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食堂の上が大きなホールになっていて舞踏会はそこで行われていた。
会場ではギーシュは何時も一緒に居る金の髪の女の子と一緒に話していて、キュルケはいつも通りたくさんの男に囲まれて笑っている。
タバサはテーブルの上の料理と一生懸命格闘しているようで、シエスタは最初に恭也の元に料理やワインを持ってきた後はずっと忙しそうに働いている。
恭也はバルコニーからその風景をぼんやりと眺めていた。
「どうした相棒、考え事かい」
「……ああ」
「さっきの話か?ま、帰る情報がなかったんで気落ちする気持ちは判るがあんまり気にすんなよ」
「いや、確かにオスマン氏の話は残念だったがそのことじゃないんだ。皆を心配させているだろうことは心苦しいし、もしかしたら死んだと思われているだろうことを考えても確かに胸が痛む。
だがそれでも元々そういう仕事に就いていたんだ。家族も友人達もそのことは判ってくれていると思う」
(第一ルイズに召喚されていなければ恐らくあの爆発と落下で既に生きていなかっただろうしな……)
「ん?じゃあなんだってんだ?他に相棒が悩むようなことがあったか?」
「……デルフ、お前は最初に俺のことを「使い手」と呼んだな?それはさっきのオスマン氏の話に出てきたガンダールヴということか?」
「ん、んーどうなんだろうな」
「おい、こっちはそれなりに真剣に聞いているのだが?」
「あー悪い悪い、ふざけてる訳じゃなくってな、ホントにわからねーんだわ」
「わからない?」
「と、いうよりは忘れてるって言った方が正しいか?ガンダールヴってのも頭に引っかかる言葉なんだがどうしても思い出せなくてな」
「……そうか」
「わりーな。んで、それがどーかしたのか?」
「いや、まぁ良いさ。少し気になっただけだ」
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな〜〜〜り〜〜〜」
丁度話を終わらせるように聞こえてきた門番の声の方を向くとそこには美しく着飾ったルイズが舞踏会の会場に入ってきたところだった。
主役が全員揃ったことを確認した楽士たちが曲を奏で始め、そのルイズの美貌に驚いた男たちがダンスの申し込みをしようと群がっていた。
恭也は先ほどオスマンと話した虚無の本に関することを話さないといけないな、と思うがあれではこの舞踏会中に話すことは無理かと考えながらボーっと眺めていた。
ホールでは貴族達が優雅に踊り始めていた。しかしルイズは周りの男の誰からの誘いも断ると辺りを眺め、バルコニーに居る恭也に気づくとこちらにやってきた。
「少しは楽しんでる?」
あまり飲み食いもせずにただボーっとバルコニーから眺めている恭也に対してルイズは首を傾げながら尋ねた。
「酒はあまり得意では無くてな。ただ食事はそれなりに楽しませてもらっている。誰かさんの与えてくれた餌よりは余程美味いからな」
「う……そういえばあんた食事はどうしてるの?」
「一応食堂の手伝いをする代わりに賄い食を頂いている」
「食堂の手伝いってそんなの従者やメイドの、平民のやることじゃない」
「雑用を使い魔にやらせているルイズに言える事じゃないだろう」
「そ、それはそうだけど……そうだ、学院長と何を話したの?」
「……まあ色々とな。一応ルイズにもしておきたい話があったんだが……」
「話?」
「ああ、だが後で良い。折角の舞踏会だからな、ルイズは誰かと踊らないのか?」
「相手が居ないのよ。それにあんたはどうなのよ?」
「随分誘われてたようだが……オレは流石にあの中に入っていくのは場違いな気がしてな」
「そう、し、仕方が無いわね。だったら踊ってあげても、よくってよ」
目を逸らしちょっと照れたようにしながらルイズはすっと手を差し伸べた。
「いや、別に無理して踊ってもらわなくても……」
その恭也の反応にルイズは目を吊り上げて睨むがすぐに呆れたように溜息をつくと、
「今日だけだからね」
そう言ってドレスの裾を恭しく両手で持ち上げると、膝を曲げて恭也に一礼した。
「わたくしと一曲踊ってくださいませんこと、ジェントルマン」
そう言って顔を赤らめて、それでも真っ直ぐ見つめる瞳に引かれ恭也はルイズの手を取った。
二人は並んでホールへ向かった。
ダンスの間初めに交わした一言二言からずっと黙っていたルイズが口を開いた。
「ねぇ、帰りたい?」
「……ああ、そうだな。しかし帰り方は分からないし、どうすることも出来ないからな」
そうよね……、と呟きルイズは俯いた。
「ただ、俺はルイズに召喚されてなければその時点で死んでいたからな。だからその点は感謝している。ありがとう」
……それに、という後に続いた呟きはルイズには聞こえなかったらしいが恭也のお礼の言葉に顔を上げて驚いた顔をした後もう一度顔を赤らめながら俯いた。
そして思い切ったように口を開く。
「ありがとう」
その言葉に今度は恭也が驚かされた。
「その……、フーケのゴーレムに押しつぶされそうになった時に助けてくれたこと、まだお礼、言ってなかったから。それに、その後も恭也は一人でゴーレムと戦ってくれたし」
「そうか、だがフーケに止めを入れたのはルイズだったのだろう?別に俺一人の力でフーケを倒した訳じゃないしな。だから気にするな」
「それは、そうだけど、でも……」
「俺は君の使い魔だからな」
その言葉に顔を上げたルイズを見つめ、
「この世界に居る限り、俺は何があっても君の事を守る」
恭也はそう言ってルイズに笑いかけた。
その様子をバルコニーから眺めていたデルフリンガーこっそりと笑いながら呟いた。
「おでれーた、相棒、てーしたもんだ。主人のダンスの相手をつとめる使い魔なんて、初めて見たぜ!」
久々に更新
そして一巻がやっと終わった^^;
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