ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

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3803雑歌,歌物語,密会,婚姻,女歌,人目,作者:娘子

[題詞]
昔者有壮士與美女也[姓名未詳] 昔 男と美女がいた(その姓名は未だ詳しからず)。
不告二親竊為交接  両親に告げないまま密かに男女の交わりを行った
於時娘子之意欲親令知 その時、娘は親に二人の関係を知らせようと思った
因作歌詠送與其夫 そこで、歌を作ってその恋人に送り与えた

歌曰

隠耳 戀<者>辛苦 山葉従 出来月之 顕者如何

隠りのみ 恋ふれば苦し 山の端ゆ 出でくる月の 顕さばいかに 

こもりのみ こふればくるし やまのはゆ いでくるつきの あらはさばいかに
・・・・・・・・・・・
親に隠れて貴方に恋しているので苦しい

山の端から出てくる月のように

あからさまに知らせたらどうでしょうか
・・・・・・・・・・・

 

3804雑歌,歌物語,悲別,兵庫,挽歌,恨

[題詞]
昔者有壮士 昔 男がいた
新成婚礼也 新たに婚礼を行った
未經幾時忽為驛使被遣遠境  未だ幾らも経たない時に、急に駅使に任じられ、遠境に遣わされた
公事有限會期無日 公の仕事には規定があり私事で会う日は無い
於是娘子 そこで娘は
感慟悽愴沈臥疾エ 嘆き悲しみ病の床に伏した
累<年>之後壮士還来覆命既了 年を重ねた後に男が帰り任務完了の報告を既に終えた
乃詣相視而娘子之姿容疲羸甚異言語哽咽 そして娘の処来て互いに姿を見ると、娘の姿 顔形はやつれ果てて言葉はむせぶばかりであった
于時壮士哀嘆流涙裁歌口号  その時男は哀嘆の涙を流し歌を作り口ずさんだ

其歌一首

如是耳尓 有家流物乎 猪名川之 奥乎深目而 吾念有来

かくのみに ありけるものを 猪名川の 沖を深めて 吾が思へりける 

かくのみに ありけるものを ゐながはの おきをふかめて わがもへりける
・・・・・・・・・・・
仕事にかまけていても忘れたことはない

あなたがここにいると思えばこそやれた

猪名川の川底より深い悲しさ 

遠い沖を見るより辛かった

ずっとそばに居たかった

もうどこにも行かないからね
・・・・・・・・・・・



3805雑歌,枕詞,歌物語,女歌,恋,悲別,作者:娘子

[題詞]娘子臥聞夫君之歌従枕擧頭應聲和歌一首

[原文]烏玉之 黒髪所<沾>而 沫雪之 零也来座 幾許戀者

ぬばたまの 黒髪濡れて 沫雪の 降るにや来ます ここだ恋ふれば 

[ぬばたまの] くろかみぬれて あわゆきの ふるにやきます ここだこふれば
・・・・・・・・・・・
黒髪は濡れて

沫雪が降る

それでも貴方来ました

私がこれほどに慕っていたから
・・・・・・・・・・・



3806雑歌,歌物語,密会,結婚,墳墓,人目,女歌,恋,伝承,作者:娘子

[題詞]

[原文]事之有者 小泊瀬山乃 石城尓母 隠者共尓 莫思吾背

事しあらば 小泊瀬山の 石城にも 隠らばともに な思ひそ吾が背 

ことしあらば をばつせやまの いはきにも こもらばともに なおもひそわがせ
・・・・・・・・・・・
もし 何かがあって

小泊瀬山のお墓に入ることがあるなら

貴方と二人一緒です

そんなに色々と心配しないで

私の貴方
・・・・・・・・・・・



サ3807雑歌,歌物語,伝承,福島県,葛城王,女歌,橘諸兄,恋,序詞,作者:采女

[題詞]
[左注]右の歌は、伝へて云はく、「葛城王、陸奥の国に遣はさえける時に、国司の祇承、緩怠にあること異にはなはだし。時に、王の意悦びずして、怒りの色面に顕れぬ。飲饌を設くといへども、あへて宴楽せず。ここに前の采女あり。風流の娘子なり。左手に觴を捧げ、右手に水を持ち、王の膝を撃ちて、この歌を詠む。すなわち、王の意解け悦びて、楽飲すること終日なり」といふ。


