ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

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3531 東歌,相聞,枕詞,恋,恨

[題詞]

伊母乎許曽 安比美尓許思可 麻欲婢吉能 与許夜麻敝呂能 思之奈須於母敝流

妹をこそ 相見に来しか 眉引きの 横山辺ろの 獣なす思へる 

いもをこそ あひみにこしか [まよびきの] よこやまへろの ししなすおもへる
・・・・・・・・・・・
妻に逢いたいばかりに来ている

こうしていると

長く続いている丘陵に潜む

けものなのか わたしは
・・・・・・・・・・・
* 「まよびき‐の」[枕]低く平らな稜線のようすが眉の形に似るところから、「横山」にかかる。
* 「獣・なす」猪・鹿など食用になる獣・のように(接尾)。



3532 東歌,相聞,序詞,恋,望郷

[題詞]

波流能野尓 久佐波牟古麻能 久知夜麻受 安乎思努布良武 伊敝乃兒呂波母

春の野に 草食む駒の 口やまず 吾を偲ふらむ 家の子ろはも 

[はるののに くさはむこまの くちやまず] あをしのふらむ いへのころはも
・・・・・・・・・・・
春の野で草を食む

若い元気な馬

その口がいつも動いているように

私の妻もいつも私のことを

思っているのだろうな 
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サ3533 東歌,相聞,恋

[題詞]

比登乃兒乃 可奈思家之太波 々麻渚杼里 安奈由牟古麻能 乎之家口母奈思

人の子の 愛しけしだは 浜洲鳥 足悩む駒の 惜しけくもなし 

ひとのこの かなしけしだは [はますどり] あなゆむこまの をしけくもなし
・・・・・・・・・・・
愛しい娘に逢いに行くときは

歩行に難儀する大事な馬のことさえ

惜しいなどと思いやるまはない
・・・・・・・・・・・
* 「はますどり」(枕詞) 渚にいる鳥の歩き方から、「足悩(あなゆ)む」にかかる。
* 「あなゆむ足悩む」は、「なゆむ」=「なやむ」上代東国方言。歩行に難儀する。
* 「しだ」 は、上代語、「行きしな」「帰りしな」の「しな」の古語。とき・ころ。
* 「惜しけく」は、形容詞「惜し」のク語法。惜しいこと。




3534 東歌,相聞,別離,望郷,出発

[題詞]

安可胡麻我 可度弖乎思都々 伊弖可天尓 世之乎見多弖思 伊敝能兒良波母

赤駒が 門出をしつつ 出でかてに せしを見立てし 家の子らはも 

あかごまが かどでをしつつ いでかてに せしをみたてし いへのこらはも
・・・・・・・・・・・
赤駒に乗って門出をしょうとするが

門のところで 出ようとしても

道を狭くしてしまう

旅立ちを見送る家人達よ 
・・・・・・・・・・・
* 「いでかてに」「連語」「いでかつ」に打消しの助動詞の古い連用形の「に」が付いた語。
* 「かて」は「難し・かたし」の語幹と混同して用いられるようになる。出ることをためらって。出にくく。
* 「見立」は、人の旅立つのを見送る。




3535 東歌,相聞,恋,慰撫

[題詞]

於能我乎遠 於保尓奈於毛比曽 尓波尓多知 恵麻須我可良尓 古麻尓安布毛能乎

己が命を おほにな思ひそ 庭に立ち 笑ますがからに 駒に逢ふものを 

おのがをを おほになおもひそ にはにたち ゑますがからに こまにあふものを
・・・・・・・・・・・
自分の命をいい加減に思いますな

庭であなたが微笑まれるだけで

私は馬に乗って逢いに行きますのに
・・・・・
ご自分を粗末になさらないでください

世の庭に立って

あなたが微笑まれるだけで

無数の騎馬武者が馳せ参じることでしょう
・・・・・・・・・・・



3536 東歌,相聞,女歌,恨,恋,序詞

[題詞]

安加胡麻乎 宇知弖左乎妣吉 己許呂妣吉 伊可奈流勢奈可 和我理許武等伊布

赤駒を 打ちてさ緒引き 心引き いかなる背なか 吾がり来むと言ふ 

[あかごまを うちてさをびき こころひき] いかなるせなか わがりこむといふ
・・・・・・・・・・・
赤駒を鞭打って

手綱引き 心引き

どんな殿方が

私の元にお見えになるのかしら
・・・・・・・・・・・
* 「がり」は、〔接尾〕(「が‐あり」または「か(処)‐あり」の変化した語)代名詞または人を表わす名詞に付き、その人の許(もと)に、その人の所に、の意を表わす。
* 「心引き」好意を寄せること。



