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オーストリア・ウィーンの世紀末美術の画家、エゴン・シーレの絵は、長い間あまり観たくなかった。
今までに何度か画集や映像などで眼にしてきたが、そのたびに心が異様な迫力に圧倒されてしまうのだ。
何と言えばいいのだろう、そこには人間の内部に隠されたイビツな何かが描き出されているからなのだろうか。

今回はじめて彼の本物を現地へ観に行く機会ができ、まずこの坂崎乙郎氏の本を図書館から借りてきた。
エゴン・シーレの誕生から成長、葛藤から死に至るまで、たった28年の濃密な歳月が、実によく理解できる。

1890年、ウィーン郊外のトゥルンで生まれた。ヴィンセント・ファン・ゴッホが奇妙な死を遂げた年だ。
1918年、若妻を追うようにスペイン風邪で死んだ。父親みたいだったグスタフ・クリムトが逝った年だ。
この不思議な巡り合わせのせいではないにしろ、ゴッホとクリムトとの関係性が何度も繰り返し書かれている。

ゴッホとは孤独さと内に向かう視線がよく似ている。『アルルの寝室』と同じような作品が残ってもいるのだ。
クリムトとはむしろ反発する面が多かった。自画像を描かないクリムトは自分自身には興味がなかったという。
確かに同じ“エロスの画家”と呼ばれながら、装飾的な美女と苦悩と欲望の女性とでは、まるで違う姿なのだ。

この本にはシーレという人間に対する鋭い分析が溢れているが、次のような文章が特に記憶に残った。

  シーレの分身とも見られる数多くの自画像と、彼の趣好と血液を十二分に注入したとしか考えられぬ数かず
  の肖像画を眺めていると、ナルシストが二つの自我をかかえていることは明白だ。エゴンとシーレである。
  それは、自己陶酔と自己憎悪であり、シーレの作品は両者のあいだを間断なく揺れ動いている。肉は切り
  裂かれ、肉は縫合される。正確には、シーレの意識がたえず和解を求め、敵対するのだ。
  それら二つの自我は肉体をとおして結ばれることがない。それらを結びつけるのはつねに精神であり、精神
  であるがゆえに対峙は緊迫をはらむ。シーレの作品の異常とも感じられる衝撃性はここから放射されている。

オーストリア美術館の『家族』や、レオポルト・ミュージアムの『自画像』の中に、それを探しに行こうと思う。

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恋愛プログラムの謎

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昨日偶然TVで視た「NHKスペシャル シリーズ女と男 最新科学が読み解く性」がとても興味深かった。
全部で3回あるようだが、第1回は『惹かれあう二人、すれ違う二人』 脳科学で探る“恋愛メカニズム”の話だ。
恋愛を科学的に調査・研究するなど非常に無粋なことであるのだけれど、自分は昔から時々読んできてもいた。

  ・恋愛状態に入った人間は、女も男も脳内の同じ特定部で快楽を司るドーパミンが大量に発生する。
  ・同時に、相手を批判的に捉える分野の活動が不活発になり、すべてが良く見えるようになってしまう。
  ・特異なのは、男が視覚に神経が集中し、女性の腰のクビレを見て子孫存続の最大化を考察選択すること。
  ・一方女は、記憶的な部分が活発に働き出し、その相手が子育てに役立つかどうかに関心がいくこと。

しかし、そんな恋愛システムを支えているドーパミンの大量分泌は、身体への負担が大きいため長期間続けることは出来ず、3年もすれば終わってしまう。また太古から人間の子育ては3年も過ぎれば一段落するので、男女の助け合いもとりあえず終了できる。これがいわゆる“愛情持続期間3年説”の根拠である。
実際に国連のデータでも、多くの国で離婚が結婚4年目にピークを迎えることがわかっているという。

この話は別に目新しい発見ではなかった。自分でも現在にいたるまで“実証経験的”に思い当たることだった。
この番組はさすがNHKらしくその先があった。では、どうしたら結婚生活を穏やかに続けていけるのかという。
そしてまた有史以来刷り込まれてきた男女の違いが説明されてくるのだが、それが少し新鮮に聞こえた。

  ・女は、育児や採集活動からコミュニケーション能力を発達させ、相手の感情を読み取ることがうまい。
  ・男は、狩猟や防衛行動から課題把握・問題解決能力を訓練され、時々冷静でいることができない。
  ・だから、女が悩みを相談するとき話を聞いてもらいたいだけなのに、男は解決策を示そうとしてしまう。

うーん確かにそんな気もする。長い人類史でプログラムされてきた、無意識の中にある男女の決定的な乖離。
それにしても、アメリカにはこれらの研究をベースにした“離婚しないためのセミナー”が盛況なのだそうだ。
「違いをちゃんと意識して、相手の気持ちを理解する努力が欠かせない」とは、いかにもNHK的な結論だった。
しかしそれは極めて難しそうなことに思える。何しろ何万年もかかって作りあげられたシステムなのだから。
第2回、第3回も、気をつけて見逃さないようにしよう。

