華陀の色々感想部屋

色々感想です。ついでに稀にSSとお絵描きも。どうでもいい人はお帰りを。暇な方は読んでくださると喜びます〜

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食堂の上が大きなホールになっていて舞踏会はそこで行われていた。
会場ではギーシュは何時も一緒に居る金の髪の女の子と一緒に話していて、キュルケはいつも通りたくさんの男に囲まれて笑っている。
タバサはテーブルの上の料理と一生懸命格闘しているようで、シエスタは最初に恭也の元に料理やワインを持ってきた後はずっと忙しそうに働いている。
恭也はバルコニーからその風景をぼんやりと眺めていた。

「どうした相棒、考え事かい」

「……ああ」

「さっきの話か?ま、帰る情報がなかったんで気落ちする気持ちは判るがあんまり気にすんなよ」

「いや、確かにオスマン氏の話は残念だったがそのことじゃないんだ。皆を心配させているだろうことは心苦しいし、もしかしたら死んだと思われているだろうことを考えても確かに胸が痛む。
だがそれでも元々そういう仕事に就いていたんだ。家族も友人達もそのことは判ってくれていると思う」

(第一ルイズに召喚されていなければ恐らくあの爆発と落下で既に生きていなかっただろうしな……)

「ん?じゃあなんだってんだ?他に相棒が悩むようなことがあったか?」

「……デルフ、お前は最初に俺のことを「使い手」と呼んだな?それはさっきのオスマン氏の話に出てきたガンダールヴということか?」

「ん、んーどうなんだろうな」

「おい、こっちはそれなりに真剣に聞いているのだが?」

「あー悪い悪い、ふざけてる訳じゃなくってな、ホントにわからねーんだわ」

「わからない?」

「と、いうよりは忘れてるって言った方が正しいか?ガンダールヴってのも頭に引っかかる言葉なんだがどうしても思い出せなくてな」

「……そうか」

「わりーな。んで、それがどーかしたのか?」

「いや、まぁ良いさ。少し気になっただけだ」

「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな〜〜〜り〜〜〜」

丁度話を終わらせるように聞こえてきた門番の声の方を向くとそこには美しく着飾ったルイズが舞踏会の会場に入ってきたところだった。
主役が全員揃ったことを確認した楽士たちが曲を奏で始め、そのルイズの美貌に驚いた男たちがダンスの申し込みをしようと群がっていた。
恭也は先ほどオスマンと話した虚無の本に関することを話さないといけないな、と思うがあれではこの舞踏会中に話すことは無理かと考えながらボーっと眺めていた。
ホールでは貴族達が優雅に踊り始めていた。しかしルイズは周りの男の誰からの誘いも断ると辺りを眺め、バルコニーに居る恭也に気づくとこちらにやってきた。

「少しは楽しんでる?」

あまり飲み食いもせずにただボーっとバルコニーから眺めている恭也に対してルイズは首を傾げながら尋ねた。

「酒はあまり得意では無くてな。ただ食事はそれなりに楽しませてもらっている。誰かさんの与えてくれた餌よりは余程美味いからな」

「う……そういえばあんた食事はどうしてるの?」

「一応食堂の手伝いをする代わりに賄い食を頂いている」

「食堂の手伝いってそんなの従者やメイドの、平民のやることじゃない」

「雑用を使い魔にやらせているルイズに言える事じゃないだろう」

「そ、それはそうだけど……そうだ、学院長と何を話したの?」

「……まあ色々とな。一応ルイズにもしておきたい話があったんだが……」

「話?」

「ああ、だが後で良い。折角の舞踏会だからな、ルイズは誰かと踊らないのか?」

「相手が居ないのよ。それにあんたはどうなのよ?」

「随分誘われてたようだが……オレは流石にあの中に入っていくのは場違いな気がしてな」

「そう、し、仕方が無いわね。だったら踊ってあげても、よくってよ」

目を逸らしちょっと照れたようにしながらルイズはすっと手を差し伸べた。

「いや、別に無理して踊ってもらわなくても……」

その恭也の反応にルイズは目を吊り上げて睨むがすぐに呆れたように溜息をつくと、

「今日だけだからね」

そう言ってドレスの裾を恭しく両手で持ち上げると、膝を曲げて恭也に一礼した。

「わたくしと一曲踊ってくださいませんこと、ジェントルマン」

そう言って顔を赤らめて、それでも真っ直ぐ見つめる瞳に引かれ恭也はルイズの手を取った。

二人は並んでホールへ向かった。





ダンスの間初めに交わした一言二言からずっと黙っていたルイズが口を開いた。

「ねぇ、帰りたい?」

「……ああ、そうだな。しかし帰り方は分からないし、どうすることも出来ないからな」

そうよね……、と呟きルイズは俯いた。

「ただ、俺はルイズに召喚されてなければその時点で死んでいたからな。だからその点は感謝している。ありがとう」

……それに、という後に続いた呟きはルイズには聞こえなかったらしいが恭也のお礼の言葉に顔を上げて驚いた顔をした後もう一度顔を赤らめながら俯いた。
そして思い切ったように口を開く。

