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梅雨が明けてはじめての日曜日、暑さの中をTシャツにジーンズという格好で横浜へ出かけた。 市営地下鉄の桜木町駅で降り、動く舗道で日本丸を見ながらクィーンズ・スクゥエア方面へ向かう。 折りしも開国博Y150開催中のみなとみらい地区は、久しぶりだったがずいぶん人出が多かった。 最初にめざしたのは、横浜美術館で行われている「フランス絵画の19世紀」展だった。 パンフレットによれば、この時代の美術界は、さまざまな流派とアカデミーとのせめぎ合いの歴史といえる。 展示はそのアカデミー絵画のほうが多かったが、新古典、ロマン主義から印象派や象徴主義までもあった。 たとえばダヴィッド、グロ、アングルといった、アカデミー(サロン)の王道を歩んだ画家たちがいる。 一方ドラクロワ、クールベ、マネ等、権威に対抗した画家も有名だが、その思いはあまり伝わってこなかった。 冒頭の写真はマネ(左)とアングル他(右)だが、こうして並べても一見際立った違いはないようにも見えた。 それはたぶん、ここに展示されている作品が、彼らの主張を訴える代表作ではないからなのだろうか。 だからというわけではないが、今回の展覧会で個人的にいちばん印象に残ったのは出口近くにあった2枚だ。 ギュスターヴ・モロー『岩の上の女神』と、オディロン・ルドン『眼をとじて』の2作が、静かに並んでいた。 上野などでもそうだったが、どうやら最近の自分はこのような幻想的な世界に強く心引かれる傾向があるようだ。 ■モロー 『岩の上の女神』 1890年頃 横浜美術館 ■ルドン 『眼をとじて』 制作年不詳 岐阜県美術館 美術館を出て歩き出すと、突然前庭の噴水が動き出し、いく筋もの細い水の柱が目の前で踊りだした。
爽やかなミストを顔に浴びながら眼を閉じると、始まったばかりの夏休みを喜ぶ子供たちの歓声が聞こえてくる。 |
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2009年2月1日(日)午前 曇り 気温3℃ ブダペスト最後の朝、いつもどおり早めに目覚めた。海外旅行では、朝の景色を楽しむのも大切なことだ。 ホテルの窓から夜が明けかけている道を見下ろす。まだ街灯が点いていて、地下鉄駅へ急ぐ人が見えた。 朝食を食べ終え、ホテルの売店でハンガリー・フォリントを使って土産物を買い、やがてバスで空港へ向かった。 係員の気まぐれで少々時間のかかったアエロフロート機も、ついにブダペストを離陸しモスクワへと飛びたつ。 モスクワ空港でのトランジットも、その先の機内ももう慣れたものだった。だんだん日本の日常が近付いてくる。 ■ブダペスト・フェリヘジ国際空港の出発便ボード ↓ 空港は市の南東約24kmのところにある。比較的綺麗な印象だったが、ボード等もずいぶんと簡素だった。 ■ほぼ満員のアエロフロート機が滑走路へと動き出す ↓ ハンガリーの、というより中欧の冬の空は今日もどんよりと曇っていた。旅の思い出が頭の中を駆け巡っている。 ■もうすぐモスクワのアナウンスがあった ↓ ブダペストからは約2時間半のフライトなので疲れもない。眼下にロシアの雪原が現われ、家や道が大きくなる。 ■モスクワ・シェレメーチェボ国際空港はいかにも厳寒の様相 ↓ 現地時間で16時頃だったが、外気温は何度くらいなのか? もちろん暖かな屋内で3時間以上のトランジット。 ■時間がたっぷりあったので、空港内を一巡りしてみた ↓ この空港は往路にも寄ったので大体の感じはすでにわかっていた。免税店も多いが物価は総じて高めなのだ。 ■いたるところにマトリョーシュカ人形がある ↓ そういえばプラハの旧市街にも、ブダペストの中央市場にもあったが、さすがに本場物はちょっとまた違う。 ■空港の待合室に流れている旅情 ↓ この空港は年季の入ったレトロな造りだけに、“ロシアより愛をこめて”などと呟いてもきわめて自然なのだ。 ■成田空港、2月2日(月)午前11時、無事到着 ↓
