ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

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2942 女歌

[題詞](正述心緒)

吾兄子尓  戀跡二四有四  小兒之  夜哭乎為乍  宿不勝苦者

吾が背子に 恋ふとにしあらし みどり子の 夜泣きをしつつ 寐ねかてなくは 

わがせこに こふとにしあらし みどりこの よなきをしつつ いねかてなくは
・・・・・・・・・・
父親に甘えられたらと

赤子が夜泣きして

眠れないみたい

居てあやして欲しい

わたしも眠りに就けません
・・・・・・・・・・



2943 怨,戯歌

[題詞](正述心緒)

吾命之  長欲家口  偽乎  好為人乎  執許乎

吾が命の 長く欲しけく 偽りを よくする人を 捕ふばかりを 

わがいのちの ながくほしけく いつはりを よくするひとを とらふばかりを
・・・・・・・・・・
吾が命が長くあって欲しいと願い求める

そんな偽り上手ないい人を捕まえられればなあ 
・・・・・・・・・・



2944 うわさ

[題詞](正述心緒)

人言  繁跡妹  不相  情裏  戀比日

人言を 繁みと妹に 逢はずして 心のうちに 恋ふるこのころ 

ひとごとを しげみといもに あはずして こころのうちに こふるこのころ
・・・・・・・・・・
中傷が鬱陶しいので

妻とは会わずにいるが

心の中で思わない時はない
・・・・・・・・・・



2945 枕詞,女歌

[題詞](正述心緒)

玉<梓>之  君之使乎  待之夜乃  名凝其今毛  不宿夜乃大寸

玉梓の 君が使を 待ちし夜の なごりぞ今も 寐ねぬ夜の多き 

[たまづさの] きみがつかひを まちしよの なごりぞいまも いねぬよのおほき
・・・・・・・・・・
あなたからの便りを待つ夜の

その使者の気配を心待ちしながら

いつまでも眠れない

そんな夜がとても多い
・・・・・・・・・・



2946 枕詞

[題詞](正述心緒)

玉桙之  道尓行相而  外目耳毛  見者吉子乎  何時鹿将待

玉桙の 道に行き逢ひて 外目にも 見ればよき子を いつとか待たむ 

たまほこの みちにゆきあひて よそめにも みればよきこを いつとかまたむ
・・・・・・・・・・
通う道でよく出会う

見るほどによい子

妻となる日はいつになるのだろう

待っていられないなあ
・・・・・・・・・・



2947 作者:柿本人麻呂歌集,異伝,うわさ

[題詞](正述心緒)

念西  餘西鹿齒  為便乎無美  吾者五十日手寸  應忌鬼尾

思ひにし あまりにしかば すべをなみ 吾れは言ひてき 忌むべきものを 

おもひにし あまりにしかば すべをなみ われはいひてき いむべきものを
・・・・・・・・・・
思いにあまって堪えかねて

どうしようもなく

言ってしまった

口にしてはならない相手の名を
・・・・・・・・・・
* 「忌むべきもの」:言ってはならないこと。ここでは相手の名を言うこと。



2947S1 異伝,うわさ,人目

[題詞](正述心緒)或本歌曰

門出而  吾反側乎  人見<監>可毛 [一云 無乏 出行 家當見]

門に出でて 吾が臥い伏すを 人見けむかも  [一云 すべをなみ 出でてぞ行きし 家のあたり見に] 

かどにいでて わがこいふすを ひとみけむかも [すべをなみ いでてぞゆきし いへのあたりみに]
・・・・・・・・・・
門前に臥い伏す私を

人はなんと見るだろう
・・・・・・・・・・



2947S2 作者:柿本人麻呂歌集,枕詞,人目,異伝

[題詞](正述心緒)柿本朝臣人麻呂歌集云

尓保鳥之  奈<津>柴<比>来乎  人見鴨

にほ鳥の なづさひ来しを 人見けむかも 

にほどりの なづさひこしを ひとみけむかも
・・・・・・・・・・
冬の池にすむにほ鳥が

慣れ親しんで来たのだなあと

人は見るだろうか
・・・・・・・・・・



2948

[題詞](正述心緒)

明日者  其門将去  出而見与  戀有容儀  數知兼

明日の日は その門行かむ 出でて見よ 恋ひたる姿 あまたしるけむ 

あすのひは そのかどゆかむ いでてみよ こひたるすがた あまたしるけむ
・・・・・・・・・・
明日はあなたの家の門に行く

出て見たらわかるはずだよ

恋いやつれた姿の私の思いが

世間にも知れ渡るなあ きっと
・・・・・・・・・・



2949 女歌

[題詞](正述心緒)

得田價異  心欝悒  事計  吉為吾兄子  相有時谷

うたて異に 心いぶせし 事計り よくせ我が背子 逢へる時だに 

うたてけに こころいぶせし ことはかり よくせわがせこ あへるときだに
・・・・・・・・・・
ほんとうに心がなごみませんわ

なにか楽しい計画でも立てられないのかしら

せめ逢えるその時だけでも
・・・・・・・・・・



2950

[題詞](正述心緒)

吾妹子之  夜戸出乃光儀  見而之従 情空有  地者雖踐

我妹子が 夜戸出の姿 見てしより 心空なり 地は踏めども 

わぎもこが よとでのすがた みてしより こころそらなり つちはふめども
・・・・・・・・・・
妻がこそこそと夜に外出する姿を

偶然見てしまった

それからというもの私の気持ちは上の空で

足は地につかなくない
・・・・・・・・・・



2951 桜井,奈良県,歌垣

[題詞](正述心緒)

海石榴市之  八十衢尓  立平之  結紐乎  解巻惜毛

海石榴市の 八十の街に 立ち平し 結びし紐を 解かまく惜しも 

つばいちの やそのちまたに たちならし むすびしひもを とかまくをしも
・・・・・・・・・・
海石榴市の幾つもに別れ交わる辻道に立って

夜通し踊った歌垣で

契って結びあった紐を解くのはとても惜しい

腕に結んだあの人だけの紐だから
・・・・・・・・・・
<海石榴(つばき)は山茶花(さざんか)のこと。
市は山人たちが、山茶花の杖をついて来て鎮魂していく所でもあり、昔は市で結婚が行われたと伝えられている。他国の男女どうしが一夜を共にし、別れるときに結んでくれた紐を、解くのが惜しいと歌っている。>
* 海石榴市(つばいち):奈良県桜井市金屋付近にあった古代の大規模な市場。主な街道がこの地で交わっていた。
* 「ま‐く」推量の助動詞「む」のク語法。上代語》…だろうこと。…しようとすること。




2952 枕詞,女歌

[題詞](正述心緒)

吾<齡>之  衰去者  白細布之  袖乃<狎>尓思  君乎母准其念

吾が命の 衰へぬれば 白栲の 袖のなれにし 君をしぞ思ふ 

わがいのちの おとろへぬれば [しろたへの] そでのなれにし きみをしぞおもふ
・・・・・・・・・・
歳を重ねて衰えても

むかし交わした袖をみて

長年なれ親しんだあなたを

今も思い出されてなりません
・・・・・・・・・・



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