ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

・万葉集(〃)

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サ3886雑歌,作者:乞食者,寿歌,歌謡,枕詞

[題詞](乞食者<詠>二首)

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忍照八ー[おしてるや]ー照り輝く
難波乃小江尓ー難波の小江にーなにはのをえにー難波の入り江に
廬作ー廬作りーいほつくりー小屋を作って
難麻理弖居ー隠りて居るーなまりてをるー隠れている
葦河尓乎ー葦蟹をーあしがにをー葦蟹を
王召跡ー大君召すとーおほきみめすとー大君が召されるという
何為牟尓ー何せむにーなにせむにーどうして
吾乎召良米夜ー吾を召すらめやーわをめすらめやー私が召されるのか
明久ー明けくーあきらけくーはっきりと
<吾>知事乎ー吾が知ることをーわがしることをー自分の出来ることで
歌人跡ー歌人とーうたひととー詩を歌う人として
和乎召良米夜ー吾を召すらめやーわをめすらめやー召されるのでしょうか
笛吹跡ー笛吹きとーふえふきとー笛を吹く人として
和乎召良米夜ー吾を召すらめやーわをめすらめやー召されるのでしょうか
琴引跡ー琴弾きとーことひきとー琴を弾く人として
和乎召良米夜ー吾を召すらめやーわをめすらめやー召されるのでしょうか
彼<此>毛ーかもかくもーとにもかくにも
<命>受牟跡ー命受けむとーみことうけむとー御命令をお受けしようと
今日々々跡ー今日今日とーけふけふとー今日の今日と
飛鳥尓到ー飛鳥に至りーあすかにいたりー急遽飛鳥に至り
雖<置>ー置くともーおくともー立っているのに置くなと云う
<々>勿尓到雖不策ー置勿に至りーおくなにいたりー置勿に至り
彼<此>毛ーつかねどもーつかないけれども
「ども」[接助]《接続助詞「ど」+係助詞「も」から》活用語の已然形に付く。1 逆接の確定条件を表す。…けれども。…だが。
都久怒尓到ー都久野に至りーつくのにいたりー都久野に至り
東ー東のーひむがしのー東の
中門由ー中の御門ゆーなかのみかどゆー中の御門から
参納来弖ー参入り来てーまゐりきてー参り入って来て
命受例婆ー命受くればーみことうくればー御命令を受け取ると
馬尓己曽ー馬にこそーうまにこそー馬にこそ
布毛太志可久物ーふもだしかくものー絆は掛けるもの
牛尓己曽ー牛にこそーうしにこそー牛にこそ
鼻縄波久例ー鼻縄はくれーはなづなはくれー鼻縄はつけるものだのに
足引乃ー[あしひきの]ー
此片山乃ーこの片山のーこのかたやまのーこの片山の
毛武尓礼乎ーもむ楡をーもむにれをーもむ楡を
五百枝波伎垂ー五百枝剥き垂りーいほえはきたりー皮を五百枝に剥いで糸にして垂らし
天光夜ー天照るやあまてるや]ー
日乃異尓干ー日の異に干しーひのけにほしー照る日に毎日干して
佐比豆留夜ー[さひづるや]ー
辛碓尓舂ー韓臼に搗きーからうすにつきー唐臼で搗き
庭立ー庭に立つーにはにたつー庭に据えた
<手>碓子尓舂ー手臼に搗きーてうすにつきー手臼で搗き
忍光八ー[おしてるや]ー
難波乃小江乃ー難波の小江のーなにはのをえのー難波の入り江の
始垂乎ー初垂りをーはつたりをー塩付けの最初の雫くが垂れて
辛久垂来弖ーからく垂り来てーからくたりきてー辛い汁が垂れてきて
陶人乃ー陶人のーすゑひとのー陶器人が
所作龜乎ー作れる瓶をーつくれるかめをー作る瓶を
今日徃ー今日行きてーけふゆきてー今日行って
明日取持来ー明日取り持ち来ーあすとりもちきー明日には持って来れば
吾目良尓ー吾が目らにーわがめらにー私の目に
塩○給ー塩塗りたまひーしほぬりたまひー塩をお塗りになられた
<○>賞毛ーきたひはやすもーそのときは ほめそやそう
<○賞毛>ーきたひはやすもー褒めてくださいよ
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[左注]右歌一首為蟹述痛作之也

* 「乞食」は「ほかい」と訓みます。この「ほかい」は「祝言」とも表記する場合がありますから、物事を口上や演技で寿ぎ、それで対価を得るような意味合いとなり、ある種の遊行芸人の意味合いを持ちます。そこで、この「乞食者の詠む歌」の二首は、遊行芸人による門付けの寿ぎの歌と解釈されています。
 ところが、奈良時代の「乞食」の本来の読みである「こつじき」と訓みますと、この「乞食者の詠む歌」は、仏法の十二部経の内の本生(ほんじょう)経や行基菩薩に関係するようなものになり、非常に仏教色の強い歌として歌の性格を変えます。つまり、法隆寺の玉虫厨子で見られるような奈良時代の人々には馴染みある薩埵王子や雪山王子の因縁物語を民衆に対して、身近なもので判りやすい形に置きなおしたと考えることも可能です。「乞食者の詠む歌」の世界は、根本仏法の精神である他生を救うために自らの生を与えたり、国王でありながら衆生救済の真理を得るためなら奴隷になると云う姿に重なって来ます。
<転載[竹取翁と万葉集のお勉強]より。>