モスクワから9時間半のフライト。降り立った日本の空は快晴で、もうすでに汗ばむほどの“春”が始まっていた。 |
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東京・八重洲のブリヂストン美術館には、何度行っても、いつでも心休まる空気が流れている。 それはたぶん、何回も繰り返して観たくなる名品が、静かに自分を待っていてくれるからなのだろう。 7月になっていたが、「マティスの時代−フランスの野生と洗練」展の最終週に間に合うことができた。 この企画展は、次の4つの章で構成され、石橋財団所蔵の54作品を中心に展示されていた。 1.マティスとフォーヴィスムの出現: 1905年頃まで 2.フォーヴの仲間たち: それぞれの道 3.親密なあるいは曖昧な空間: ヴァリエーション、装飾、室内、窓、空間の広がり 4.色とかたちの純粋化: 拡張する画面、余白の問題、越境、即興 (チケット売場でいつもと違う素敵な小冊子をもらえたので、よくわかった) 今年生誕140周年になるマティスと、フォーヴィスム(野獣派)という言葉は今でもしっくりとこない。 それはボナールやデュフィ、ドランなどにも言えるのだが、また、モローが師であったことも面白いと思う。 そのモローのこの作品に今回初めて会えた。グワッシュ、水彩/紙であるため、照明が落とされている。 モローといえば思い浮かぶ、饒舌な油彩画の印象はほとんどなく、浮世絵のようにさえ見えてきた。 ■ギュスターヴ・モロー 『化粧』 1885−90年頃 その他印象に残ったのは、ブラマンク『運河船』、デュフィ『静物』、ブラック『梨と桃』等だが、以前もそうだった。 肝心のマティス作品は16点ほどあったが、やはり『青い胴着の女』(冒頭のパンフ写真)が最高になるのだろう。 おそらく自分の一番好きな『ルーマニアのブラウス』に似たイメージがあり、何度も書き直されているはずだ。 ブリヂストン美術館がすごいのは、そんな企画展をかすませてしまうほどの常設展が、いつだってあることだ。 今回もルノワールの少女に挨拶をし、モネのヴェネツィアの黄昏を眺め、ピカソのアルルカンの秘密を探った。 そして、またしてもカンディンスキーを発見して暫らくの間動けなくなった。隣りのクレーとの対比も素晴らしい。 ■ヴァシリー・カンディンスキー『二本の線』 [左はパウル・クレー『島』] (Lets Enjoy Tokyoよりの転載) 『二本の線』は1940年に描かれた晩年の作品で、静かに想像力を刺激してくる形象がやがて動き出すようだ。 カンディンスキーとクレー、二人が並んで立っているバウハウス時代の白黒写真を、ふと思い出していた。 最後にザオウーキーの現代アートと、紀元前エジプト時代の聖猫像を観てから、銀座方面へと向かった。
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2009年1月31日(土)夜 曇り 気温4℃ 今回のフリータイムの比較的多いツアーも、ブダペストのドナウ川ナイトクルーズでほぼ終わりとなった。 しかし観光船を下りてもまだ20時前だったので、川沿いをブラブラと歩き、くさり橋のほうへ向かった。 それからまた旧市街へともどり、まだ開いていた有名なカフェ“ジェルボー”で、ケーキとお茶を楽しんだ。 窓の外には“ドナウの真珠”ブダペストの冬の街が、静かにまどろみだしている・・・ さよならの夜だ。 ■くさり橋には両方の川岸に1対のライオン像がある ↓
