ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

・万葉集(〃)

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3881雑歌,富山,転用,女歌,恋愛,民謡,歌謡

[題詞]越中國歌四首

大野路者 繁道森○ 之氣久登毛 君志通者 ○者廣計武

大野道は 茂道茂路 茂くとも 君し通はば 道は広けむ 

おほのぢは しげちしげみち しげくとも きみしかよはば みちはひろけむ
大野の路は草木の茂った道だけど

貴方が私の許に通うなら

道は広がり通り易くなるでしょう



3882雑歌,富山,民謡,歌謡,旋頭歌

[題詞](越中國歌四首)

澁谿乃 二上山尓 鷲曽子産跡云 指羽尓毛 君之御為尓 鷲曽子生跡云

渋谿の 二上山に 鷲ぞ子産むといふ 翳にも 君のみために 鷲ぞ子産むといふ 

しぶたにの ふたがみやまに わしぞこむといふ さしはにも きみのみために わしぞこむといふ
渋谷の二上山で鷲が子を産むと云う

羽で國守さまに差しかける翳(さしは)を作ろうと
 
鷲が子を産むと云う
* 「翳にも」 かげ にも 日向(ひなた)にも。人に知られない面でも、表立った面でも。
* 「さしは(翳)」は貴族に差し掛ける柄の長い団扇・



3883雑歌,越後,新潟,神事,歌謡

[題詞](越中國歌四首)

伊夜彦 於能礼神佐備 青雲乃 田名引日<須>良 X曽保零 [一云 安奈尓可武佐備]

弥彦 おのれ神さび 青雲の たなびく日すら 小雨そほ降る 
[一云 あなに神さび]

いやひこ おのれかむさび あをくもの たなびくひすら こさめそほふる [あなにかむさび]
弥彦山は山自身が神々しく

青雲が棚引く日でも小雨がそほ降る
[まことに神々しく]



3884雑歌,越後,新潟,仏足石歌体,神事,歌謡

[題詞](越中國歌四首)

