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翌日―――
開かれた朝議にて、
居並ぶ官吏たちを前に、王は紅秀麗との婚姻を発表した。
「余、紫劉輝は紅秀麗を妻に迎えようと思う」
その言葉に官吏たちの視線は一斉に秀麗へと向けられた。
「いかがか、紅秀麗」
「陛下のお望みとあらば、謹んでお請けいたします」
劉輝と秀麗はお互いに見つめあい、声無く微笑む。
一瞬の静寂は瞬く間に破られる。
室内はざわめき、言祝ぎを述べる官吏や、やっと結婚に踏み切った王に感極まって泣き出すものまでいた。
「この結婚に際して、既に知っている者も多いだろうが、貴妃の政治介入を導入する」
「お待ちください!! ご結婚は私、誠にお喜び申し上げるところですが、貴妃の政治介入は、賛成いたしかねます。紅官吏であれば、確かにその任を見事全うされるだろうと確信はありますが、それ以降の治世をお考えください」
根回しをしたのは朝議での強い発言権を持つ高官のみ。
それ以外の官吏たちから反発が起きるのも、予想の範囲内だった。
ただ、違ったのは、彼らが既に秀麗を認めたということ。
彼は言った、それ以降の治世を考えよ、と。
つまり、それは貴妃となった秀麗が政治に参入することに異議はないということだ。
「それも考慮した。…手元の書類を見てもらおう。
今回の貴妃政治介入にあたっては、多くの制約を設けた。
一つは、政治に介入できる者は官吏から貴妃となった者のみとする。
一つは、その者を宰相、各尚書、次郎が認める場合とする。
それは家柄や個人の能力も考慮されるものとする。
また貴妃の朝議、会議への出席を認めるが、王権を二分することなく、その最終決定権は王に寄与するものとする。王が病、または何らかの事情で朝議、会議へ出席できない場合は貴妃にその権限を一時的に委譲し、裁可を下すものとする。
以上だが、どうであろうか…」
そう問われ、議席から二人の官吏が立ち上がった。
その姿を認め絳攸は冷や汗を流す。
(れ、れいしん様…)
立ち上がった黎深は、王の隣で冷や汗を掻いている養い児を一瞥し、王に口上する。
「少し、足りませんね」
「む、何が足らないのだろうか…」
「貴妃が政治介入できる場合は、王の貴妃が正妃一人のみという場合にかぎります」
他に貴妃がいた場合もまた、争いの火種と成りかねない。
過去に起きた王位争いの時のように。
ついで黄尚書が言を述べる。
「御子が出来なかった場合は、他の女人に子供を生ませるという手もあります。が、あくまで子供を陛下の子と認め、その母親の後宮入りは認めないものとします。と、まあ今後色々と参入していく中で増やしていかねばならない制約などもあるとは思いますが、この二つを加えるなら、私は紅官吏の後宮入り、加え、政治参入に関しましては異議ございません」
「そうか。…では紅尚書はどうだ?」
「……ありません」
劉輝は黎深をみて微笑んだ。
「では、皆はどうであろうか」
再びざわめき出した謁見の間で、一人また一人と官吏たちが賛同をもって立ち上がる。
その波は留まるところを知らず、ものの五分もかからずに全ての官吏が彼らを祝福した。
官吏たちの二人を見る目は、温かさに満ちている。
劉輝は今、長年待ち続けた甲斐があったと改めて実感するのであった。
「それでは、改めて、紫劉輝陛下と紅秀麗官吏のご結婚を心よりお祝い申し上げる」
黄尚書の言葉をきっかけに、次々と官吏が声を上げた。
「よし、そうと決まれば式の日取りを!!」
「お衣装の見立てに取り掛からねば!!」
「おやおや、鳳珠、我々も予算を打ち出さねばなりませんね」
と、にっこりと景侍郎がつぶやいた。
「彩雲国きってのお祝い事ですぞ!! 国を挙げて祝わねばなりますまい」
謁見の間にいつもと違った活気が満ちた。
居並ぶ精鋭たちの顔は喜びを湛え、秀麗は歓喜して涙ぐむ。
信頼を置く官吏たちに見守られて、二人は今日新たな一歩を踏み出した。
いつの間にか隣に来ていた劉輝は、秀麗の肩を抱き、
来るべき明日を見据え、誓った。
「余は、秀麗と共に彩雲国の平和な明日を作る!!」
桜咲き乱れる桜月、絢爛豪華な王宮に駆け巡った御慶は、やがて彩雲国に知れ渡る。
若くして賢君と名高き紫劉輝、
数々の偉業を成し遂げた女官吏紅秀麗は貴妃となりて、歴史の一頁を描く。
その治世は、後世に伝えられるほど素晴らしいものであった。
彩雲国に数々の伝説を作りし二人は、今もまた王宮のどこかで仲睦まじく寄り添っていることだろう――――――――――。
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最高デス!!
2008/1/14(月) 午後 4:05 [ nam*k*yok*20*3 ]
彩雲国が初期(御史台とかまだ出てないとき)の雰囲気のまま完結してたらこういう最後になったんだろうな…って悲しい気持ちになりました。笑
2018/12/31(月) 午前 9:04 [ rin**usuno*i ]