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寄物陳思 2964 女歌,衣 [題詞]寄物陳思 如是耳 在家流君乎 衣尓有者 下毛将著跡 <吾>念有家留 かくのみに ありけるきみを きぬにあらば したにもきむと わがおもへりける ・・・・・・・・・・・
このようにお慕いするあなた 好きで好きでたまらないから 人目につかないように あなたを いつも大事な赤絹下着にして 着ているでしょう わたしは ・・・・・・・・・・・ 2965 女歌,怨,序詞,衣 [題詞](寄物陳思) 橡之 袷衣 裏尓為者 吾将強八方 君之不来座 [つるはみの あはせのころも うらにせば] われしひめやも きみがきまさぬ ・・・・・・・・・・・
橡染めの袷の着物を裏返すようですね もう無理に逢いたいとは言いません 愛情が失せて来ないのなら ・・・・・・・・・・・ サ2966 衣,序詞 [題詞](寄物陳思) 紅 薄染衣 淺尓 相見之人尓 戀比日可聞 [くれなゐの うすそめころも あさらかに] あひみしひとに こふるころかも ・・・・・・・・・・・
* 「薄染め」は、染め色の名。紅に染めた衣の色が薄いように ほんの行きずりに遊んだ女だが なぜか恋しく思われる今日このごろであるよ ・・・・・・・・・・・ * 「浅らか」は、形容動詞連用形。 薄いさま。浅いさま。 * 「し」は過去の助動詞「き」の連体形。 * 「かも」は詠嘆の終助詞。 2967 形見,衣 [題詞](寄物陳思) 年之經者 見管偲登 妹之言思 衣乃<縫>目 見者哀裳 としのへば みつつしのへと いもがいひし ころものぬひめ みればかなしも ・・・・・・・・・・・
年を経て再び見れば懐かしいでしょうと言った妻 古着の縫い目を見れば亡き妻が偲ばれて悲しい ・・・・・・・・・・・ 2968 衣,序詞 [題詞](寄物陳思) 橡之 一重衣 裏毛無 将有兒故 戀渡可聞 [つるはみの ひとへのころも うらもなく] あるらむこゆゑ こひわたるかも ・・・・・・・・・・・
橡染の一重の衣に裏地がないように あの娘の心も純真だから よけいに恋しい ・・・・・・・・・・・ 2969 衣,枕詞 [題詞](寄物陳思) 解衣之 念乱而 雖戀 何之故其跡 問人毛無 [とききぬの] おもひみだれて こふれども なにのゆゑぞと とふひともなし ・・・・・・・・・・・
解き衣のように私の心は思いに乱れる 恋しても恋しても どうしても私の元に通う人はいない ・・・・・・・・・・・ サ2970 衣,序詞 [題詞](寄物陳思) 桃花褐 淺等乃衣 淺尓 念而妹尓 将相物香裳 [ももそめの あさらのころも あさらかに] おもひていもに あはむものかも ・・・・・・・・・・・
* 「桃染め」は、うすい紅色。桃色に染めた淡色の衣のような そんな軽い気持ちだけで あなたに逢っているのではありません ・・・・・・・・・・・ * 「浅ら」は名詞。色の淡いさま。 * 「浅らかに」は、形容動詞で思慮の足りないさま。 * 「む」は意志の助動詞。 * 「ものかも」は、形式名詞「もの」に詠嘆の終助詞「かも」付いたもので、疑問ないし反語の意味を表す。 サ2971 枕詞,序詞,衣 [題詞](寄物陳思) 大王之 塩焼海部乃 藤衣 穢者雖為 弥希将見毛 [おほきみの しほやくあまの [ふぢころも] なれはすれども いやめづらしも ・・・・・・・・・・・
* 「ふぢ‐ごろも」藤衣天皇に献上する塩を焼く海女の藤布の衣 着慣れればよいものなのだろう ・・・・・ 着慣れた藤衣のような古女房は 少し強いけれども良いものなのさ ・・・・・・・・・・・ ・藤づるの皮の繊維で織った粗末な衣服。 ・序詞として用いて、織り目が粗い意から「間遠に」に、衣のなれる意から「馴れる」に、衣を織るの同音から「折れる」にそれぞれかかる。 * 「いやめづらしも」ひとしお心ひかれる、面白い。 2972 衣,序詞,女歌,不安 [題詞](寄物陳思) 赤帛之 純裏衣 長欲 我念君之 不所見比者鴨 [あかきぬの ひたうらのきぬ ながくほり] あがおもふきみが みえぬころかも ・・・・・・・・・・・
光沢豊かな赤絹(モミ)のついた胴裏の衣みたいに 長い間いつも欲しいと願う そのように思い慕うあなた様はいらっしゃいません この頃 ・・・・・・・・・・・ 2973 枕詞,後朝,紐 [題詞](寄物陳思) 真玉就 越乞兼而 結鶴 言下紐之 <所>解日有米也 [またまつく] をちこちかねて むすびつる わがしたびもの とくるひあらめや ・・・・・・・・・・・
将来と現在を結びつけるように 私の下着の紐が解ける日があるのでしょうか こうして今朝は結び合っても ・・・・・・・・・・・ 2974 帯 [題詞](寄物陳思) 紫 帶之結毛 解毛不見 本名也妹尓 戀度南 むらさきの おびのむすびも ときもみず もとなやいもに こひわたりなむ ・・・・・・・・・・・
紫染めの帯の結び目を解くこともなく みだりにあの娘に片思いするだけだなあ ・・・・・ むらさき染めの帯の結び目さえ解くこともなく ただ いたずらにあの子に恋ひ焦がれることになるのか ・・・・・・・・・・・ サ2975 紐 [題詞](寄物陳思) 高麗錦 紐之結毛 解不放 齊而待杼 驗無可聞 [こまにしき] ひものむすびも ときさけず いはひてまてど しるしなきかも ・・・・・・・・・・・
* 「高麗錦」 高麗の錦で作った紐。高麗風の高級で美しい紐。貞操を守り紐の結び目を解かずに 斎って待っているのに 夫が私の元に来る験はない どうなっているのかしら あなた ・・・・・・・・・・・ 紐の結び目を解かずに固く操を守り待っているのに「験なきかも」と、その効果が無いことを悲しんでいる女の歌。 |
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