3887雑歌,宴席,恐怖,誦詠,異界

[題詞]怕物歌三首(恐怖の歌三首)

天尓有哉 神樂良能小野尓 茅草苅 々々<婆>可尓 鶉乎立毛

天にあるや ささらの小野に 茅草刈り 草刈りばかに 鶉を立つも 

あめにあるや ささらのをのに ちがやかり かやかりばかに うづらをたつも
・・・・・・・・・・・・・
天上界の神楽良の小野で茅草を刈る

草を刈っていたら鶉が突然飛び立つなんて
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16 3888雑歌,宴席,恐怖,異界,誦詠

[題詞](怕物歌三首)

奥國 領君之 <と>屋形 黄<と>乃屋形 神之門<渡>

沖つ国 うしはく君の 塗り屋形 丹塗りの屋形 神の門渡る 

おきつくに うしはくきみの ぬりやかた にぬりのやかた かみのとわたる
・・・・・・・・・・・・・
はるか沖の国を領有する君の塗屋形の船

黄に塗った屋形船が神の海峡を渡って逝く
・・・・・・・・・・・・・
* 「奥つ国」は奥津城(おはか)を、塗・黄塗の船は、異界を。
 「神の海峡を」は三途の川か。染屋形とは、棺に布を掛けた状態を示す
* 「うし‐は・く」【領く】[動カ四]《「主(うし)」として領有する意から》領地として治める。支配する。




16 3889雑歌,難訓,恐怖,宴席,誦詠

[題詞](怕物歌三首)

人魂乃 佐青有<公>之 但獨 相有之雨夜<乃> 葉非左思所念

人魂の さ青なる君が ただひとり 逢へりし雨夜の 葉非左し思ほゆ 

[ひとたまの] さをなるきみが ただひとり あへりしあまよの *******

・・・・・・・・・・・・・
雨夜の中でまっ青な顔の

四天王寺の青面金剛童子そっくりの

独りっきりの君に出逢って

震えあがって夢中で逃げまどってしまったよ
・・・・・・・・・・・・・
* 「さ」は、接頭語で、名詞・動詞・形容詞の上について、語調を整え、語彙を強める。「さ」には多くの使用法がある。
名詞について若々しい、小さい、ささやかな、
「さ・おとめ」「さ・なえ」「さ・みだれ」「さ・わらび」
形容詞を名詞に変える。愛しさ、楽しさ、など
代名詞「さあらば→さらば=そうであるなら、それならば」「さ・が・髪をとりて(竹取・子安貝)」おまえの、そう、それ、など
また 
特別な、聖なる、敬うべきというような意味合いが含まれる美称である。

* 「人魂乃 佐青有君」は、四天王寺庚申堂の青面金剛童子。
* 【左思所念】あれこれと思いめぐらす。
* 「葉非左思所念」は、「はひさししねむ」・「はひさしおもほゆ」か。
* 「は」は、移動する方角を示す、上代東国方言。・・へ。
  あれこれと思いめぐらせず。思い乱れて動き回る。  
・・・・・・・
* 以下<国語篇(その七)>より転載。
『「はひさししねむ」は、「ハ・ヒタ・チ・チネイネイ・ムフ」
HA-HITA-TI-TINEINEI-MUHU
(ha=what!,breathe;hita=move convulsively or spasmodically;ti=throw,cast;tineinei=unsettled,ready to move,confused;muhu=grope,feel after,push one's way through bushes etc.)
「何と・ぶるぶると震えが・来て・混乱して・手探りで歩き回った(ことよ)」
(「チネイネイ」の反復語尾が脱落して「チネイ」から「シネ」と、「ムフ」のH音が脱落して「ム」となった)
の転訛と解します。』
・・・・・・・

* 「さ‐し」【左思】Yahoo百科事典より。
(250?―305?) 中国、西晋(せいしん)の文人。字(あざな)は太冲(たいちゅう)。斉(せい)国臨(りんし)(山東省臨県)の出身。家柄低く容貌(ようぼう)醜かったため文学に精力を傾ける。妹芬(ふん)が武帝の貴嬪(きひん)となったため都の洛陽(らくよう)に移る。ここで10年の歳月を費やして「三都(さんと)の賦(ふ)」をつくる。時の名士たちがその序や注釈をつくって賞揚したため、上流社会は競って伝写した。そのために洛陽の紙価が高騰したという。この賦は漢の班固(はんこ)の「両都の賦」、張衡(ちょうこう)の「西京の賦」「東京の賦」「南都の賦」と同じく、主客の問答に託して蜀(しょく)、呉(ご)、魏(ぎ)の都の壮観を誇示したもの。
(この歌への関わりは置く。)



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