うまくいかないのが恋

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正月に読んだ新聞の広告にちょっと気になる本があった。高樹のぶ子さんの『うまくいかないのが恋』
62歳の作者はじめての恋愛エッセイで、“究極の恋愛虎の巻”といううたい文句がまっすぐ眼に入ってきた。
若い女性向けの本らしいので、さすがに購入するのはためらわれたが、見出しだけでも面白そうだった。

序章 【恋は甘苦しい、人生至福の時】
これはまさしくそのとおりである。甘いばかりではなく、“甘苦しい”という表現がやはり最適だと思う。だからこそ“人生至福の時”なのだ。人は楽しいだけではすぐに飽きてしまう、ややこしい生き物である。苦しさ、もどかしさがあってはじめて、その恋が輝いてくる。そのプロセスすべてが、とてもいとおしいものになってくる。

第1章 【うまくいかないのが恋(両思いになる人はマイノリティ、恋愛癖をつける・・・)】
確かに、最初から両思いという恋愛は少ないのかもしれない。はじめはたいていどちらかが熱をあげている。あまり強烈なものは逆効果になる場合もあるが、その熱がもう片方に燃え移り、また反対に燃え移り、そのたびに少しづつ大きくなって広がっていく。この時使用される“じらし”のテクニックは、心理学的にも非常に有効なものだ。“恋愛癖”とは、それらの技術に磨きをかけるという意味でも、重要な必須項目なのだろう。

第2章 【結婚にいたる恋・いたらない恋(男も女も結婚は打算で考える、現実から逃げない女力をつける・・・)】
誰もが知るように、理想の恋愛のゴールが結婚ではないのは確かである。たぶんこの考えは経験的に立証されるだろう。恋愛には“終わり”があり“有効期限”がある。白馬の王子様も、4年もすれば色あせてくる。一方、結婚(一夫一婦制度)というのは、人間が安定した社会を維持していくための方便にすぎない。だからそこには、事業と同じように理念、コンセプト、実行計画が必要となる。“打算”は悪いことではない。現実はクールでシビアなものであり、逃げてはいけないのだ。ただし、あまり“女力”をつけすぎても、現実から浮いてしまうものなのだが。

第3章 【うまくいかない恋愛の耐え方・乗り越え方(男は焚き火のような“続ける恋”が苦手・・・)】
本文を読んでいないのでよくわからないが、焚き火のような“続ける恋”とは何だろう? 穏やかなぬくもりのある持続する愛情のことだろうか。しかしそれは既に恋ではなく、どちらかと言えば友情に近いのではないだろうか。結婚生活も長くなると、こんな形がひとつの理想であるかもしれない。一般的に男は焚き火が大好きだが、それはむしろ野生を呼び起こし、新しい獲物のことを夢想するための時間なのである。

第4章 【それでも恋愛せずにはいられない(二人だけの秘密ができたら恋の成功率は高まる・・・)】
“二人だけの秘密”も、昔からよく耳にする言葉だ。あるいは“障害が大きいほどその恋は強くなる”と。だから言葉は悪いが不倫関係が有史以来なくならないのは、人間の本能、行動原則に照らして充分に納得できるのである。強引に結論付けてしまえば、人間の恋愛活動は、結婚という社会制度の枠内に収まるほどの小さな情念ではないのではないだろうか。それは一人ひとりのDNAにこびりついている、もっと根源的な叫びみたいなものだ。

作者は別のところで「恋という言葉を“人生”に置き換えて、前向きに生きる努力をして欲しい」とも言っている。
あのすべてを手に入れたように見える光源氏でさえも、常に不満、不全感を抱えて生きていたのだと。
そして、その不全なるものに対して少しでも良くしていこうと戦い続けていくところに、人生の味があるのだと。
その話はとてもよく理解できる。元々“うまくいかないのが人生”なのは、いつだって思い知らされているのだから。

ルネサンス美術館

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去年の10月に発売され、いつか購入しようと思いながらなかなか実現できなかった本があった。
手に取るとズシリと重いので、会社の帰りや買い物のついでに持って帰る気にはなれなかったのだ。
小学館の「ルネサンス美術館」 自分へのお年玉だが、1万円札で25円のおつりがおかしかった。

今では漫才のギャグにもなっている“ルネサ〜ンス”だけれども、別の本によればそれはこうなる。
   ・ルネサンスとは、14〜16世紀にかけてイタリアから全ヨーロッパに広がった“再生”の文化運動
    であり、ギリシャ人とローマ人が謳歌した人間らしい文明を回復することであった
   ・人々は、長らくヨーロッパを野蛮と暗黒に閉じこめてきた中世の束縛から解放された
   ・そこで誕生した自由な精神は、近代文化の基盤となり、近代精神の故郷ともなっている
   ・ルネサンスは、特に建築、彫刻、絵画、文学、音楽など、芸術の分野で高まりをみせた
   ・最終的にルネサンスは、同時代的に進行していた大航海と宗教改革がもたらした直接、間接の
    インパクトによって、その終幕を宣言されたと言われる