「ありがとう」

その言葉に今度は恭也が驚かされた。

「その……、フーケのゴーレムに押しつぶされそうになった時に助けてくれたこと、まだお礼、言ってなかったから。それに、その後も恭也は一人でゴーレムと戦ってくれたし」

「そうか、だがフーケに止めを入れたのはルイズだったのだろう?別に俺一人の力でフーケを倒した訳じゃないしな。だから気にするな」

「それは、そうだけど、でも……」

「俺は君の使い魔だからな」

その言葉に顔を上げたルイズを見つめ、

「この世界に居る限り、俺は何があっても君の事を守る」

恭也はそう言ってルイズに笑いかけた。




その様子をバルコニーから眺めていたデルフリンガーこっそりと笑いながら呟いた。
「おでれーた、相棒、てーしたもんだ。主人のダンスの相手をつとめる使い魔なんて、初めて見たぜ!」






久々に更新
そして一巻がやっと終わった^^;

「それにしてもまさかミス・ロングビルがフーケの正体だったなんてねぇ。あなた達いったい何時から判ってたの?」

フーケを縄で縛りシルフィードで学園に向かっている時にキュルケが恭也とギーシュに尋ねた。

「僕が恭也から聞いたのは出発する直前さ。まさか、とは思ったけど友人の話だ。ヴェルダンデを見張りにつけておいて簡単な作戦も立てておいたのだよ」

「ふーん、ってことはキョウヤが気づいたのよね?一体どうして正体が判ったの?」

「そ、そうよ、それにどうして正体に気が付いていたのに私達に話さなかったの!」

ルイズもキュルケの話に便乗し、またタバサも本を読むのを止めて恭也の方を見ていた。

「正体についてだが、最初に戦った時に近い気配を彼女が学園長室に入ってきた時に感じてな。もしや、という思いがあった。だが最初の戦いではゴーレムとの戦いに集中していてはっきりと確証も持てなかった上、学園長室ではなんの根拠も無かったのでな。
例え俺が彼女について何か言ったとしてもその場で立証することは出来なかっただろうし、恐らくそうなれば破壊の杖を取り戻すことも出来なかっただろう。
念のためにギーシュに頼んだがそのお陰でこうして捕らえることが出来た訳だ。あのままゴーレムと戦っていても決着を着けられなかっただろうし、……どうしたルイズ?」

恭也はそこまで言ってルイズがこちらを睨んでいることに気が付いた。

「ど、どうしてギーシュにはそのことを話しながらご主人様にはそのことを話さないのかしら?」

「それは……」

「ま、そうよね。ゼロのルイズじゃ役にたたないかもしれないけど、」

ゼロの、の部分でルイズがキュルケを睨みつけるがキュルケは一瞬ルイズのほうを見て鼻でフフンっと笑って言葉を続けた。

「私やタバサには話しておくべきだったんじゃないかしら?ねぇ、タバサ?」

しかし同意を求めたタバサはそれには軽く横に首を振り「……戦略」と呟き否定した。

「どういうことよ」

「正直に言わせて貰えばタバサさんはともかくルイズとキュルケさんは、」

「あ、キュルケで良いわ。勿論タバサも良いわよね?」

キュルケの言葉にタバサはこくりと頷く。

「二人に話すとフーケにばれるのでは無いかと考えてな」

「な、なんでよ!」

「それだ、ルイズ。君は嘘をつくことが出来ないし感情が面に出やすい。気づかれる恐れがある以上これは譲れなかった」

「う、そ、そんなこと「じゃあ私は?」

何か反論しようとしたルイズを無視してキュルケが恭也に尋ねてきた。

「数回しか話したことが無いというのにこんなことを言うには失礼だとは思うが君は好奇心が強い。
今日馬車の中でやっていたように彼女に話しかけてかまをかけるようなことをされては困る。だから君にも話すのは遠慮させてもらった」

「はぁ、なるほどね。じゃあタバサは……聞くまでもないか」

「ああ、彼女には話してもばれることは無いと思ったが俺は彼女の力を知らないし彼女も俺の力を知らない。作戦を立てる上で時間をかけてお互いの力を知ってからなら良かったがあの時は時間が無かったしな」

キュルケは納得した、とばかりに頷きタバサは途中から完全に本に集中していた。ルイズは「う〜」と唸っていたが反論の手立てが浮かばないのだろう。

「そういえばシルフィードが居なかったらどうする……って、同じことか」

「そういうことさ。奇襲をしかけられた場合ゴーレムの相手を恭也に任せてばらばらになった皆を僕が呼び集めて作戦を実行する。フーケが単独行動をとって襲い掛かってきた時の作戦はそれだけしか立てていない。後は状況判断で動くつもりだったし」