安積香山 影副所見 山井之 淺心乎 吾念莫國

安積山 影さへ見ゆる 山の井の 浅き心を 吾が思はなくに 

[あさかやま かげさへみゆる やまのゐの] あさきこころを わがおもはなくに
・・・・・・・・・・・
安積山の影が写る泉のような浅い心で

貴方ををおもてなししょうとは

私は思わない

国の誰がそう思うとも
・・・・・・・・・・・
* 「安積山」は、福島郡山市の北部にある山。
* 「山の井」は、湧水がたまって、山中に自然にできた井戸。
* 「浅き」は、程度が軽いこと。
* 「吾が思はなくに」は、名詞「吾」、
* 「が」主格の格助詞。 
* 「思は」ハ行四段活用動詞「思ふ」の未然形、
* 「なく」打消の助動詞「ず」のク語法未然形、
 「ク語法」。「〜なく」 連体形の「ぬ」に「あく」を加えて名詞化する、和歌では動詞に付けて助詞「に」を添え、「飽かなくに」「思はなくに」などと遣うことが多い。
* 「に」逆接の接続助詞。 
(参照)http://blogs.yahoo.co.jp/rasa_20/54355559.html



3808雑歌,歌物語,伝承,歌垣,野遊び,妻讃美,住吉,大阪

[題詞]

墨江之 小集樂尓出而 寤尓毛 己妻尚乎 鏡登見津藻

住吉の 小集楽に出でて うつつにも おの妻すらを 鏡と見つも 

すみのえの をづめにいでて うつつにも おのづますらを かがみとみつも
・・・・・・・・・・・
墨江のちょっとした野良遊び

大勢寄った人の中でさえ

夢にもうつつにも自分の妻が

鏡のように輝いていると思えたよ
・・・・・・・・・・・

[左注]右傳云 昔者鄙人 姓名未詳也 于時郷里男女衆集野遊 是會集之中有鄙人 夫婦 其婦容姿端正秀於衆諸 乃彼鄙人之意弥増愛妻之情 而作斯歌賛嘆美皃也
右は伝えて云うに「昔 (鄙と 人ひと)田舎者がいた。姓名は未だ詳しくは判らない。時に、里の男女が寄り集まって野遊びをした。この集まった人々の中に田舎者の夫婦がいた。その妻の容姿の美しさは衆諸(もろひと)より秀でていた。そこで、その田舎者は、さらに妻を愛でる気持ちが増さり、そこでこの歌を作って、妻の美貌を賛嘆した」という。



サ3809雑歌,歌物語,伝承,女歌,恨,失恋

[題詞]

商變 領為跡之御法 有者許曽 吾下衣 反賜米

商返し めすとの御法 あらばこそ 吾が下衣 返し給はめ 

あきかへし めすとのみのり あらばこそ あがしたごろも かへしたまはめ
・・・・・・・・・・・
買った品さえ事情次第で

商売がなかったことを許すという

御法があるのだから

貴方が抱いた下衣に包んだ私の体や思いを

元のようにして返してくださいな
・・・・・・・・・・・
* 「商返し」は、「借金は全部御破算にして、担保は全部持ち主に返すように」という、 「領為(めす・れい)との御法」状況の変化に基づいて大切な品物の返還要求ができるという法令。つまり徳政令。




3810雑歌,歌物語,伝承,恨,失恋,女歌

[題詞]

味飯乎 水尓醸成 吾待之 代者曽<无> 直尓之不有者

味飯を 水に醸みなし 吾が待ちし かひはかつてなし 直にしあらねば 

うまいひを みづにかみなし わがまちし かひはかつてなし ただにしあらねば
・・・・・・・・・・・
上等な飯を水と共に口醸みして

私が待っていた酒が出来上がる時に

貴方が現れないのでは

私が待っていた甲斐がまったくありませんよ
・・・・・・・・・・・



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