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「何だ」
部下の慌てように、名を呼ばれた楸瑛は一瞬で上官の顔に転じる。
甲冑姿の男は、楸瑛の傍までやってくると、鬼気迫った顔で言上した。
「あ、新たな被害者が…!!」
「何っ!?」
声を荒げたのは、隣に立つ絳攸のほうだ。
楸瑛は冷静にその言葉を受け止める。
「今度は誰だ」
「…それが、…吏部官吏、碧珀明さまです」
――――『碧珀明さまです』
(…な、んだって……?)
告げられた名に、楸瑛も絳攸も時を忘れ呆然とした。
左右霖軍は昨夜から未明に掛けて朝廷近辺の警護をあつくしていた。また、極秘で貴陽の警護に数十人を当たらせていたのも事実。それでも、誘拐犯は網の目をかいくぐるように易々と採七家に属する碧家の直系且つ吏部官吏・碧珀明を誘拐したというのか。警護に手落ちがあったのだろうかという思いが楸瑛の中に渦巻く。
「…状況は」
衝撃から即座に立ち直った楸瑛は、武官に事の次第を尋ねる。
「…現場に遭遇した家人によれば、犯行に加わった者は碧家の家人を装っていたと―――」
楸瑛は拳をぐっと力いっぱい握ると、衝撃から立ち直った友人を見やる。
「…絳攸」
「ああ…、俺は主上にこのことを知らせ、新たな対策を練ることにする」
「それには私も行くよ。それから、まだ官吏が出仕してくる時間には早い。鄭悠瞬様の邸へ早馬を寄越し、事の次第をご報告後、速やかに入朝いたされるよう申し出ろ。また、大将軍方にも同じくし、知らせを受けた者達には、指針が決定するまで他言を禁ずる」
楸瑛は早口だが一句一句はっきりと指示を出し、それを受けた武官は形式的な礼をし、慌ただしくその場を去った。
「さて、私達も行くよ。絳攸」
話は歩きながらでも出来る。
二人は駆けるように回廊を突き進み、執務室を通り過ぎ、王の眠る内廷へと向かった。
「恐らく犯行は本日の未明ごろだろう」
「ああ。かなりの確率で、出仕時間を狙われた……」
「出仕にしては早いだろう」
「いや、今日は早朝出仕で仕事をすると……」
絳攸は昨日の会話を思い出し、はっと真実に気がついた。
「どうしたんだい」
「…珀明が早朝出仕をすることを知っているのは、俺と檗莉萩の二人だ」
「だからといって檗莉萩がこの件に関わっているとは限らない。家人ならば主人の予定を把握しておくべきだから、壁家に潜入していた奴等が壁珀明本人から翌日の早朝出仕の件を聞き、犯行に及んだという可能性もある。…檗莉萩は、君から見てどんな官吏だい」
「…真面目で、愛想の良い、仕事熱心な官吏だ」
「嫌疑をかけるに値するかい?」
楸瑛は至極真面目に問うた。
その言葉に、絳攸は足を進めながらも首を横に振る。
そのような事をする人間には見えない。
「いや、莉萩はそのような事に加担するような人間じゃない」
一瞬でも芽生えた部下への疑いを振り払おうと、絳攸はよりいっそう速度を上げる。
王が常日ごろ生活を営む一室へ辿り着き、控えている武官を介す事無く扉を叩く。
ドンッ、ドンッ、ドンッ!!!
「主上!!!」
ドンッ、ドンッ、ドンッ!!!
「主上、お目覚めください」
二度目の呼びかけで扉はゆっくりと開けられ、未だ寝着姿の王が臣下の異様な様子を察し、眉根を寄せる。
「どうしたのだ、楸瑛、絳攸」
「新たな被害者が出ました。またもや官吏です」
「…! 今度は誰が…」
劉輝は、官吏という言葉に思わず渋面を作る。
「…攫われたのは、吏部官吏・壁珀明です」
「!!!」
楸瑛に変わり、被害者の名を口にした絳攸もまた、やるせない表情をしている。
「…悠瞬様にも早馬をお出ししました。お召し替えの後、速やかに執務室までいらしてください」
「分かった」
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ファンになっちゃいました(*´∀`*)
私事なんですが、最近嫌なことばかりで、打ちのめされて凹んでばっかり…。
頑張らなきゃと思ってもふとした時にぶり返しが来て落ちてしまう。そんなループの中にいたんですが
華月さんのブログを読んでるとすごく励まされた自分がいました(*・∀<*)
この縁に感謝です。
このコメントが目に止まるかわからないんですが、もしも目に止まったら、少しだけ私の話を聞いてもらえたりしませんか?
聞いてもらえたらありがたいなとブログ読みつつ思ったんですd(^^*)
chiro.2525@i.softbank.jp
唐突で驚かせているかもしれませんが華月さんにならお話できる。どうしても聞いてほしい思いでいっぱいです!
※ですが迷惑でしたらコメントは消去しちゃって下さいね。
2015/7/13(月) 午後 9:25 [ cya***** ]