ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

万葉集(下書き)

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サ4337;作者:有度部牛麻呂(うとべのうしまろ),防人歌、恋情,悲嘆,静岡,布勢人主

[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)
[左注]右一首上丁有度部牛麻呂 ( / 二月七日駿河國防人部領使守(さきもりぶりょうしかみ)従五位下布勢朝臣人主(ふせのあそんひとぬし)實進九日歌數廿首(提出した20首)天平勝宝7年(西暦755年)2月9日(但拙劣歌者不取載之)

美豆等<利>乃  多知能已蘇岐尓  父母尓  毛能波須價尓弖  已麻叙久夜志伎

水鳥の 立ちの急ぎに 父母に 物言はず来にて 今ぞ悔しき 

[みづとりの]  たちのいそぎに  ちちははに  ものはずけにて  いまぞくやしき

・・・・・・・・・
支度におわれて

水鳥が飛びたつように慌しく家を後にした

父母にはろくに別れも言わずじまいで

今はそれが悔やまれてならない
・・・・・・・・・
* 「水鳥の」は 「たち」の枕詞。
  水鳥が水面を飛び立つとき、慌ただしく羽音をたてる様から、「立ちの急ぎ」の比喩にも。
* 「物言ず来(け)にて」は「物いはず来(き)にて」の東国訛り。
  ろくに物も言わずに来てしまって。
* 「急ぎ」は 「急ぎ慌てること」、「支度・準備」の意を含む。


・・・・・・・
有度部牛麻呂 うとべのうしまろ 生没年未詳

駿河国の人。
名の「牛」が干支に由るのであれば、神亀二年(725)乙丑(きのとうし)の生まれと推測される。
上丁(かみつよほろ。課役を負った成年男子)。
天平勝宝七歳(755)二月、防人として筑紫に派遣される。



サ20 4338;作者:生部道麻呂,防人歌、望郷,悲別,恋情,静岡,布勢人主

[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)
[左注]右一首助丁生部道麻呂(おふしべのみちまろ)
( / 二月七日駿河國防人部領使守従五位下布勢朝臣人主實進九日歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)

多々美氣米  牟良自加已蘇乃  波奈利蘇乃  波々乎波奈例弖  由久我加奈之佐

[たたみけめ] むらじがいその はなりその] ははをはなれて ゆくがかなしさ

畳薦 牟良自が礒の 離磯の 母を離れて 行くが悲しさ 

・・・・・・・・・・・
故郷むらじが磯にある離れ岩

母と離れてゆくこの悲しさよ
・・・・・・・・・・・
* 「たたみけめ」は上代東国方言で、「むら」に掛かる枕詞。
* 「はなりそ」→「はなれそ」は、はなれいその略、名詞。陸から離れて遠く海上に突き出た磯。
上三句は「はは」を導く序詞。



サ20 4339;作者:刑部(おさかべ)虫麻呂,防人歌,静岡,布勢人主,出発,羈旅,悲別

[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)

久尓米具留  阿等利加麻氣利  由伎米具利  加比利久麻弖尓  已波比弖麻多祢

国廻る あとりかまけり 行き廻り 帰り来までに 斎ひて待たね 

くにめぐる あとりかまけり ゆきめぐり かひりくまでに いはひてまたね

・・・・・・・・・・・
季節にのって行き巡る

アトリや鴨やケリのように

私も國々を廻って必ず戻ってくるので

あたりを清め

身を慎んで待っていてくださいね
・・・・・・・・・・・
* 「帰り来」が主意。
* 「いはひ」は上代語で、慎んでまつること、忌み清めて神を祭ること。
* 「アトリ」  アトリ(花鶏、学名:Fringilla montifringilla)は、鳥綱スズメ目アトリ科アトリ属に分類される鳥類の一種。日本には冬鳥として秋にシベリア方面から渡来する。主に日本海より山形県、富山県等に飛来し、それから各地に散らばる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%AA

カモ  鴨(カモ)とはカモ目カモ科の鳥類のうち、雁に比べて体が小さく、首があまり長くなく、冬羽(繁殖羽)では雄と雌で色彩が異なるものをいう(カルガモのようにほとんど差がないものもある)。分類学上のまとまった群ではない。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%A2
ケリ  冬になると群れをつくり、田んぼや川原で見ることができます。
大型のチドリで一年中、主に水田でみることができます。カエルや昆虫などの小動物を食べています。
コチドリよりはずっとゆっくりした足取りです。
よくケリッ、ケリッと鋭い声で鳴くことから、この名前がつきました。
草地や田んぼのあぜに巣を作り、巣に近づくものは人であれ、犬であれ、空から急降下してすれすれを飛んで攻撃してきます。
http://www.wildlife.or.jp/hp/bird/syu/keri.htm
 


サ20 4340;作者:川原(かはら)虫麻呂,防人歌,出発,悲別,羈旅,,静岡,布勢人主

[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)