「随分な作戦ねぇ」

「個人で動く場合完璧に決められた作戦よりも余程応用が利く」

「まぁあなた達だったから出来た、と思えなくも無いけど、ほら、諦めなさいルイズ」

未だに可愛らしく頬を膨らませて唸っていたがいい加減諦めが付いたのか大きく溜息を吐いた、

「はぁ……まぁ事件は解決してフーケも捕らえることが出来たんだし良しとすべきよね」

「そういうことだ」

そんな話をしている内にシルフィードは学院に到着したのだった。






学院長室でオスマン氏は戻った5人の報告を聞いていた。

「なるほど、まさかミス・ロングビルがフーケじゃったとは……」

「いったい彼女を何処で採用なされたのですか?」

コルベールの質問に居酒屋でつい美人だったから、とかお尻を触っても怒らなかったから、とかニコニコ愛想良く学院長先生は男前で痺れると言われたから等と答え続けやっと生徒達が白い目で見ていることに気が付くと「オホン!」と咳払いをして真面目な顔を取り繕った。

「さてと、君達はよくぞフーケを捕まえ、破壊の杖を取り戻してくれた」

誇らしげに4人が礼をし恭也もその後ろで軽く頭を下げた。

「フーケは城の衛士に引き渡したし、破壊の杖は元通り宝物庫に戻った。一件落着じゃ。君達3人にはシュヴァリエの爵位申請を宮廷に出しておいた。ミス・タバサはシュヴァリエの爵位を持っているので精霊勲章の授与を申請しておいた」

4人はぱっと顔をほころばした。

キュルケが驚いた顔で「ほんとうですか?」と尋ねるとオスマンは頷き、

「君達はそれだけの事をしてくれたのだ」

と言った。
ルイズは恭也の方を一度見てオスマン氏に何か無いのかと尋ねた。

「すまないが、彼は貴族ではない」

「自分は特に何も望んでいませんので」

恭也は特に気にした風も無く淡々と答えた。
オスマン氏はぽんぽんと手を打った。

「さてと、今日は「フリッグの舞踏会」じゃ。破壊の杖も戻ってきたことだし予定通りとり行う」

その言葉にキュルケの顔がぱっと輝き、

「そうですわ、フーケの騒ぎですっかり忘れていました」

「今日の主役は君達だ。大いに楽しんでくれたまえ」

4人は礼をして部屋を出て行こうとするが恭也だけその場に残っていた。

「すまないが先に戻っていてくれ。着替える必要もあるのだろう?」

ルイズは少し顔を曇らせるも頷いて皆と一緒に部屋を出て行った。

「ふむ、わしに何か聞きたいことがあるようじゃの」

恭也が頷くとオスマン氏はコルベールに退室を促し、恭也に話すように言った。

「あの破壊の杖、いったい何処で手に入れたのですか?」

「シュヴァリエの爵位申請を君には出来ない以上君にも出来る限り力になってやりたいが、それは何故かな?あれを使ったという報告は受けていないがそれでも君はあれと同じ物が欲しいとでも?」

恭也はオスマン氏の目を黙ってみていたが自分の方から切り出すしか無いと悟り話を始めた。

「あの武器はここに最初からあった物ではない、恐らく自分が元居た世界の物だと思います」

「元居た世界、とな。それはどういう?」

「……自分は元々この世界の住人ではありません。恐らく別の世界からルイズによって召喚されたんだと思います」

「ふむ……それは本当のことなのじゃね?」

恭也は一度頷きオスマン氏の視線を真っ直ぐ受け止めた。

「ふむ、君の話を信じよう。君の言うとおりあれはわしの命の恩人が持っていたものじゃった。」

「恩人?その方は今何処に?」

「死んでしまった、もう30年も前の話じゃ」

「30年前……」

「うむ、かつてわしが森の散策をしているところをわいバーンに襲われてな。その彼が助けてくれたのじゃ。彼は破壊の杖を2本持っておりその内の一本で助けてくれたらしい。しかし彼は怪我をしていたらしくそのまま倒れてしまった。結局看病の甲斐も無く……」

「亡くなられたのですね」

「そういうことじゃ。結局わしは彼が使って助けてくれた方の破壊の杖を彼の墓に、もう一本を「破壊の杖」として宝物庫にしまった。恩人の形見としての。
 彼は看病を受けている間元の世界に帰りたいとうわ言の様に言っていたがそういうことじゃったのじゃろう」

「その人も俺のように召喚されて来たんでしょうか?」

「恐らく、としか言えんがな。結局あの時は誰がどんな方法であの場所に来させたのかわからんかったしのう」

「……そうですか」

「うむ……ああ、それでお主のそのルーンじゃがな」

「これについて何かご存知なのですか?」

「ん……」

オスマンは少し逡巡した様子を見せた後話し始めた。

「これはガンダールヴの印、伝説の使い魔の印じゃ」

「伝説の使い魔の印?」

「そうじゃ。その伝説の使い魔はありとあらゆる武器を使いこなせたそうじゃ。お主は元々剣を扱えたようじゃが契約をしてから他の武器も触ってみたかね?」

「ええ、今の剣を買うときに使い慣れない武器を左手で握ればすぐにその武器の扱い方が理解できました」

「ふむ、その力こそ恐らくそのルーンによる力なのじゃろう」

「その伝説の使い魔ガン……「ガンダールヴ」それも人間だったのですか?」

「いや、何せ古い話じゃ。ガンダールブに関して始祖ブリミルの使い魔の一人じゃったこと。そしてさっき言ったとおりあらゆる武器を使いこなせたという程度にしか記録も残っておらん」