伊夜彦 神乃布本 今日良毛加 鹿乃伏<良>武 皮服著而 角附奈我良

弥彦 神の麓に 今日らもか 鹿の伏すらむ 皮衣着て 角つきながら 

いやひこ かみのふもとに けふらもか しかのふすらむ かはころもきて,つのつきながら
弥彦の神の山の麓に

今日も鹿が伏しているでしょうか

皮衣を着て角をつけたまま



サ3885雑歌,作者:乞食者,寿歌,枕詞,歌謡

[題詞]乞食者<詠>二首

伊刀古ーいとこー麗しい人。上代、親しい者への呼びかけの語で、親しい人、愛(いと)しい者、の意。
名兄乃君ー汝背の君ーなせのきみー名高い君
居々而ー居り居りてーをりをりてー大勢おいでだ
物尓伊行跡波ー物にい行くとはーものにいゆくとはーどこかに行くとは
韓國乃ー韓国のーからくにのー韓国にいる
虎神乎ー虎といふ神をーとらといふかみをー虎という神を
生取尓ー生け捕りにーいけどりにー生け捕りにして。他動詞の「生く」(生かす意)は、下二段活用(生け-生け-生く-生くる-生くれ-生けよ)。
八頭取持来ー八つ捕り持ち来ーやつとりもちきー八頭も捕まえて来て
其皮乎ーその皮をーそのかはをーその皮を
多々弥尓刺ー畳に刺しーたたみにさしー敷物にして
八重疊ー[やへたたみ]ー八重に重ねる
平群乃山尓ー平群の山にーへぐりのやまにー平群の山〃に
四月ー四月とーうづきとー四月と
与五月間尓ー五月との間にーさつきとのまにー五月の間に
藥猟ーくすりがりー薬狩に
仕流時尓ー仕ふる時にーつかふるときにー奉仕するときに
足引乃ー[あしひきの]ー
此片山尓ーこの片山にーこのかたやまにーこの片山に
二立ー二つ立つーふたつたつー二本立っている
伊智比何本尓ー櫟が本にーいちひがもとにー櫟の木の下で
梓弓ー[あづさゆみ]ー
八多婆佐弥ー八つ手挟みーやつたばさみー梓弓を八つも手に持って
比米加夫良ーひめ鏑ーひめかぶらーひめ鏑を
八多婆左弥ー八つ手挟みーやつたばさみー八つも手に持って
完待跡ー獣待つとーししまつとー鹿を待ち
吾居時尓ー我が居る時にーわがをるときにー私がいる時に
佐男鹿乃ーさを鹿のーさをしかのー牡鹿が 
来<立>嘆久ー来立ち嘆かくーきたちなげかくーやって来て嘆くには
頓尓ーたちまちにー間もなく
吾可死ー吾れは死ぬべしーわれはしぬべしー私は死ぬでしょう
王尓ー大君にーおほきみにーそして大君に
吾仕牟ー吾れは仕へむーわれはつかへむーお仕えしましょう
吾角者ー吾が角はーわがつのはー角は
御笠乃<波>夜詩ーみ笠のはやしーみかさのはやしー御笠の飾りに
吾耳者ー吾が耳はーわがみみはー耳は
御墨坩ーみ墨の坩ーみすみつほー御墨坩に
吾目良波ー吾が目らはーわがめらはー目は
真墨乃鏡ーますみの鏡ーますみのかがみー真澄鏡に
吾爪者ー吾が爪はーわがつめはー爪は
御弓之弓波受ーみ弓の弓弭ーみゆみのゆはずー御弓の弓弭に
吾毛等者ー吾が毛らはーわがけらはー毛は
御筆波夜斯ーみ筆はやしーみふみてはやしー御筆の飾りに
吾皮者ー吾が皮はーわがかははー皮は
御箱皮尓ーみ箱の皮にーみはこのかはにー御箱の皮に
吾完者ー吾が肉はーわがししはー肉は
御奈麻須波夜志ーみ膾はやしーみなますはやしー御膾の材料に
吾伎毛母ー吾が肝もーわがきももー肝も
御奈麻須波夜之ーみ膾はやしーみなますはやしー御膾の材料に
吾美義波ー吾がみげはーわがみげはーもつは
御塩乃波夜之ーみ塩のはやしーみしほのはやしー御塩つけの材料に
耆矣奴ー老いたる奴ーおいたるやつこー年老いた奴の
吾身一尓ー吾が身一つにーあがみひとつにー私の体一つに
七重花佐久ー七重花咲くーななへはなさくー七重の花が咲く
八重花生跡ー八重花咲くとーやへはなさくとー八重の花が咲くと
白賞尼ー申しはやさねーまをしはやさねー大君に申し上げて誉めてください
<白賞尼>ー申しはやさねーまをしはやさねーほめたたえて下さい
[左注]右歌一首為鹿述痛作之也

* 「乞食者」
金銭や食べ物を他人からもらって生活する者。社会の落後者としてのイメージがあるが、歴史的には、宗教活動や芸能活動として行われたものや、民間信仰、風習上行われたものもあった。日本の例でいえば、山伏、虚無僧(こむそう)や一般の僧侶(そうりょ)も行った托鉢(たくはつ)などは、単に生活できないための対策としてではなく、宗教活動の意味をもったものの例である。また、万歳、鳥追い、獅子舞(ししまい)、人形回しなどの門付(かどづけ)芸人は、庶民の芸能活動として行われた例である。さらに、物ごいをすると、ある病気が治るとか健康でいることができるといった伝承などは、民間信仰、風習の例である。<出典・転載[Yahoo!百科事典・執筆者:真田 是]より。>
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* 「ほかい」は「祝言」とも表記することもあり、物事を口上や演技で寿ぎ、それで対価を得る遊行芸人の意味合いを持つ。この二首は、遊行芸人による門付けの寿ぎの歌と解釈される。
 ところが、奈良時代の「乞食」の本来の読みである「こつじき」と訓みますと、この「乞食者の詠む歌」は、仏法の十二部経の内の本生(ほんじょう)経や行基菩薩に関係するようなものになり、非常に仏教色の強い歌として歌の性格を変えます。つまり、法隆寺の玉虫厨子で見られるような奈良時代の人々には馴染みある薩埵王子や雪山王子の因縁物語を民衆に対して、身近なもので判りやすい形に置きなおしたと考えることも可能です。「乞食者の詠む歌」の世界は、根本仏法の精神である他生を救うために自らの生を与えたり、国王でありながら衆生救済の真理を得るためなら奴隷になると云う姿に重なって来ます。
<転載[竹取翁と万葉集のお勉強]より。>