<等知>波々江  已波比弖麻多祢  豆久志奈流  美豆久白玉  等里弖久麻弖尓

父母え 斎ひて待たね 筑紫なる 水漬く白玉 取りて来までに 

とちははえ いはひてまたね つくしなる みづくしらたま とりてくまでに
・・・・・・・・・・
父母よ 

斎い事をして無事息災に待っていてください

筑紫の海の見事な真珠を取って帰るから
・・・・・・・・・・
* 「いはひ」は上代語で、慎んでまつること、忌み清めて神を祭ること。
* 「水漬く白玉」は、あわびか真珠貝。筑紫の海底にあるという真珠。



サ20 4341;作者:丈部足麻呂,防人歌,静岡,布勢人主,植物,地名,望郷,出発,恋情,羈旅,悲別

[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)

多知波奈能  美袁利乃佐刀尓  父乎於伎弖  道乃長道波  由伎加弖<努>加毛

橘の 美袁利の里に 父を置きて 道の長道は 行きかてのかも 

たちばなの みをりのさとに ちちをおきて みちのながちは ゆきかてのかも

・・・・・・・・・・
橘の木の多い緑の里に父を残して

長い旅路を行くのはつらいことだ
・・・・・・・・・・
* 「かて の」は・・・シガタイナァ
* 「かも」は詠嘆の終助詞。・・・デアルコトヨ



サ20 4342;作者:坂田部首麻呂,防人歌,静岡,布勢人主,出発,羈旅,悲別

[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)

麻氣波之良  寶米弖豆久礼留  等乃能其等  已麻勢波々刀自  於米加波利勢受

真木柱 ほめて造れる 殿のごと いませ母刀自 面変はりせず 

まけばしら ほめてつくれる とののごと いませははとじ おめがはりせず

・・・・・・・・・・
心を込めて立てた家の中心の柱の様に

丈夫でいて下さい母よ

お顔も変わらずに
・・・・・・・・・・
* 「まけばしら」は上代東国方言、檜の立派な柱を祝って作った、荘重で堅牢な御殿のようにの意。
* 「刀自」は古くは飲食物・神の祭りの権利を持つ戸主のことであるが、のちに戸主の役目をする主婦をいうようになった。



サ20 4343;作者:玉作部廣目,防人歌,恋情,悲別,静岡,布勢人主

[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)

和呂多比波  多比等於米保等  已比尓志弖  古米知夜須良牟  和加美可奈志母

吾ろ旅は 旅と思ほど 家にして 子持ち痩すらむ 吾が妻愛しも 
わろたびは たびとおめほど いひにして こめちやすらむ わがみかなしも


私は旅の空で気晴らしもあるだろうが

家にいて子を抱えて

気苦労な暮らしで痩せている

妻が愛しく気懸かりなことだ



サ20 4344;作者:商長首麻呂(あきのをさのおびとまろ),防人歌,静岡,布勢人主,悲別,恋情

[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)

和須良牟弖  努由伎夜麻由伎  和例久礼等  和我知々波々波  和須例勢努加毛

忘らむて 野行き山行き 吾れ来れど  吾が父母は 忘れせのかも

わすらむて のゆきやまゆき われくれど わがちちははは わすれせのかも、

忘れようとして野を走り山を越えたけれど

やはり父母のことを忘れることはできないのだよ



サ20 4345;作者:春日部麻呂(かすがべのまろ),防人歌,恋情,望郷,静岡,布勢人主

[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)

和伎米故等  不多利和我見之  宇知江須流  々々河乃祢良波  苦不志久米阿流可

吾妹子と 二人吾が見し うち寄する 駿河の嶺らは 恋しくめあるか

[仮名] わぎめこと ふたりわがみし [うちえする] するがのねらは くふしくめあるか

妻といつも見ていた駿河の嶺々 

恋しくも懐かしいことであるなあ
、* 「うちえする」は「うちよする」、駿河に掛かる枕詞。上代東国方言、
  波の打ち寄せる駿河の国の意。
、* 「ね」は峰。
、* 「め」は(係助詞)上代恋しくめあるか 東国方言で「も」。
、* 「か」は詠嘆・感動の終助詞。コイシイコトダナア。



サ20 4346;作者:丈部稲麻呂(いなまろ),防人歌,望郷,恋情,静岡,布勢人主

[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)

知々波々我  可之良加伎奈弖  佐久安<例弖>  伊比之氣等<婆>是  和須礼加祢<豆>流

父母が 頭掻き撫で 幸くあれて 言ひし言葉ぜ 忘れかねつる

ちちははが かしらかきなで さくあれて いひしけとはぜ わすれかねつる

旅立つとき父母が頭を撫で

幸よ共にあれと言われた言葉ぞ

忘れられないでいるよ
* 「掻き」は接頭語、語勢を強める。
* 「て」は上代東国方言、格助詞「と」にあたる。
* 「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形。



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