「確か数千年前のメイジでしたか」

「うむ、唯一4系統以外の系統虚無の系統を操っていたメイジとされておる」

「……その虚無に関する本はこの学園にも存在するのですか?」

「ふむ?またどうしてじゃ?」

「いえ、虚無に関することは殆ど知られていないと聞いていたのですがあなたはこのルーンに関して知っていました。一応自分のことですから可能なら自分でも調べたいと思いまして」

「なるほどの。確かに君の言うとおり虚無に関することは殆ど知られてはおらん。この学園でも図書館に数冊ある程度じゃろう」

「……そうですか」

「しかも虚無に関する本は持ち出し禁止の本ばかりじゃ。しかし、閲覧はミス・ヴァリエールと共になら可能じゃ。その手の本に関してはコルベール君が詳しい。本当に見たいなら彼に頼めば良いじゃろう」

「判りました。ありがとうございました」

「ふむ、君の世界のこともそのルーンのことも大した情報を提供できずにすまんかったの」

「いえ、今の状況が多少わかっただけでも十分です」

「そうか……わしは君の味方じゃ。君がどうやって帰ってきたのかわしのほうでも調べてみよう」

「助かります」

「何、君は恩人の杖取り戻してくれた。そのことに比べれば安いものじゃ。本当にありがとう」

頭を下げる学院長に最後にもう一度礼をして恭也は学院長室を後にした。

ゴーレムと戦う恭也を見てルイズは舌打ちした。
なんとか自分に手伝えることは無いかと考えたルイズはタバサの持つ破壊の杖に気が付いた。

「タバサ!それを!」

タバサは頷き、破壊の杖をルイズに渡そうとするが、ギーシュが止めに入った。

「待て、もう少しだけ待ってくれ!」

「なんで!?邪魔しないでよ!恭也を助けなきゃ!」

「フーケの居場所は判っているんだ!」

「ちょっと、だったら今攻撃すれば良いじゃない!」

「土の魔法で周りを固めていてあれじゃ恐らく僕らの魔法じゃ破れない。それにあのサイズは無理でも他にゴーレムが作れないとは限らない。降りて近づくのは危険だ」

「そんな、じゃあどうすれば良いのよ!」

「さっき恭也が上を向いた時に場所を知らせた。今恭也はそこから離れるようにゴーレムを誘導している。ゴーレムが離れて恭也が見えない位置まで行けばフーケも動く筈だ。動いてくれれば強固な防御魔法もすぐには張れない。そこを一気に奇襲する」

「あれだけすごいのに、恭也はフーケの所に一気に行けないの?」

「あの魔法の壁の効果が判らない。物理的な攻撃に対するトラップがあれば恭也でもやられてしまうかもしれない」

ギーシュの説明に対して3人は考えを巡らせる。さっきまで取り乱していたルイズだが今はやけに冷静だ。

「それでいきましょう……」

ルイズの呟きにキュルケもタバサも頷く。

「一番安全策かもね。破壊の杖はどう使えば良いのか私にはさっぱりわからないし。誰か判る?」

キュルケのその言葉に全員首を横に振る。

「彼なら、きっと大丈夫」

タバサは昨日の事件で恭也がルイズの側に急に現れたことを思い出し、今の戦いを見る限りでも大丈夫だと確信していた。

「そうね、恭也ならあんなゴーレムなんかにやられない、やられないんだから……」

「よし、それじゃあフーケが動けば僕が合図する。方向はあの辺りだが飛び方はさっきまで通りゴーレムの周りを旋廻して飛んでくれ」

ギーシュの言葉に頷くと3人はフーケの居る方向を見ないためにもゴーレムと恭也の戦いを見ることに集中する。
ギーシュは目を瞑り使い魔の視界の共有に集中した。



*フーケ視点*

フーケはゴーレムと戦っている剣士を倒すために意識を集中させていた。
だが、いくら集中して攻撃しいきなり拳を鋼鉄に変えるという小細工をしても平気で対応してくる。

(ああ、もう、すばしっこい奴め!)