サ3886雑歌,作者:乞食者,寿歌,歌謡,枕詞

[題詞](乞食者<詠>二首)

忍照八ー[おしてるや]ー[枕]「押し照る」に同じ。
難波乃小江尓ー難波の小江にーなにはのをえにー難波の入江に
廬作ー廬作りーいほつくりー小屋を作って「いおり」に同じ。
難麻理弖居ー隠りて居るーなまりてをるー隠れて住む
葦河尓乎ー葦蟹をーあしがにをー葦蟹の私を
王召跡ー大君召すとーおほきみめすとー大君が召されるとは
何為牟尓ー何せむにーなにせむにーどうしてなのか
吾乎召良米夜ー吾を召すらめやーわをめすらめやー私が召されるなんて
明久ー明けくーあきらけくーはっきりと
<吾>知事乎ー吾が知ることをーわがしることをー私の出来ることで
歌人跡ー歌人とーうたひととー歌うたいとしてなのか
和乎召良米夜ー吾を召すらめやーわをめすらめやー召されるのか
笛吹跡ー笛吹きとーふえふきとー笛吹く人として
和乎召良米夜ー吾を召すらめやーわをめすらめやー召されるのか
琴引跡ー琴弾きとーことひきとー琴を弾く者として
和乎召良米夜ー吾を召すらめやーわをめすらめやー召されるのか
彼<此>毛ーかもかくもーとにもかく
<命>受牟跡ー命受けむとーみことうけむとー仰せをお受けしようと
今日々々跡ー今日今日とーけふけふとー今日の今日
飛鳥尓到ー飛鳥に至りーあすかにいたりー飛鳥に至り
雖<置>ー置くともーおくともー置いても
<々>勿尓到雖不策ー置勿に至りーおくなにいたりー置勿に至り
彼<此>毛ーつかねどもーつかないのに
「ども」[接助]《接続助詞「ど」+係助詞「も」から》活用語の已然形に付く。1 逆接の確定条件を表す。…けれども。…だが。
都久怒尓到ー都久野に至りーつくのにいたりー都久野に至り
東ー東のーひむがしのー東の
中門由ー中の御門ゆーなかのみかどゆー中の御門から
参納来弖ー参入り来てーまゐりきてー参り入って
命受例婆ー命受くればーみことうくればー仰せを受け取ると
馬尓己曽ー馬にこそーうまにこそー馬に使う
布毛太志可久物ーふもだしかくものー掛絆をかけられ
牛尓己曽ー牛にこそーうしにこそー牛に使う
鼻縄波久例ー鼻縄はくれーはなづなはくれー鼻縄をつけられ
足引乃ー[あしひきの]ー枕詞
此片山乃ーこの片山のーこのかたやまのーこの片山の
毛武尓礼乎ーもむ楡をーもむにれをー「百(もも)」で、多くのニレの木の意か。
五百枝波伎垂ー五百枝剥き垂りーいほえはきたりー皮を五百枝に剥いで糸に垂らし
天光夜ー天照るやー[あまてるや]ー 枕詞
日乃異尓干ー日の異に干しーひのけにほしー照る日に毎日干して
佐比豆留夜ー[さひづるや]ー[枕]聞き取りにくいさえずり声、「から」に。
辛碓尓舂ー韓臼に搗きーからうすにつきー唐臼で搗き
庭立ー庭に立つーにはにたつー庭に据えた
<手>碓子尓舂ー手臼に搗きーてうすにつきー手臼で搗き
忍光八ー[おしてるや]ー枕詞
難波乃小江乃ー難波の小江のーなにはのをえのー難波の入り江の
始垂乎ー初垂りをーはつたりをー塩付けの最初の雫くが
辛久垂来弖ーからく垂り来てーからくたりきてー辛い汁が垂れてきて
陶人乃ー陶人のーすゑひとのー陶器人が
所作龜乎ー作れる瓶をーつくれるかめをー作った瓶に
今日徃ー今日行きてーけふゆきてー今日行って
明日取持来ー明日取り持ち来ーあすとりもちきー明日には持って来て
吾目良尓ー吾が目らにーわがめらにー私のみに
塩○給ー塩塗りたまひーしほぬりたまひー塩をお塗りになられた
<○>賞毛ーきたひはやすもーお役に立てたと
<○賞毛>ーきたひはやすもーお召しの上は褒めてくださいな
[左注]右歌一首為蟹述痛作之也



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