ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

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3941作者:平群女郎,贈答,大伴家持,恋情,女歌

[題詞](平群氏女郎贈越中守大伴宿祢家持歌十二首)

鴬能 奈久々良多尓々 宇知波米○ 夜氣波之奴等母 伎美乎之麻多武

鴬の 鳴くくら谷に うちはめて 焼けは死ぬとも 君をし待たむ 

うぐひすの なくくらたにに うちはめて やけはしぬとも きみをしまたむ
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鴬が鳴き渡る暗い峡谷で

身を填め込まれ焼け死ぬようなことになっても

霊魂となって貴方をお待ちするでしょう
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* 「は・める」〔他マ下一〕は・む〔他マ下二〕落としこむ。投げ入れる。また、身を投げる。
「うち」は接頭強意。



3942作者:平群女郎,贈答,恋情,恨,大伴家持,女歌

[題詞](平群氏女郎贈越中守大伴宿祢家持歌十二首)

麻都能波奈 花可受尓之毛 和我勢故我 於母敝良奈久尓 母登奈佐吉都追

松の花 花数にしも 吾が背子が 思へらなくに もとな咲きつつ 

まつのはな はなかずにしも わがせこが おもへらなくに もとなさきつつ
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私のことはまつの花

そんな花もあったかと貴方は思っていらっしゃる

わけもなく咲きつづけているわたし
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3943天平18年8月7日,作者:大伴家持,宴席,大伴池主

[題詞]八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌

秋田乃 穂牟伎見我○里 和我勢古我 布左多乎里家流 乎美奈敝之香物

秋の田の 穂向き見がてり 吾が背子が ふさ手折り来る をみなへしかも 

あきのたの ほむきみがてり わがせこが ふさたをりける をみなへしかも
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秋の田の稲穂の出来を見ながら

あなたが手折り束ねて来られたのですね

この女郎花は
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* 「オミナエシ」は、「をみな善し」という、上代、女子に対する親愛の情をこめた語感あってか、「女郎花・おみなえし」「いらつめばな」「佳人部為」「美人部師」「娘子部四」「娘部志」「姫部思」などと記された。
 稲の生育を調査するという仕事と対照的な雅な名称を持つオミナエシの贈り物に感激して歌にした。




3944天平18年8月7日,作者:大伴池主,愛,宴席,大伴家持

[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)

乎美奈敝之 左伎多流野邊乎 由伎米具利 吉美乎念出 多母登保里伎奴

をみなへし 咲きたる野辺を 行き廻り 君を思ひ出 た廻り来ぬ 

をみなへし さきたるのへを ゆきめぐり きみをおもひで たもとほりきぬ
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女郎花が咲いている野を

もとおりめぐっているうちに

あなたのことを思い出して

回り道をしてしまいましたよ
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3945天平18年8月7日,作者:大伴池主,枕詞,宴席,大伴家持,高岡

[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)

安吉能欲波 阿加登吉左牟之 思路多倍乃 妹之衣袖 伎牟餘之母我毛

秋の夜は 暁寒し白栲の 妹が衣手 着むよしもがも 

あきのよは あかときさむし [しろたへの] いもがころもで きむよしもがも
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越中の地では秋の夜明け頃ひとしお冷え込みます

いとしい人の衣をまとえる手立てが欲しいことです
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* 「妹が衣手着」は、自分と恋人(妻)の脱いだ衣を纏い、その衣の下で、肌を合わせて寝ること。





3946天平18年8月7日,作者:大伴池主,宴席,高岡

[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)

保登等藝須 奈伎C須疑尓之 乎加備可良 秋風吹奴 余之母安良奈久尓

霍公鳥 鳴きて過ぎにし 岡びから 秋風吹きぬ よしもあらなくに 

ほととぎす なきてすぎにし をかびから あきかぜふきぬ よしもあらなくに
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ほととぎすが鳴いて飛び去った丘の辺りから

もう冷たい秋風が吹いてきた

いとしい人の衣をまとえる手立がないというのに
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3947天平18年8月7日,作者:大伴家持,宴席,枕詞,高岡

[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)