ルネサンスと言えば皆が思い浮かべるダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロだが、それはほんの一部である。
最初期のゴシックからの転換期にいたチマブーエ、あるいはジョット(彼については以前に記事を書いた)
花の都フィレンツェでメディチ家の庇護のもと花開いたフラ・アンジェリコ、ボッティチェリ、フィリッポ・リッピ
この人のキリストの顔は今ひとつ好きになれないが、中部イタリアのピエロ・デッラ・フランチェスカ

そして15世紀、イタリアから広がった北方ルネサンス、自分が今いちばん興味がある世界である。
ランブール兄弟の『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』は、現在世界一素晴らしい書物だと言われている。
西洋絵画の基礎を築いたというヤン・ファン・エイクの見事さは、去年実際に目にしてきたばかりだ。
フランドル絵画の中でも特に際立っているボッスの摩訶不思議な世界からは、どうにも逃れられそうにない。

更にヴェネツィア絵画の色彩の饗宴、ティツィアーノのヴィーナスの妖艶な眼差しは、いまだに忘れられない。
ドイツではクラーナハもいいがやはりデューラーになるだろうか、何故かマドリッドのプラド美術館にあった。
それから何といってもピーテル・ブリューゲル(父)の新しい世界、そこでは農民が主役になっているのだ。
この本の最後は実に多様な発展で、フォンテーヌブロー派やエル・グレコ、アルチンボルドで終わっている。

以上ページをめくりながらとりとめもなく書いてきたが、この本の良さはやはり観てみないとわからないだろう。
たとえばミケランジェロの『ピエタ』や、ラファエロの『サン・シストの聖母』の美しさは言葉では表現できない。
だが一年のはじまりにあたって、このように心の底から静かに温まってくる本を開くことは、とても幸福なことだ。
裏カバーに、魚に乗って女性と空を飛んでいる男(ボッス『聖アントニウスの誘惑』の部分拡大図)がある。
できることなら、今年もそんなふうに、ゆったりと過ごしていければいいのだけれども・・・

ゴッホは殺されたのか

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この本が発売された今年2月頃、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホは自分の中でまだマイブームの一つだった。
というのも、1月に初めてアムステルダムの土を踏んだ夜に、そのままゴッホ美術館を訪れていたからである。
そして閉館間際に、『ひまわり』の一部分を拡大したオリジナル・ポスターと絵葉書を数枚買って帰った。
その絵葉書の1枚、彼にしては珍しく明るい感じの作品『花咲くアーモンドの枝』がどうも気になってきた。

この新書はゴッホの人間論であるとともに一種のミステリーでもあるから、ここで結末を書くのは遠慮しておこう。
しかし、読んでいくうちにはじめて知った興味深いエピソードがたくさんあったので、以下に列記してみる。

・ゴッホは1890年7月27日、時刻・現場不詳で腹部に傷を負って旅館に戻り、翌日深夜に死亡した。
・ゴッホが死んだ場所は明るい日差しの南仏ではなく、パリ近郊のオーベール=シュル=オワーズだった。
・ゴッホは若い頃から年上の女性が好きだった。特に子供を生んだ女性が大好きだった。
・弟のテオは画商勤めをしていたが、毎月何回も兄に送金していた。毎年200万円以上にあたるという。
・ゴッホの死の翌年に弟テオも死亡するが、兄弟の墓が同じ墓地に並ぶのは23年も経ってからである。
・弟テオの妻ヨーは、再婚後また夫と死別しゴッホ家に復籍した後、有名な『書簡集』を発行する。
・南仏アルルで一緒に生活したゴーギャンは、わがままで計算高い人間として捉えられている。

『花咲くアーモンドの枝』は、弟夫婦にヴィンセントと名づけられた長男が誕生した時に描かれた名作である。
今でも美術館の館長を務めるその子孫が、「ゴッホ家にとっていちばん大事な絵なのです」と言っていた。
青空を背景にした植物のうねるような表現は素晴らしいが、見ようによっては強烈な執着心さえ感じられる。

それにしても、自殺と言われている彼の銃創が、自分では絶対に撃てない角度だったのはなぜか?
あれほど肖像画を描くのが好きな彼が、近くにいた弟テオやその妻ヨーを描かなかったのはなぜなのか?
ゴッホの生きている間に売れた絵はたった1枚だったのに、現在では億単位で取引されている理由はなにか?
この本のサブタイトルには“伝説の情報操作”とある。彼は、まさしく伝説の画家となった。

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