ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

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4070天平20年,作者:大伴家持,清見,宴席,羈旅,出発,餞別,高岡

[題詞]詠庭中牛麦花歌一首

比登母等能 奈泥之故宇恵之 曽能許己呂 多礼尓見世牟等 於母比曽米家牟

一本の なでしこ植ゑし その心 誰れに見せむと 思ひ始めけむ 

ひともとの なでしこうゑし そのこころ たれにみせむと おもひそめけむ
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一本のなでしこを植えたのは

誰に見せようと思って植えたのだろうか
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* 天平20年、清見という名の国分寺僧が京に向かう時に、大伴家持が別れを惜しんで詠んだ歌という。




4071天平20年,作者:大伴家持,枕詞,宴席,高岡

[題詞]

之奈射可流 故之能吉美良等 可久之許曽 楊奈疑可豆良枳 多努之久安蘇婆米

しなざかる 越の君らと かくしこそ 柳かづらき 楽しく遊ばめ 

[しなざかる] こしのきみらと かくしこそ やなぎかづらき たのしくあそばめ
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越の国の皆さん方と

こうして 柳の葉を縵に挿して

心行くまで楽しみましょう
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4072天平20年,作者:大伴家持,叙景,高岡,枕詞,望郷

[題詞]

奴<婆>多麻能 欲和多流都奇乎 伊久欲布等 余美都追伊毛波 和礼麻都良牟曽

ぬばたまの 夜渡る月を 幾夜経と 数みつつ妹は 吾れ待つらむぞ 

[ぬばたまの] よわたるつきを いくよふと よみつついもは われまつらむぞ
・・・・・・・・・・・・
夜空を渡って行く月を眺めながら

幾夜経たかと指折り数えて

妻は私を待っていることだろう
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4073天平20年3月15日,作者:大伴池主,高岡,大伴家持,贈答,書簡,福井,恋情

[題詞]越前國掾大伴宿祢池主来贈歌三首 / 以今月十四日到来深見村 望拜彼北方常念芳徳 何日能休 兼以隣近忽増戀 加以先書云 暮春可惜 促膝未期 生別悲<兮> 夫復何言臨紙悽断奉状不備 / 三月一五日大伴宿祢池主 / 一 古人云

都奇見礼婆 於奈自久尓奈里 夜麻許曽婆 伎美我安多里乎 敝太弖多里家礼

月見れば 同じ国なり 山こそば 君があたりを 隔てたりけれ 

つきみれば おなじくになり やまこそば きみがあたりを へだてたりけれ
・・・・・・・・・・・・
こうして月を月を見ていると

この國中は一つの月が照らす同じ国です

貴方と私を隔てるものは

ただ山だけにすぎませんよ
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4074天平20年3月15日,作者:大伴池主,大伴家持,高岡,贈答,書簡,福井,恋情

[題詞](越前國掾大伴宿祢池主来贈歌三首 / 以今月十四日到来深見村 望拜彼北方常念芳徳 何日能休 兼以隣近忽増戀 加以先書云 暮春可惜 促膝未期 生別悲<兮> 夫復何言臨紙悽断奉状不備 / 三月一五日大伴宿祢池主) / 一 属物發思

櫻花 今曽盛等 雖人云 我佐不之毛 支美止之不在者

桜花 今ぞ盛りと 人は言へど 吾れは寂しも 君としあらねば 

さくらばな いまぞさかりと ひとはいへど われはさぶしも きみとしあらねば
・・・・・・・・・・・・
桜は今が盛りと人は言うけれど

私はあなたと一緒ではないから寂しい

親愛なる家持様はいつお帰りでしょうか
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4075天平20年3月15日,作者:大伴池主,大伴家持,高岡,贈答,書簡,福井,恋,怨

[題詞](越前國掾大伴宿祢池主来贈歌三首 / 以今月十四日到来深見村 望拜彼北方常念芳徳 何日能休 兼以隣近忽増戀 加以先書云 暮春可惜 促膝未期 生別悲<兮> 夫復何言臨紙悽断奉状不備 / 三月一五日大伴宿祢池主) / 一 所心歌

安必意毛波受 安流良牟伎美乎 安夜思苦毛 奈氣伎和多流香 比登能等布麻泥

相思はず あるらむ君を あやしくも 嘆きわたるか 人の問ふまで 

あひおもはず あるらむきみを あやしくも なげきわたるか ひとのとふまで
・・・・・・・・・・・・
私のことなど少しも想ってくださらない

その家持様恋しさに

人が訝り問うほどに

嘆きつづけています
・・・・・・・・・・・・



4076天平20年3月16日,作者:大伴家持,高岡,贈答,書簡,大伴池主,枕詞,恋

[題詞]越中國守大伴家持報贈歌四首 / 一 答古人云

安之比奇能 夜麻波奈久毛我 都奇見礼婆 於奈自伎佐刀乎 許己呂敝太底都

あしひきの 山はなくもが 月見れば 同じき里を 心隔てつ 

[あしひきの] やまはなくもが つきみれば おなじきさとを こころへだてつ
・・・・・・・・・・・・
山が無ければよい

月を見れば同じ里だというのに

貴方は山のせいにして

私に心を隔てておられるのです
・・・・・・・・・・・・



4077天平20年3月16日,作者:大伴家持,高岡,贈答,書簡,大伴池主,恋

[題詞](越中國守大伴家持報贈歌四首)一 答属目發思兼詠云遷<任>舊宅西北隅櫻樹

和我勢故我 布流伎可吉都能 佐<久>良婆奈 伊麻太敷布賣利 比等目見尓許祢

我が背子が 古き垣内の 桜花 いまだ含めり 一目見に来ね 

わがせこが ふるきかきつの さくらばな いまだふふめり ひとめみにこね
・・・・・・・・・・・・
親愛なる池主君が

昔住んでいらっしゃった

お屋敷の庭の桜花は

まだ蕾のままですよ

どうか一目見においで下さい
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4078天平20年3月16日,作者:大伴家持,大伴池主,高岡,贈答,書簡,恋

[題詞](越中國守大伴家持報贈歌四首)一 答所心即以古人之跡代今日之意(古人の残した歌を以て、現在の自分の心境を代弁させる、という意。)

故敷等伊布波 衣毛名豆氣多理 伊布須敝能 多豆伎母奈吉波 安<我>未奈里家利

恋ふといふは えも名付けたり 言ふすべの たづきもなきは 吾が身なりけり 

こふといふは えもなづけたり いふすべの たづきもなきは あがみなりけり
・・・・・・・・・・・・
「恋ふ」とはよくも名付けたものです

思いをどう言い表わせばよいのか

その手立ても無くて

訳も分からす苦しい吾が身

ただおそばで お話が出来ればいいのに
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4079天平20年3月16日,作者:大伴家持,贈答,叙景,大伴池主,書簡

[題詞](越中國守大伴家持報贈歌四首)一 更矚目

美之麻野尓 可須美多奈妣伎 之可須我尓 伎乃敷毛家布毛 由伎波敷里都追

三島野に 霞たなびき しかすがに 昨日も今日も 雪は降りつつ 

みしまのに かすみたなびき しかすがに きのふもけふも ゆきはふりつつ
・・・・・・・・・・・・
南に望む三島野は

霞たなびく春だというに

昨日も今日も

雪が降り続いている
・・・・・・・・・・・・
* 「しかすがに」は、然すがに  副詞「しか」+サ変動詞「す」+接続助詞「がに」からという。  そうはいうものの。そうではあるが。



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