|
1949 夏雑歌,問いかけ [題詞](詠鳥) 霍公鳥 今朝之旦明尓 鳴都流波 君将聞可 朝宿疑将寐 ほととぎす けさのあさけに なきつるは きみききけむか あさいかねけむ ・・・・・・・・
ホトトギスが今朝の明け方に鳴いたのを あの方はお聞きになったでしょうか それともぐっすりと寝ていらっしゃったかしら ・・・・・・・・ 1950 夏雑歌,叙景 [題詞](詠鳥) 霍公鳥 花橘之 枝尓居而 鳴響者 花波散乍 ほととぎす はなたちばなの えだにゐて なきとよもせば はなはちりつつ ・・・・・・・・
ホトトギスが咲き匂う花橘の枝にとまって 鳴きたてるたびに花が散りゆく ・・・・・・・・ 1951 夏雑歌 [題詞](詠鳥) 慨哉 四去霍公鳥 今社者 音之干蟹 来喧響目 うれたきや しこほととぎす いまこそば こゑのかるがに きなきとよめめ ・・・・・・・・
にくたらしいぞ ろくでなしのホトトギスめ みんなが待っているこんな時にこそ 声もかれてしまうほど 来て鳴き響けばいいのに ・・・・・・・・ 1952 夏雑歌,叙景 [題詞](詠鳥) 今夜乃 於保束無荷 霍公鳥 喧奈流聲之 音乃遥左 こよひの おほつかなきに ほととぎす なくなるこゑの おとのはるけさ ・・・・・・・・
月がなくあたりのおぼつかない今宵 闇をとおしてホトトギスの鳴く声であろうか 遥か彼方から聞こえてくる ・・・・・・・・ 1953 夏雑歌 [題詞](詠鳥) 五月山 宇能花月夜 霍公鳥 雖聞不飽 又鳴鴨 さつきやま うのはなづくよ ほととぎす きけどもあかず またなかぬかも ・・・・・・・・
五月の山を月が照らして 卯の花を浮かび上がらせている今宵 こんな夜のホトトギスの声は いくら聞いても聞き飽きることがない もういちどまた鳴かないものか ・・・・・・・・ 1954 夏雑歌 [題詞](詠鳥) 霍公鳥 来居裳鳴香 吾屋前乃 花橘乃 地二落六見牟 ほととぎす きゐもなかぬか わがやどの はなたちばなの つちにおちむみむ ・・・・・・・・
ほととぎすよ わが家に来て何故鳴かないのか おまえの鳴声を待ちかねた花橘が ただ地に地に落ちているではないか ・・・・・・・・ 1955 夏雑歌 [題詞](詠鳥) 霍公鳥 厭時無 菖蒲 蘰将為日 従此鳴度礼 ほととぎす いとふときなし あやめぐさ かづらにせむひ こゆなきわたれ ・・・・・・・・
霍公鳥よ いとう時など無いから あやめぐさをかづらにする日には かならず鳴き渡って来なさい ・・・・・・・・ 1956 夏雑歌,奈良,懐古 [題詞](詠鳥) 山跡庭 啼而香将来 霍公鳥 汝鳴毎 無人所念 やまとには なきてかくらむ ほととぎす ながなくごとに なきひとおもほゆ ・・・・・・・・
* 「啼きてか来らむ」は、大和の方へ行くだろうで、大和の方へ親しんで啼いて行く意となる。大和の方へ親しんで啼き渡って行くほととぎす おまえが鳴くと亡き人が偲ばれることであるよ ・・・・・・・・ 1957 夏雑歌,叙景 [題詞](詠鳥) 宇能花乃 散巻惜 霍公鳥 野出山入 来鳴令動 うのはなの ちらまくをしみ ほととぎす のにいでやまにいり きなきとよもす ・・・・・・・・
* とよもす【▽響もす】[動サ五(四)]声や音をひびかせる。卯の花の花が散るのが惜しいと ほととぎすが野山を飛び回って 山彦のように鳴いているよ ・・・・・・・・ 1958 夏雑歌 [題詞](詠鳥) 橘之 林乎殖 霍公鳥 常尓冬及 住度金 たちばなの はやしをうゑむ ほととぎす つねにふゆまで すみわたるがね ・・・・・・・・
* 「がね」[接助・終助・接尾]動詞の連体形に付く。願望・命令・意志などの表現を受けて、目的・理由を表す。…するように。…するために。橘を沢山植えて林を造ろう ほととぎすが年中住み着けるように ・・・・・・・・ 1959 夏雑歌,奈良,叙景 [題詞](詠鳥) 雨へ之 雲尓副而 霍公鳥 指春日而 従此鳴度 あまばれの くもにたぐひて ほととぎす かすがをさして こゆなきわたる ・・・・・・・・
降りしきっていた雨が上がり 流れる雲を追いかけるかのように ホトトギスが春日を目指して この上を鳴きながら飛んで行く ・・・・・・・・ 1960 夏雑歌 [題詞](詠鳥) 物念登 不宿旦開尓 霍公鳥 鳴而左度 為便無左右二 ものもふと いねぬあさけに ほととぎす なきてさわたる すべなきまでに ・・・・・・・・
* 「寐ねぬ」寝られずいる物思いで寝られずいる朝明に ほととぎすが広い空を渡って行く 何ともどうしようもないということだなあ ・・・・・・・・ * 「さわたる」(自ラ四)は、「さ」(接頭)、広い時間・空間を越えて移って行く感じ。 |
全体表示
[ リスト ]