フーケはその戦いが見える場所に陣取り守りを固めていた。
その守りには土の魔法だけでなく今まで集めたマジックアイテムも使用しており、万が一剣士が走ってゴーレムから逃げ出しこちらに向かってきても大丈夫なように万全の体制を築いている。
空中を旋廻する風竜は今もゴーレムの上を回り警戒しているようだ。
だが降りてきたところで何も出来ないだろう。
最初にゴーレムに向かって攻撃した赤い髪と青い髪のメイジ二人の魔法もかなりの威力があったがゴーレムを倒すほどの威力ではない。
ピンクの髪のメイジは恐らく碌に魔法も使えないようだし金髪のメイジは祈りでも捧げているのかずっと目を閉じている。恐らく大した脅威にもならないだろう。
先に攻撃はされるだろうがあの4人はあの剣士とは違う。風竜にでも乗って逃げなければ確実にゴーレムで倒せる筈だ。
しかし……

(あの男、なんて体力してるんだ。普通あれだけゴーレムと戦えば体力も尽きるだろうに。全く、魔力増強のマジックアイテムが無かったら倒れていたのは間違いなく私の方だったね)

悔しいことだがあの剣士は強い、恐らくあのメンバーの中で一番強いのはあの男であろう。

(だが、いくら強くてもあの男は剣士だ。こちらを倒す手は無い。もしかしたら破壊の杖の使い方が判るんじゃないかと想ったけど、使えないのかそうでないのか、どちらにしても使う気も無いようだ。後はもし此方に対して一気に決めようなんてことを考えた時があの男の最後だね)

フーケは本当に準備万端だった。
守りを固めた陣地には水も食料もあり普段使うことなど無いマジックアイテムによって丸一日ゴーレムを使っていても倒れることは無いという完璧とも言える準備だった。
最終的に持久戦ならば自分が勝つと確信していた。
そして今のようにちまちまダメージを与えるのではなく一気に仕掛けに来るなら恐らく恭也を倒せるであろう方法は既に考え付いていた。
後は上を警戒しつつ待つだけなのだがそれでも苛立ちは募ってくる。
しかも大分元の位置から離れて来ていて剣士の位置が見えなくなってきていた。
そのまま同じような状況が続き、丁度ゴーレムの死角に入り、しかも薙倒された木によって全く剣士の位置が見えなくなった時、剣士は声を上げた。

「来い、これで決まりだ!」

剣士の声が聞こえるが姿は見えない。だが恐らくあの男が勝負を仕掛けに来たことは確かだ。
フーケはその場所でまず上を見上げる。風竜は先ほどまでと同じようにゴーレムの側を回り皆剣士の方を見ている。

「位置が見えないんじゃアレも使えないね……」

もう一度空の風竜を見る。

(さっと行って戻るしか無いか)

その場所を動けば完全な防御は取れなくなる。しかし万一完全にあのゴーレムが破壊されればこの辺りの土でゴーレムを作らなければならず、結局準備した土魔法のワナは消えてしまう。
仕方が無い、っと呟きフーケは恭也の見える位置に移動を始めた。





「今だ!」

という声が上からする。すぐさまフーケは上を向き舌打ちした。
風竜がフーケに向かって飛んできていたのだ。メイジたちはどうやら既に詠唱も始めているらしい。

「小娘共が!舐めるんじゃないよ!」

杖をそちらにむけて魔法を唱える。地面から一気に土の壁が上がり氷の槍と炎の塊を防ぐ。
その壁の上から人サイズのゴーレムが7体フーケに向かってきた。

「だから舐めんじゃ……なっ」

いきなりフーケの足場が崩れて後ろに倒れてしまう。

「良くやった!ヴェルダンデ!ワルキューレたちよ!フーケを取り押さえて杖を奪え!」

ギーシュの命令通り7体のゴーレムがフーケを取り押さえ杖を遠くへ飛ばした。

「ルイズ!とどめだ!」

「ええ!……ファイヤーボール!」

ボン!っとフーケの居る場所で爆発音が響きフーケは地面に倒れ付していた。
そのすぐ横にシルフィードが降り立ち4人も地面に降りる。

「……相変らずゼロのままなのねぇ」

「た、倒したんだから良いでしょう!」

「ま、あたしは別になんでも良いけどね。ギーシュ、一応縛っておいた方が良いんじゃないの?」

「ん、そうだな。っと、主役のご帰還だぞ」

ギーシュの指差した方向から恭也がこちらに向かって歩いてきていた。

二人もそれに気づき恭也に向かって笑顔で手を振る。

タバサは何処から持ち出したのか座り込んで本を読み始めていた。

なんとか、といった感じであったが彼女達はフーケを捕らえることに成功したのだった。



あとがき
戦闘?戦略?なんですかそれ?

職員室を出た6人はミス・ロングビルを案内役に早速出発することにした。
彼女が出発の準備を整えている間に各自持っていく物は無いか確かめ、恭也はその間にギーシュと少し話し、皆と共に出発した。

ミス・ロングビルが御者を買って出たためそのまま彼女が操る馬車で出発することとなった。キュルケが、黙々と手綱を握る彼女に話しかけた。

「ミス・ロングビル、手綱なんて付き人にやらせればいいじゃないですか」

「いいのです、わたくしは貴族の名をなくした者ですから」

にっこりと笑って答えた彼女にキュルケはきょとんとした。

「でも、あなたはオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」

キュルケの質問にもロングビルは冷静に答え、その後キュルケは貴族の名をなくした理由を尋ねようとし、そのことを叱ったルイズと二人で言い争いになっていた。

「全く彼女たちは何時も元気だな」

「ああ、確かに。……ちゃんとついてきているのか?」

「……大丈夫だ」

それだけ会話すると二人はまた口喧嘩している彼女らに目を向けた。
その時、先ほどまで本を読んでいたタバサが恭也たちのほうを見ていることに気づいた。

「どうかしたのか?」

タバサはその質問には首を軽く横に振るだけで特に何も言わずまた本を読むために下を向いた。
その後もあーだこうだと口喧嘩をするルイズとキュルケを眺めつつようやく目的の場所に到着した。

