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サ2919 羈旅 [題詞](正述心緒) 二為而 結之紐乎 一為而 吾者解不見 直相及者 ふたりして むすびしひもを ひとりして あれはときみじ ただにあふまでは ・・・・・・・・・・
* 「して」は、サ変動「為(す)」の連用形「し」に、接助「て」が付いたもの。使役の助動詞と共に用い、そのことをする人を指す。また、行う人の数などをあらわす。一夜を共にあかし 翌朝二人で結んだ下着の紐は 一人の時にわたしは勝手に解きはしない またじかに逢うその時まで ・・・・・・・・・・ * 「じ」は、「む」の意の打消し、推量を表す。活用語の未然形につく。ここでは「見」。「べし」に対する「まじ」に似るが、確信生は「まじ」より劣る。 2920 [題詞](正述心緒) 終命 此者不念 唯毛 妹尓不相 言乎之曽念 をへむいのち ここはおもはず ただしくも いもにあはざる ことをしぞおもふ ・・・・・・・・・・
死ぬかもしれない などと今は思わない ただ 愛する人に逢えないこと そのことを辛く思う ・・・・・・・・・・ 2921 女歌 [題詞](正述心緒) 幼婦者 同情 須臾 止時毛無久 将見等曽念 たわやめは おやじこころに しましくも やむときもなく みてむとぞおもふ ・・・・・・・・・・
* 「たわや‐め」手弱女;「たわや」は「撓(たわ)」に接尾語「や」の付いたもの。「手弱」は当て字。 しなやか・なよなよ、とした女性。まだ幼い女ですが こころはあなたと同じです しばしも止むときなく お逢いしたいと思っています ・・・・・・・・・・ 2922 女歌 [題詞](正述心緒) 夕去者 於君将相跡 念許<増> 日之晩毛 れ有家礼 ゆふさらば きみにあはむと おもへこそ ひのくるらくも うれしくありけれ ・・・・・・・・・・
夕方になるとあなたに逢えると思うからこそ 日が暮れるのがいつも嬉しい でも あなたはなかなか来てくださらない ・・・・・・・・・・ 2923 うわさ,女歌 [題詞](正述心緒) 直今日毛 君尓波相目跡 人言乎 繁不相而 戀度鴨 ただけふも きみにはあはめど ひとごとを しげみあはずて こひわたるかも ・・・・・・・・・・
今日だってあなたにお逢いしたいけれど 人の勝手な噂が激しくて 私は一人っきりで あなたに恋い続けています ・・・・・・・・・・ 2924 女歌 [題詞](正述心緒) 世間尓 戀将繁跡 不念者 君之手本乎 不枕夜毛有寸 よのなかに こひしげけむと おもはねば きみがたもとを まかぬよもありき ・・・・・・・・・・
* 「けむ」は、過去の助動詞「き」の未然形の古形「け」+推量の助動詞「む」ー 活用語の連用形に付く。 過去の事実についての推量を表す。…ただろう。世の中は恋がしきりにできるとは 思っていなかったのに 逢えた頃になぜ毎晩逢わなかったのだろう ・・・・・・・・・・ 2925 女歌,戯歌 [題詞](正述心緒) 緑兒之 為社乳母者 求云 乳飲哉君之 於毛求覧 みどりこの ためこそおもは もとむといへ ちのめやきみが おももとむらむ ・・・・・・・・・・
幼児に乳をあたえる乳母を求めるとおっしゃりながら あなたが乳を飲むような幼児なのでしょうか 私は年上のおばあちゃんなのに 私に愛を求められるなんて ・・・・・・・・・・ 2926 戯歌 [題詞](正述心緒) 悔毛 老尓来鴨 我背子之 求流乳母尓 行益物乎 くやしくも おいにけるかも わがせこが もとむるおもに ゆかましものを ・・・・・・・・・・
老いてしまったのが悔しい 若ければあなたの求める乳母として参りますのに ・・・・・・・・・・ 2927 [題詞](正述心緒) 浦觸而 可例西袖○ 又巻者 過西戀<以> 乱今可聞 うらぶれて かれにしそでを またまかば すぎにしこひい みだれこむかも ・・・・・・・・・・
悲しみに沈んで裂けてしまったあの人の袖を またどうにか巻いたら あの過ぎてしまった恋が 乱れ込んで来ないだろうか ・・・・・・・・・・ 2928 [題詞](正述心緒) 各寺師 人死為良思 妹尓戀 日異羸沼 人丹不所知 おのがじし ひとしにすらし いもにこひ ひにけにやせぬ ひとにしらえず ・・・・・・・・・・
それぞれに 人は死んでいくらしい 女に恋して日増しに痩せて 相手には恋していることも知られない 人は恋のために命を削るのか それぞれに ・・・・・・・・・・ 2929 女歌 [題詞](正述心緒) 夕々 吾立待尓 若雲 君不来益者 應辛苦 よひよひに わがたちまつに けだしくも きみきまさずは くるしかるべし ・・・・・・・・・・
* 「けだしく‐も」副詞「けだしく」+係助詞「も」毎夜毎夜わたしは立ちんぼうで待ってます もしもあなたがお出でにならなかったら ああ 思っただけでも苦しいことです ・・・・・・・・・・ 1 (あとに推量または疑問の意味を表す語を伴って)おそらく。ひょっとしたら。 2 (あとに仮定の意味を表す語を伴って)もしも。 2930 女歌 [題詞](正述心緒) 生代尓 戀云物乎 相不見者 戀中尓毛 吾曽苦寸 いけるよに こひといふものを あひみねば こひのうちにも われぞくるしき ・・・・・・・・・・
生きたこの世で恋というものに 私は出会ったことはなかったけれど これが恋なら私の恋が一番苦しいと思う ・・・・・・・・・・ |
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