で、男気がある。
 彼が、背中をみせて静かに去っていく時、わたしの目には、筋肉の盛り上がった背中に大きく「漢」の文字が浮き上がって見えました。

 あえて二つ名を与えれば、かれは「大漢猿=オトコング」なのですよ。


 ちなみに、エンドロールが始まってすぐに立ってしまったお客さんは、最後の最後の最後に示される、組織モナークによる怪獣世界、モンスターバースの紹介を知らないまま家路についてしまうので、今後、この映画を観る方はご注意を。


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