ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

・・・万葉集(〃)

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2301 秋相聞

[題詞]寄夜

忍咲八師  不戀登為跡  金風之  寒吹夜者  君乎之曽念

よしゑやし 恋ひじとすれど 秋風の 寒く吹く夜は 君をしぞ思ふ 

よしゑやし こひじとすれど あきかぜの さむくふくよは きみをしぞおもふ
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いいわよ 恋なんかもうしないと思うけれど

秋風が寒く吹く夜は淋しくて

またあなたのことを思ってしまう
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* 「よしゑやし」は、「ええままよ」、「もういいわよ」など相手を許すような気持。




2302 秋相聞

[題詞](寄夜)

<或>者之  痛情無跡  将念  秋之長夜乎  <寤><臥>耳

ある人の あな心なと 思ふらむ 秋の長夜を 寝覚め臥すのみ 

あるひとの あなこころなと おもふらむ あきのながよを ねざめふすのみ
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夜が明けるのを

ああ心なしと思う人もあろうが

このわたしは

秋の長い夜を独り淋しく

寝覚めながら

ただ臥しているだけでした
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2303 秋相聞

[題詞](寄夜)

秋夜乎  長跡雖言  積西  戀盡者  短有家里

秋の夜を 長しと言へど 積もりにし 恋を尽せば 短くありけり 

あきのよを ながしといへど つもりにし こひをつくせば みじかくありけり
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秋の夜は長いものと人は言うけれど

積もり積もった恋を尽せば
 
今はなんとも短い秋の夜ですことよ
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2304 秋相聞

[題詞]寄衣

秋都葉尓  々寶敝流衣  吾者不服  於君奉者  夜毛著金

秋つ葉に にほへる衣 我れは着じ 君に奉らば 夜も着るがね 

あきつはに にほへるころも あれはきじ きみにまつらば よるもきるがね
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秋の黄葉のこの匂い立つ色の衣を

わたしは自分では着ない

君に差し上げたら

夜も肌につけていてくださるにちがいないから
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* 「がね」[接助・終助・接尾] 《上代語》動詞の連体形に付く。願望・命令・意志などの表現を受けて、目的・理由を表す。…するように。…するために。
* 「奉仕を献上する」という意味での「まつりごと」。




2305 秋相聞,うわさ

[題詞]問答

旅尚  襟解物乎  事繁三  丸宿吾為  長此夜

旅にすら 紐解くものを 言繁み まろ寝ぞ我がする 長きこの夜を 

たびにすら ひもとくものを ことしげみ まろねぞわがする ながきこのよを
・・・・・・・・
旅先ですら紐を解いて共寝をするのに

人の噂がうるさかろうと紐も解かないで

この秋の夜長を独り侘びしく

着たまま丸寝をしていますよ  
・・・・・・・・



2306 秋相聞

[題詞](問答)

四具礼零  暁月夜  紐不解  戀君跡  居益物

しぐれ降る 暁月夜 紐解かず 恋ふらむ君と 居らましものを 

しぐれふる あかときづくよ ひもとかず こふらむきみと をらましものを
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しぐれ降る暁近いこんな月夜に

人の噂がうるさいから紐も解かず

わたしに焦がれていらっしゃるという

ほんとうかしら

こんな時にこそそばに居てほしいのに
・・・・・・・・



2307 秋相聞

[題詞](問答)

於黄葉  置白露之  色葉二毛  不出跡念者  事之繁家口

黄葉に 置く白露の 色端にも 出でじと思へば 言の繁けく 

もみちばに おくしらつゆの いろはにも いでじとおもへば ことのしげけく
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黄葉に白露が置けば色がいっそう映えるように

思いを顔に出さないようにと思っていても

この恋心が人々の噂となってしまって
 
何ともやかましいことだ 
・・・・・・・・



2308 秋相聞

[題詞](問答)

雨零者  瀧都山川  於石觸  君之摧  情者不持

雨降れば たぎつ山川 岩に触れ 君が砕かむ 心は持たじ 

[あめふれば たぎつやまがは いはにふれ] きみがくだかむ こころはもたじ
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雨が降れば激り流れる山川が岩に砕けるように

人の噂で君の心を砕かないように我慢しているんだよ
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2309 秋相聞,比喩

[題詞]譬喩歌

祝部等之  齊經社之  黄葉毛  標縄越而  落云物乎

祝らが 斎ふ社の 黄葉も 標縄越えて 散るといふものを 

はふりらが いはふやしろの もみちばも しめなはこえて ちるといふものを
・・・・・・・・
神官らが祀る社の黄葉さえも標縄を越えて散るというのに

親の目がそんなにきびしいのかなあ
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* 祝(はふり)は、神に奉仕し祭儀などをおこなう神官。
* 祝(はふり)は、思う娘の「親」と掛けている。



2310 秋相聞

[題詞]旋頭歌

蟋蟀之  吾床隔尓  鳴乍本名  起居管  君尓戀尓  宿不勝尓

こほろぎの 我が床の辺に 鳴きつつもとな 置き居つつ 君に恋ふるに 寐ねかてなくに 

こほろぎの あがとこのへに なきつつもとな おきゐつつ きみにこふるに いねかてなくに
・・・・・・・・
私の寝室の近くでしきりにこうろぎが鳴いてうるさい

君恋しと待ちかねながら寝ようにも寝付かれないでいるのに

これでは君の気配も聞こえはしない
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* 「もと‐な」 1 わけもなく。みだりに。 2 しきりに。むやみに。



2311 秋相聞

[題詞](旋頭歌)

皮為酢寸  穂庭開不出  戀乎吾為  玉蜻  直一目耳  視之人故尓

はだすすき 穂には咲き出ぬ 恋をぞ我がする 玉かぎる ただ一目のみ 見し人ゆゑに 

[はだすすき] ほにはさきでぬ こひをぞあがする [たまかぎる] ただひとめのみ みしひとゆゑに

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ひそかな恋を私はしています

ただ一度だけお会いした方なのに
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* 「はだすすき」は、「花すすき」のことで、穂が出始めたばかりのすすき(尾花のこと)のこと。


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