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スポーツ指導の進め方
資料『スポーツ少年団の指導員のためのテキスト』 財団法人日本体育協会・日本スポーツ少年団
スポーツ指導は年間計画にそった練習日程により進めていくことが大切である。練習日程は「導入」の段階から入り、内容の「展開」と進め、最後の「まとめ」という形態をとるが、1日の練習にもこの「導入」「展開」「まとめ」という進め方が必要である。(図5)
(1)導入
「導入」の段階で行なわなければならないのは次のことがらである。
a.意欲的な練習態度をつくる-これは、ねらいと見通しを与えることである。身につけさせようとする技能、内容を具体的に示し、そのための活動方法や、練習の段階を見通すことができるようにする。
b.学習の場をつくる−具体的にはグルーピングを行なうことや、施設・用具などを整え、効率よく学習できるような場を設定する。
c.個人の能力やねらいを確かめ、グループの活動計画を立てる。
d.グループ内の役割を決める---リーダーや用具係、記録係などの必要な役割を決める。
以上のことがらは、練習日程の最初の「導入」の段階で行なうことである。これによって年間計画に基づく活動のねらいや、見通しなどを大まかに理解させるようにすることが大切である。
また、練習日ごとの練習の初めの「導入」は、aの意欲的な練習態度をつくることがねらいとなるが、活動の進行に伴い、個人、グループによって進度や意識が異なってくるため、それぞれ個人、グループに、具体的なねらいや活動の方法を理解させるようにする。
導入のしかたによって、それ以後の「展開」のときの団具たちの活動が、活発になるか、あまり活発にならないかが決まる。そのため少年たちにねらいや見通しが充分に理解できるよう工夫しなければならない。たとえば口頭による説明のほか、それを補助するためテキス卜、スライド、映画などの資料を用いて理解を深めさせ、次に示範を行なったり、団員たちに実践させるということも有効である。
(2)グルーピング
練習日程の最初の「導入」段階で行なうグルーピングは、練習の能率を上げ、さらにひとりひとりの能力を伸ばす助け合いの場にもなるよう、考えなければならない。
a.グループの結びつき
新し<グループがつくられ、団員同士のコミュニケーションができ、グループとしての有機的な働きを持つようになるのは、発達段階やグルごプメンバーが韻を合わせる回数一最低、1ヵ月4〜5回の練習回数が必要といわれている。特に最初の段階では、できるだけグループのメンバーが顔を合わせ、互いに自分の意志、考えを充分に出すことができるように、話しあいの場を多く持つことが必要である。
b.グループの固定期間
同じグループのメンバーが固定している期間があまり長いと、いわゆる「慣れ合い」の現象が起こったり、他のグループとの関係がうまくいかなくなる場合もある。そのときは、思いきって新しいグループをつくり直す方が、新しい刺激となってグループ活動を活発化させ、団員の仲間意識の向上に役立ち、団としての活動の活発化にもつながる。
C.グループのリーダー
グループでは、メンバーの役割を決めることが大切である。リーダーの選出には、メンバーに選ばせる方法と、指導者の方できめるという2つの方法があるが、少年たちの自主的な活動を促すためには、前者の方法をとりたい。しかし、ただ団員たちに勝手に決めさせるのではなく、リーダーの役割をよく理解させて選ばせるようにする。その過程を踏めば、指導者の考えているリーダーと、それほど違いがないはずである。他の役割を決めるにあたっても、同様の選出の方法がよいと思われる。
(3)展開
団員たちが、適切な導入によって強い動機づけができ、練習のねらいと見通しを持ち、意欲的に自主的に活動を行ない、内容を身につけていくのが「展開」の段階である。この段階では指導者は、その活動がより活発になるよう、さまざまな方法を工夫し、指導を進めなければならない。
方法として次のことが考えられる。
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スポーツ少年団とは
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スポーツ指導の基本原則・技能の練習法
資料『スポーツ少年団の指導員のためのテキスト』 財団法人日本体育協会・日本スポーツ少年団
スポーツ技能の習得には反復練習をすることが必要であり、反復の方法には幾つかの型があるが、練習法を大別すると全習法と分習法とがある。
全習法は、学習しようとすることを各部分に分けすに、全体をひとまとめにし、それを繰り返し練習する方法である。たとえばバレーボールの練習にパス、レシーブ、トス、スパイクなどの技能を、全部いっせいにひとまとめにし練習することを繰り返すのである。したがって最初からゲーム的な練習法をとることもありうる。
分習法は、学習しようとすることを幾つかの部分に分け、各技術ごとに少しずつ練習をしていく方法である。これには次の3つの方法がある。
① 純粋な分習法
幾つかに分けた各部分を、一定のレベルに達するまで別々に反復練習し、そののち全体を一緒に学習する方法。たとえばバレーボールでは図2のようになる。
② 漸進的分習法