3537 東歌,相聞,異伝,序詞,恋

[題詞]

久敝胡之尓 武藝波武古宇馬能 波都々々尓 安比見之兒良之 安夜尓可奈思母

くへ越しに 麦食む小馬の はつはつに 相見し子らし あやに愛しも 

[くへごしに むぎはむこうまの] はつはつに あひみしこらし あやにかなしも
・・・・・・・・・・・
柵越しにわずかに麦を食う小馬のように

ちらりとだけ会ったあの娘が

心に残って いとしくてたまらない
・・・・・
馬柵越しに若い馬が麦を食むように

初めて肌を触れ合ったあの娘が愛しい
・・・・・・・・・・・
* 「はつはつに」は、ほんのわずかに、の意。



3537S 東歌,相聞,異伝,恋,序詞


[題詞]或本歌曰

宇麻勢胡之 牟伎波武古麻能 波都々々尓 仁必波太布礼思 古呂之可奈思母

馬柵越し 麦食む駒の はつはつに 新肌触れし 子ろし愛しも 

[うませごし むぎはむこまの はつはつに] にひはだふれし ころしかなしも
・・・・・・・・・・・
柵越しに馬が麦を食べるように

ちらっとだけ会ったあの娘のことが

とてもいとおしい
・・・・・・・・・・・



サ3538 東歌,相聞,異伝,うわさ,恋

[題詞]
[左注]或本歌發句曰 乎波夜之尓 古麻乎波左佐氣

比呂波之乎 宇馬古思我祢弖 己許呂能未 伊母我理夜里弖 和波己許尓思天

広橋を 馬越しがねて 心のみ 妹がり遣りて 吾はここにして 

ひろはしを うまこしがねて こころのみ いもがりやりて わはここにして
・・・・・・・・・・・
ここの飛び石橋は離れすぎていて

馬も渡りかねている

だから馬に元気の出る餌を今食わせているんだ

私の恋心だけを先に愛しいあなたの許へ遣って

私はここにいて動けないでいるけれども

もう少しの辛抱だよ 

待っていてね
・・・・・・・・・・・
* 「ひろはし」〔名〕幅の広い橋。一説に、間を広くとって石を置き並べた石橋。
* 「越し」は、(四動)「越す」の連用形。
* 「がね」(接助)は、願望・禁止・命令・意志などの理由目的を表す。
* 「ここに‐して」;
* 「ここに」(副詞)は、この時に。この場合に。
* 「し」は、ある状態にある意を表すサ変動詞「す」の連用形。
  ここにいて。ここにあって。
* 「て」(接助)は、原因・理由を表す。・・のために。・・ので。
  逆接の条件を表すとすれば、・・のに。・・けれども。
* 「のみ」(副助)は、限定・強調の意を表す。とりわけ・・だけ、・・ばかり。
* 「がり」(許)<接尾>。「かあり(所在)」の略「かり」の連濁。
(その人の)許に、(その人の)居る所へ。
常に訪れる人のいる場所についていう。


3538S 東歌,相聞,異伝,恋

[題詞]或本歌發句曰

乎波夜之尓 古麻乎波左佐氣

小林に 駒を馳ささげ 

をばやしに こまをはささげ
・・・・・・・・・・・
林の中に駒を駆けさせて
・・・・・・・・・・・
* 「を」接頭。
* 「馳ささげ」馬を自在に走らせて。



3539 東歌,相聞,序詞,恋

[題詞]

安受乃宇敝尓 古馬乎都奈伎弖 安夜抱可等 比等豆麻古呂乎 伊吉尓和我須流

あずの上に 駒を繋ぎて 危ほかど 人妻子ろを 息に吾がする 

あずのうへに こまをつなぎて あやほかど ひとづまころを いきにわがする
・・・・・・・・・・・
崩れそうな崖の上を馬を繋ぐように

危うく不安だが

あの人妻に命懸けになって

俺は呼吸もできないほどでいる
・・・・・・・・・・・
* 「息にわがする」=命をかけて。



3540 東歌,相聞,群馬県,恋

[題詞]

左和多里能 手兒尓伊由伎安比 安可胡麻我 安我伎乎波夜未 許等登波受伎奴

左和多里の 手児にい行き逢ひ 赤駒が 足掻きを速み 言問はず来ぬ 

さわたりの てごにいゆきあひ あかごまが あがきをはやみ こととはずきぬ
・・・・・・・・・・・
左和多里の娘に会いに行ったのに

この赤毛馬は足が速いから

ろくに話も出来なかった
・・・・・・・・・・・



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