「ここから少し歩いたところに廃屋があります。情報ではフーケはそこに出入りしていたとか」

「じゃあここからは歩きね」

ミス・ロングビルの言うとおり馬車を降りた場所から少し歩いたところに開けた場所がありその中心に廃屋があった。

6人は身を茂みに身を隠しながら廃屋を確認する。

「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるということです」

人の住んでいる気配は全くしないが、とりあえずその情報を信じようということになり奇襲で攻める事を決めた。

タバサの立てた作戦は偵察兼囮が小屋の様子を確認。中に居れば挑発して外に出し、そこを魔法で一斉攻撃して倒すというものだ。
小屋の中の土の量ではゴーレムは作り出せないだろうということがポイントである。

「……ふむ。では偵察兼囮役は俺がやろう」

恭也のその言葉にタバサはコクッと頷き、皆もそれに同意した。

茂みからサッと出た恭也はすぐさま小屋の中を確認。しかし中には誰も居ないことが判明。
皆を呼び寄せるとタバサが小屋に罠探知の魔法をかけ、
「ワナはないみたい」と呟くとドアを開けて中に入っていく。
恭也とキュルケがそれに続き、ギーシュ、ルイズが見張りに、ロングビルは周辺の見回りに向かった。


小屋に入った恭也たちは、フーケが残した手がかりが無いかどうか探した。
するとタバサがなんともあっけなく破壊の杖を見つけ出した。

「破壊の杖」

タバサは無造作にそれを持ち上げ皆に見せた。
キュルケは「あっけないわね〜」などと呆れていたが恭也は珍しく驚いた顔で、

「これが本当に破壊の“杖”なのか?」
とたずねた。

「そうよ、私宝物庫を見学した時に見たことあるもの」

恭也がじっとそれを見ているといきなりギーシュが扉を開けて入ってきた。

「恭也、やはり彼女は「きゃあああああああああああああ!」」

ギーシュの台詞を途中で切るルイズの悲鳴が聞こえると3人はすぐに小屋の外に出た。
そこには昨日恭也たちが戦ったゴーレムが既に現れていた。
タバサとキュルケはすぐさま魔法を唱えて攻撃するがゴーレムはビクともしない。
逆にゴーレムは拳を振り上げて攻撃しようとしてきた。
キュルケとタバサは「こんなの無理よ〜」「退却」と言うと後方へ下がった。

「わ、私だって!」

ルイズは杖を構えると魔法の詠唱を始めようとする、が、恭也に思いっきり後ろに引っ張られてなんとかゴーレムの拳をかわす。

「ちょ、ちょっと待って!私だって!」

「ギーシュ、ルイズを連れて下がってくれ」

「判った、無茶するなよ!」

「ああ」

「え、え?ちょっと、何するのよあんた!」

「ほら、良いからいくぞ、ルイズ」

ギーシュがルイズを連れて下がった場所には何時の間に連れてきていたのか、タバサとキュルケがシルフィードに乗って待機していた。
二人を乗せると一瞬タバサは恭也の方を見るが、大丈夫だと判断したのかそのままシルフィードを飛翔させる。