まず「部分1と「部分2」を別々に練習し、次に「部分1、2」を同時に併せて練習する。その次には「部分3」を練習し、その後「部分1、2、3」を一緒に練習する、というように、次々と新しい部分を加えていく方法である。(図3)
③ 反復的分習法
まず「部分1」練習し、次いで「部分1、2」を練習し、さらにその次に「部分1、2、3」を練習する。このように習得した部分に新しい部分を次々と加えていき、学習した部分を繰り返しつつ進めていく方法である。
以上のような全習法、分習法のいずれも、学習する運動の特性や指導段階によって、効果的に用いることが大切である。
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スポーツ指導の基本原則・スポーツ指導の形態
資料『スポーツ少年団の指導員のためのテキスト』 財団法人日本体育協会・日本スポーツ少年団
スポーツ指導は、そのスポーツの運動技能の習得と上達を中心に進められるが、そのためには指導計画を立て、適切な課題を団員たちに示し、練習日程に基づいたさまざまな練習方法で進めるという形態をとることが必要である。
指導計画の立案や、指導と練習を進めるにあたっては、団員たちの体力、能力に適しているかどうかをよく考慮するとともに、興味をもたせ意欲ある取り組みができるような指導が大切であり、団員自身が自発的、自主的に活動をすすめることを主眼とした指導でなければならない。
1)運動の課題と学習の課題
スポーツ指導の展開にあたっては、運動の特性をおさえたうえで、具体的に団員の練習の目標となる「課題」を与えなければならない、たとえば陸上競技の100m走の運動課題は「できるだけ速<走ること」である。この運動課題をそのまま学習の課題にして効果をあげることもできるであろう。しかし、比較的足の速い、走るのが得意な少年は、活発にどんどん練習することが予想できるが、走るのが不得手な少年は、ひっ込みがちで消極的となることも充分予想される。
そこで指導者は、個人の伸び率を重視し、「どれだけ走るタイムを縮めることができるか」という課題を与えたとする。これは、100m走を「できるだけ速く走ること」という運動課題そのものではなく、学習のために特に工夫された課題――すなわち「学習課題」ということができる。
このように、運動課題のほかに学習課題を設定し、活動が全般に活発化すれば、課題の与え方として一応は成功したことになるだろう。
しかし、問題はそれによって、100m走の課題である「遠く走る」能力が、本当に高まったかどうかである。もし大部分の団員たちの成績が向上しているのなら、工夫した学習課題が本来の運動課題に直結したことになる。ところがそうではなくて、伸びた団員もいるがあまり伸びていない者もいるということであれば、それは学習課題の運動課題との結びつき方が弱かったことになる。
このことは、100m走のフォームの練習の場合にもあてはまる。スタート、中間走、フィニッシュというように、フォームの練習を行なうとき、そのフォームを身につけることによって走るタイムが短縮されなければならない。ところが、よいフォームで走るようになったが、以前よりもタイムが伸びないということであれば、フォーム練習という「学習課題」が、運動の課題に結びつかなかったことになる。
運動課題と結びつく学習課題の設定は、運動の特性によっても異なる。陸上競技は運動課題に結びつく学習課題を、特に工夫して指導しなければならない運動である。器械運動も陸上競技に近く、学習課題の設定が重要である。
これに対し、ボール運動、球技は、運動の課題をそのまま学習の課題にして、効果があげやすい運動である。格技も対人を個人に置き換えた形では球技とほぼ同じといえるが、水泳は陸上競技と球技との中間に位置すると考えられよう。もちろん球技の場合でも、学習効果をさらにあげるには、適切な学習課題の設定が大切なのはいうまでもない。
運動課題に結びつく学習課題を工夫するにあたって、特に次の点に留意することが必要である。(90ページ図1)
●学習課題が、少年たちの発育段階に合っているかどうか。
●学習内容が、少年たちの発育段階に合っているかどうか。
●施設、用具、指導法などの条件が充分考えられているかどうか。
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スポーツ指導の基本原則・スポーツの学習過程
資料『スポーツ少年団の指導員のためのテキスト』 財団法人日本体育協会・日本スポーツ少年団
「指導の内容」を少年たちが習得していく一連の学習、練習の過程が「学習過程」である。指導はその過程に沿って進めていかなければならない。「学習過程」には次の三つの過程が考えられる。
① 一般的学習過程
スポーツの学習全般に共通するもので、指導の内容をそれぞれの段階で習得する学習過程である。
一般にスポーツや運動技能の指導は、指導者の「示範」→「練習」の反復という過程をとる。これは指導しようとする内容を、指導者の動作によって知覚させ、それを模倣させ、反復練習するという方法である。
しかし、団員の自主性や意欲の向上を重視すれば、ただ機械的に模倣させるということだけではなく、内容をよく認識させるためにも、「考えること=思考」を過程の中に入れなければならない。すなわち「知覚→思考→練習」という過程をとることが大切である。