家佐能安佐氣 秋風左牟之 登保都比等 加里我来鳴牟 等伎知可美香物

今朝の朝明 秋風寒し 遠つ人 雁が来鳴かむ 時近みかも 

けさのあさけ あきかぜさむし [とほつひと] かりがきなかむ ときちかみかも
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今朝も明け方は秋風が寒かった

雁が鳴いて来る時が近のだろう
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* 「とお‐つ‐ひと」遠つ人 [枕]
1 遠くにいる人を待つ意から、「松」「松浦(まつら)(=地名)」にかかる。
2 雁(かり)は遠くから来るので、「雁」「猟路(かりぢ)(=地名)」にかかる。
* 「遠つ人」の「つ」は現代語の「の」で、「遠くの人」。
* 「近み」の「み」は接尾語で、原因理由を表します。
* 「かも」は感動詠嘆の終助詞。



3948天平18年8月7日,作者:大伴家持,恋愛,宴席,枕詞,高岡

[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)

安麻射加流 比奈尓月歴奴 之可礼登毛 由比○之紐乎 登伎毛安氣奈久尓

天離る 鄙に月経ぬ しかれども 結ひてし紐を 解きも開けなくに 

「あまざかる」 ひなにつきへぬ しかれども ゆひてしひもを ときもあけなくに
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都から遠い高岡にやって来て随分月を経たが

妻が結んでくれた下着の紐は解いてはいない
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<記事転載[山本 瞳美「現代の結婚指輪のルーツを探る]より。>
(1)紐を解くことは性関係を持つことの象徴である(1516、3427)
(2)紐を見ることで自分を思い出してもらいたいとの気持ちが込められる(4405)
(3)紐を結んでもらった相手以外の人に紐を解かせることは浮気を意味する(3427)
(4)紐が自然に解けると結んでくれた相手から想われているとする俗信があった(4427)
(5)紐を結んだまま操を守っていれば相手と再会できると信じられていた(1516、2973)
 紐にはこのような男女の想い、意味が込められているのであるが、紐に関しての私見を述べると、紐は解く為に結ぶといえるのではないだろうか。現代の指輪に於いてはこのような行為(再会した時に互いの指輪をはずすこと)は特にないが指輪をしていることではめてくれた相手に想いを馳せるという様な役割を果たしているという点では紐と同様であるし(紐はなかなか他人の目に触れないということがあるが)指輪をはめることで他人へ自分には特定の相手がいるというアピールをすることは遠回しではあるが操を守ることに繋がると言っては過言であろうか。これが正しければ逆に指輪をはずしておいて相手がいないふりをすることは浮気をする意志があるということだろう。
 五首の歌全てが(特定の相手と再会する時まで不貞をはたらかないことを誓い合い紐を結び、)またその相手と紐を解く事を前提として詠まれていることからもそれは言えるのではないかと考えるのである。
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3949天平18年8月7日,作者:大伴池主,枕詞,恋愛,宴席,高岡

[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)

安麻射加流 比奈尓安流和礼乎 宇多我多毛 比<母>登吉佐氣○ 於毛保須良米也

天離る 鄙にある吾れを うたがたも 紐解き放けて 思ほすらめや 


[あまざかる] ひなにあるわれを うたがたも ひもときさけて おもほすらめや
・・・・・・・・・・・・
都から遠く離れた地にいる私たちを

都の奥方たちも一心に慕っておられることでしょうよ

かりそめも紐を解くなどと思うでしょうか
・・・・・・・・・・・・
* 「うたがた‐も」[副]平安時代以後「うたかたも」とも。
1 必ず。きっと。 2 (打消しや反語の表現を伴って)決して。




3950天平18年8月7日,作者:大伴家持,恋愛,望郷,宴席,高岡

[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)

伊敝尓之底 由比弖師比毛乎 登吉佐氣受 念意緒 多礼賀思良牟母

家にして 結ひてし紐を 解き放けず 思ふ心を 誰れか知らむも 

いへにして ゆひてしひもを ときさけず おもふこころを たれかしらむも
・・・・・・・・・・・・
家を旅立つ時妻が結んでくれた紐を

解き放たずに思っている

その気持ちを妻に告げたいことなど

誰も知ってはくれまいよ
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