恭也は後ろでルイズ達が避難できたことを確認するとゴーレムの攻撃をかわしつつ思考を深める。

昨日の戦いでも判っていたことだが一対一ならまず負ける心配は無い。
最も負ける心配が無いだけで単純にそのまま戦っていても勝ち目は無い。
勿論、勝つ方法あるにはあるが危険すぎるため使いどころの判断をしなければならない。
一応ゴーレムには核となる部分があり、メイジが魔力を送り続けるという条件は無論あるがその部分を破壊しなければゴーレムは完全には止まらない。
初めてギーシュと戦った時のゴーレムは胴の部分を切って半分にしたため上半身が残ることになったのはそのためらしい。
腕や足を潰してもなんともならないのはそのためであり核は恐らくゴーレムの体の中心にあると思う、というのがギーシュの意見だ。
結局あのサイズになると空からの攻撃も考えて中心に核を作るのが一番安全らしい。
ならばこちらがゴーレムに勝つ方法は最大の威力でゴーレムの核の破壊しかない。
それが出来るとしたら雷徹、それも一撃ではなく薙旋の4連撃に徹を加えた雷徹だ。
こんなもの恭也自身使ったことが無いし、普通なら使うことなど出来ない。
また使えたとしても速度が落ちるため技としては不完全だ。
その上今回の場合空中でそれをやれというのだから馬鹿げている。
馬鹿げている、っと元の場所に居た恭也なら思っただろう。しかし今は違う。
本来よく判らない力、というものを他の人間が使う時、恭也は別にそのことを差別的な視線で見たことは一度も無い。だが、恭也自身が使うには違う。
今まで、一生の殆ど全てを費やしてきた剣技以外に力を欲したことなど一度も無い。
ひたすら打ち込んできたことだからこそ信頼できる力なのだ。なので今、このルーンによって恭也は今までとは圧倒的に異なる身体能力を得たことを喜んだことなど一度も無いのだが……
(更なる高みか……)
膝の故障はほぼ完治したとはいえそれでも多少の影響は残っている。
神速を使った時痛みが沸いたのが良い証拠だ。
結局、完成された剣士になることは諦めていたのだ。
美由希と共に警防に入った後も自身の鍛錬以上に美沙斗と共に行う美由希の鍛錬に力を入れていた。
しかしそれでも何処かで自身が完成された御神の剣士になることを目指している自分が居たのだろう。
今このゴーレムとの戦いを終えれば次のステップに上れる。
こうしてこの世界でこれほどの力を持つものと戦えることに喜びすら感じずにはいられない。
こうやって戦っていけばいつかあの光を……
そこまでの思考が辿り着いた時、ゴーレムが何度も振り下ろされた拳を今度はかなりの力をこめて振り下ろしてきた。
ゴーレムの拳が唸りを上げて飛んでくる。
恭也はそれを受け止めようとして、すぐに止めた。拳が途中で鋼鉄に変わったのだ。
(今はそんなことを考えている場合ではないな)
その一撃で埋没していた思考の渦から立ち直り恭也は一瞬だけ上空を見るがすぐさま視線をゴーレムに向けて意識も集中する。
流石にいきなり鋼鉄に変わる足を切り裂くことは出来ずヒット&アウェイを繰り返し少しずつ削る。

「いくぞ、デルフリンガー!」

「おうよ!」

「御神流奥義、雷徹!」

前にゴーレムの手を吹き飛ばした雷徹だが流石に一撃で向かってくる鋼鉄を砕くことは出来ない。故に何度も切り込みを入れてほんの少しのヒビの入ったところを一気に砕く。
何度も何度も繰り返していると、ゴーレムの動きに違和感が現れ始めた。
もう一度同じように雷徹により足を砕き一気に距離を取り剣を鞘にしまう。

(……やはり、試してみたいのか)

「来い、これで決まりだ!」

暫く動かなかったゴーレムが動き出す。

恭也は近づいてくるゴーレムを見据え構える。

そうしてゴーレムが恭也に攻撃するために拳を振り上げた時……





あっけなく勝負はついた。

振り上げた腕の先からボロボロと土が崩れ始めただの土山になったのだ。

(あちらが先だったか……)

ほんの少し不満を感じたが結果的には勝ったのだと思いなおし皆のいる場所へ向かう。
土山の横を抜け、折れた木々を避けて廃屋があった場所に戻る。
そこには恭也に向かって笑いながら手を振るルイズとキュルケ、いつも通り本を読み続けているタバサ、軽く手を上げて成功したことを伝えるギーシュ、そして既に捕らえられたミス・ロングビル、いやフーケの姿があった。
4人のその姿を見た時、恭也は軽く溜息をつき、そして笑った。

(そうだ、思いなおす、などという必要は無いじゃないか……。今を、笑顔を守れたのだ。それが自分の目指す御神の剣士の姿だ)






あとがき
またもや久々になりました^^;
まぁTOP通りですので勘弁してください……
しかしもう一度とらハ3やり直さないと恭也が判らなくなってきた……
せめて人のSS読み直すかなぁ><
後ダラダラ続くところを作ってしまったなぁっと反省orz

翌朝、集まった職員たちは剣呑な雰囲気の中でフーケを罵り、また責任者の追求をしようと罪を押し付けていた。
しかしそれらのことは流石は有名な魔法学院の学院長たるオールド・オスマンにより諌められた。

「それで、犯行現場を見ておったのは学生と聞いたのじゃが?」

無駄な罵り、責任追及を終えさせたオスマンは今必要であろう情報を集めるために昨日の現場にいた者たちを集めさせていた。

「この二人と使い魔の彼です」

コルベールは進み出て3人を指差した。

「ふむ……、君たちか」

オスマンは興味深そうに恭也を見た後改めて口を開いた。

「では、詳しく説明してもらえるかな?」

その言葉にルイズがありのまま状況を伝えた。

「あの、私ときょう、使い魔の二人で品評会から戻る途中大きなゴーレムが既に宝物庫の前に居て、壁を壊している最中だったみたいです。私たちに気が付いて攻撃を仕掛けてきたのですがその間に壁が壊されてしまい破壊の杖を盗まれてしまいました。彼女、タバサも交戦しましたが結果的には逃げられてしまいました。」