「知覚」は、指導者の示範や他の人の動きを見たり、スライド、ビデオ等を見たり、自分で実際に行なってみたりすることによって、動きや技術を認識させることである。「思考」は、団員に考えさせることで、団員同士の話しあい、指導者の助言などによって、技術の要点や個人の問題解決の方向性などを理解させるなどがある。「練習」では、つねに自分の動き、プレイが正しいかどうかを反省したり、互いに教えあい、修正をしあうことによって正しい動きができるよう努力させるのである。
② 集団過程
スポーツの多くは集団で行なうものであるが、特に練習では、個人種目であっても必ず集団で行なうことが多い。スポーツ少年団の日常活動はすべて集団での練習が中心となっている。
集団には、当然、人と人との相互作用が起き、人間関係が生まれる。ひとりの少年が入団すれば、その集団に変化が起きる。さらに集団がひとつの目標に向かって活動していく過程でも変化をしていき、ある時期になると完全に機能集団として活動するようになる。これを「集団過程」といい、スポーツの指導では無視できない重要な問題である。
集団が、集団として維持され、目標を達成するための機能を発揮するには、次のような点を考えなければならない。
●グルーピングをどうするか一構成員の質、人数など。
●集団の意識をどのように高めていくか。
●集団の中の個人と個人の関係、個人と集団との関係、そしてさらに
集団と集団との関係をどのようにするか。
このような集団過程は、運動技能の習得や向上に役立つ協力的態度の育成に大切であるとともに、さらに創造的態度や能力を伸ばすうえにも重要である。
③ 運動の特性による学習過程
運動には、それぞれ技術からみた特性がある。したがって指導する運
動の特性を理解し、それに応じた指導をしなければならない。一般に体育では次の6つの領域が考えられ、その内容に応じた運動を設定している。
a.個人的運動(基本的運動)
個人で成り立つ運動で、技能の形態や構造が基本的であって、身体的機能や体力との関係が直接的である。精神的な面でも自己の力のベストをつくすという点で、他の運動に比べると基本的運動としてとらえることができる。陸上競技の各種目などが代表的な例となる。
b.対人的運動
1対1で他の人との関わりあいにおいて成立している運動である。集団的運動とは違って、あくまで運動の主体が個人である。例えば格技の各種目がこの種の運動である。
C.集団的運動
ただ単に集団で行なっているというだけでなく、そこに協力活動が基本にある運動である。すなわち、個人技能十協力→集団技能という形態である。サッカー、バレーボールなどの球技がこの例となる。
C1.克服スポーツ
できないことができるようになる、という過程の中に特性を認めた運動である。ある運動技術ができるか、さらに高いレベルの技術ができるかという形態がみられる。体操の器械運動などがその例である。
E.表現運動
自分のからだによって、どのような表現をどれくらいできるか、という点に特性がある運動である。ダンスなどがこれ にあたる。
f.健康・体力に直結する運動
健康や体力の維持、増進に、直接的なつながりをもつように工夫された運動である。いろいろな体操系の運動やジョギングなどがその例となる。
一応このような8分野があげられるが、しかし、ある運動をこれらのひとつの領域に完全にあてはめて考えることはできない。たとえば水泳は、泳げるようになるまでの過程は、「できないことができるようになる」という克服スポーツといえるが、泳げるようになると、陸上競技に近い個人的運動の性格をもつようになる。特に少年期では発育発達との関係もあって、運動の特性はそれを行なう少年たち個々について、よく検討しておさえる必要がある。
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スポーツ指導の基本原則・指導の基本となる構造
資料『スポーツ少年団の指導員のためのテキスト』 財団法人日本体育協会・日本スポーツ少年団
一般的に指導にあたっては、適切な目標の設定、指導の内容、及び指導の揚が最小限必要である。
まず、「目標の設定」は、それに向かって努力、向上しようとする具体的な目標を示すことである。特に少年たちには設定する目標は具体的でなければならないし、また、努力によって達成できる目標でなければならない。だが、余り努力をしなくても達成できるのは目標とはならない。
そして、その「目標」が達成できるように示されるのが「指導の内容」である。団員たちにとっては学習や練習のプログラムであるが、その内容を少年たち自身が自分のものとして、自分自身で行なっていけるように指導を進めていかなければならない。これが練習や学習内容の「内面化」であり、それによって少年自身が練習にとり組む行動を「学習活動」と呼ぶ。指導は何よりも、団員自身が、「目標」を達成するための「学習活動」を推進するものなのである。
指導は、ある定まった条件や場によって行なわれる。それが「指導の場」である。そのひとつは指導と活動を行なうための「施設計用具」などの物理的な場であり、いまひとつが、スポーツ少年団という集団での社会的な場である。このような相互に関連する諸条件を、団員自身の「学習活動」をよりよく進めていくために、有機的に働かせるようにしなければならない。そのためには「指導の内容」に適した場の選択と設定、あるいは場の限界と特性に応じた内容の工夫、提供が大切である。
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