この橋は、ドナウに架かる最初の堅固な橋として19世紀半ばに造られた。ライオンには舌がないことでも有名。 ■王宮方面へ向かって少しばかり歩いた ↓ 本来はセーチェニくさり橋と呼ばれている。それはライトアップ電球の繋がりがくさりのように見えるためだそうだ。 ■ヴァーツィ通りにあるカフェ“ジェルボー”の優雅な室内 ↓ 200年の伝統を誇るお菓子の老舗でもあり、あの皇女エリザベートがしばしば立ち寄ったことでも有名である。 ■ドボシュ・トルタとレモンティ−でほっこり ↓ ケーキは店中央のガラスケースの中から指さして注文する。つい最近青山通りに東京支店が出来たと聞いた。 ■テーブルのすぐ近くに食器等のギャラリーがあった ↓ トイレを借りるために店内を長く歩いた。ハンガリー貴族に愛された店だけあってすべてが重厚な美しさだった。 ■閉店時間が近付いていたので、地下鉄でホテルへ帰る ↓ 午後10時近くのヴィレシュマルティ駅。カフェのすぐ前の広場下から2号線の終点まで行けばもうホテル前だ。 ■陽気なグループがはしゃいでいる地下鉄車内 ↓ この地下鉄は旧ソ連製だそうでいかにもガッシリしている。その中で騒いでいるハンガリー美女たちに遭遇した。 思いのほか面白かったハンガリー・ブダペストの最後の夜に、地下鉄でドナウ川をくぐって行った。 |
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2009年1月31日(土)夜 曇り 気温4℃ 西洋美術館で思いのほか充実した時を過ごしたので、地下鉄で中心部に戻る頃には既に夕闇が迫っていた。 それでも灯りのともりだしたヴァーツィ通りには人影も多く、街角の男が吹くサックスがとてもいい感じに響く。 土産物屋を見て回る家族と別れて、迷いながらドナウ川の河畔に向かい、観光船の乗り場を探し続ける。 冬のこの時期には1日に1回だけ出発するナイトクルーズ船に乗って、有名な夜景を楽しみたかったのだ。 何とかチケットを購入し、冷たい風が吹いているドナウの川岸を歩くと、煌めく光景がもう眼の前にあった。 ■ようやく探し当てた観光船レゲンダの船着場 ↓
外国の夜道では方向感覚がまるで掴めない。川沿いの道路の下をくぐり抜け、やっとのことで辿り着いた。 ■乗り込んだ出発前の船内には、まだ煌々とした灯りが ↓ この船には1階と2階があり、全部で何人ぐらい乗れるのだろう? 8割方満席になってから動き出した。 ■エリザベート橋近くにある教会が青く美しい ↓ 船がドナウ川をすべり出すと早速シャンペン・サービスがあった。暗闇の中で芳醇な液体が喉を潤していく。 ■ドナウの薔薇の象徴、くさり橋が見えてきた ↓ ブダとペストの2つの街を繋ぐくさり橋はいつ見ても素晴らしいが、夜の姿もまた心を揺さぶる美しさだった。 ■くさり橋を船がくぐり抜ける時が、一つのハイライトである ↓ 写真ではガラスに反射光が写ったりして失敗したが、くさり橋越しに見える王宮の丸屋根は今でも覚えている。 ■王宮の丘の建物が浮かび上がり、川面に光が揺れている ↓ きのうの夕方、丘の上から見下ろしていた川に浮かぶ船を、今夜はその船に乗って反対の位置から見上げる。 ■2杯目の白ワインに酔った眼にはこんな感じにも見えた ↓ 意図的に狙って撮影したわけではなかったが、出来上がりを見たらこちらのほうが幻想的で面白かった。 ■感動のナイトクルーズ終えて川岸を散歩する ↓ ほろ酔い気分で歩く川沿いの道は心温まる道だった。通り過ぎるトラムが旅情を否応なくかきたててくれる。 |