「ふむ、その後学院の外壁の外には土の山があっただけ、手がかりは無し、というわけか」

オスマンはふーむ、っと唸りながら部屋を見渡すとふと気が付いたようにコルベールに尋ねた。

「ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」

「それがその、朝から姿が見えませんで」

「この非常時に、何処に行ったのじゃ」

何処にいったんだ?どこかで見たか?っと教師達が話していると部屋の扉をそっと開け、当人が現れた。

「ミス・ロングビル!何処へ行っていたのですか!大変な事件が…」

「申し訳ありません、朝から、急いで調査をしておりましたので」

「調査?」

「はい、事件のことは既に聞き及んでおります。ですので、すぐさま周辺の調査に当たっておりました」

「仕事が早いの、ミス・ロングビル」

「それで、結果は?」

「フーケの居所がわかりました」

「なんですと!」

「誰に聞いたんじゃ?」

「はい、近所の農民に聞き込んだところ、近くの森の奥の廃屋に出入りする怪しい人影を見たという情報を入手いたしまして」

「流石だの、ミス・ロングビル。それで、どんな姿をしていたかは判ったのかな?」

「はい、これは得られた証言から私が描いたものですが」

「うむ、ミス・ヴァリエール、ミス・タバサ、どうかな?」

広げられた紙に描いてある絵を見てルイズは本人であることを確信した。

「これはフーケです、間違いありません」

コクっと隣でタバサも頷く。

「すぐに王室に報告しましょう!王室衛士隊に頼んで兵を差し向けてもらわなくては」

「そんなぐずぐずしておってはフーケに逃げられてしまうわ!しかもこれは魔法学院の問題じゃ!当然我らで解決する!」

オスマンは一度咳払いをすると一同を見渡し、

「では、捜索隊を編成する。我と思うものは杖を掲げよ」

誰も杖を上げない。困ったように、顔を見合わせるだけであった。

「おらんのか?おや?どうした!フーケを捕まえて、名を上げようと思う貴族はおらんのか!」

ルイズは俯いていたが、すっと顔の前に杖を掲げた。

「ミスヴァリエール!何をしているのです!あなたは生徒ではありませんか!ここは教師に任せて……」

「誰も掲げていないじゃないですか」

そう言ってルイズはシュヴルーズの台詞を遮ぎった。

恭也はその姿にふうっと溜息を漏らした。

(まぁ、そうするだろうとは思っていたが)

その反応に気づいたルイズはキッと睨んでくる。

「何よ、文句でもあるの?」

「……いや、君ならそうするだろうと思っていた。勿論俺も付いていくぞ?」

(……気になったこともあるしな)

「ふ、ふん、当たり前じゃない。あんたは私の使い魔なんだからね!」

その会話が終わるとすぐにバーンっと扉を開け放つ音が響いた。

「だったら勿論私も行かせて貰いますわ」

「ま、僕も及ばずながら力を貸させてもらおうか」

「ツェルプストー!それにギーシュも。君たちは関係ないだろう!」

いきなり入ってきた二人にいち早く反応したコルベールが驚いた声を上げた。

「ふん、ヴァリエールには負けませんわ」

「あの有名なフーケを相手にするんだ。手数はあったほうがいいだろう?」

そんな二人の登場に未だ驚いている教師陣の前でタバサがそっと杖を上げた。

「タバサ、あんたはいいのよ?」

気づいたキュルケが声を掛けるが、

「心配」

その一言のみを返しまたその一言だけで全て納得したのかキュルケは感動したお面持ちでタバサを見つめた。

「ありがとう……。タバサ……」

生徒達の様子を見ていたオスマンは笑った。

「そうか、では頼むとしようか」

「お待ちください、私は反対です!生徒達を危険に晒すなど……」

「では、君が行くかね?ミセス・シュヴルーズ」

「その、それは……」

「彼女達は敵を見て、交戦までしておる。その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士でもある」

室内の全員がタバサを驚きの目で見つめた。それに対してタバサはぼーっとたっているだけだったが。

「本当なの、タバサ?」

キュルケの質問にコクっと頷いた。

「更に、ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、彼女自身の炎の魔法も、かなり強力と聞いているが?」

キュルケは得意げに、髪をかきあげた。

「そして……」

ルイズは自分の番だと胸を張るが、

「その、ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女で、その、うむ、なんだ、将来有望なメイジと聞いているが?それに……そうじゃ!その使い魔は昨日の品評会では平民ながらあのグラモン元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンと素晴らしい剣技を見せてくれた。二人とも、昨日は素晴らしかったぞ」

「ありがとうございます、オールド・オスマン」
「ありがとうございます」

恭也とギーシュは共にオスマンに頭を下げた。

「そうですぞ、彼はガンダむぐっ……ごほん、いえ、なんでもありません」

何か言いかけたコルベールであったがそれは途中で遮られた。オスマンが足を踏んづけたからであるがそのことは特に誰も何も言わなかった。

「さあ。この者たちに勝てるという者がいるなら、前に一歩出たまえ」

誰も居なかった。オスマンは5人に向き直り、

「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する!」

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