ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

百人一首71〜80

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長からむ 心もしらず 黒髪の みだれてけさは 物をこそ思へ 
侍賢門院堀川
 
<百首の歌奉りける時 恋の心を詠める 千載集・恋三>

【歌意】
・・・・・・・・・・・
末長く変わらないという
あの人の心もおしはかれずに
この黒髪が寝乱れているように
今朝の私は
心乱れて思い悩んでいる
・・・・・・・・・・・

【語句・文法】

あの人の気持ちはいつまでも続くのかしら
この幸せは永く続くのかしら
乱れたこの黒髪のように思い悩む私の心
           (雪の玉水)
いわゆる「後朝(きぬぎぬ)」の歌。契りを結んだ翌朝、分かれた後の男が心変わりせぬかと心の高ぶり、思い悩む心情として、別れた直後の男に贈った歌、という設定で詠んでいる。

「長」「乱れ」は「髪」の縁語。
「黒髪の」→「みだれ」の枕詞、ないしは比喩の序詞。

* 長からむ 心もしらず; 
「長から」は、形容詞「長し」のカリ活用未然形で「黒髪」と縁語関係。
「む」婉曲表現の助動詞「む」の連体形。
「心」は相手の男の愛情。
「も」は強意係助詞。
「しら」は動詞「知る」の未然形で、理解する意。
「ず」は打消の助動詞「ず」の連用形、ないしは終止形。

* 黒髪の みだれてけさは 物をこそ思へ; 
「黒髪の」は「みだれ」の枕詞ないしは比喩の序詞。
「の」たとえを表わす格助詞、黒髪のようにの意。文法的には主格表示。
「みだれ」は下二段活用「乱る」の連用形。
「て」は順接の接続助詞。
「は」は他と区別・強調する係助詞。
強意の係助詞「こそ」の結びは、動詞已然形の「思へ」(主語は作者)。
五七調。
第二句が第四句に掛かる。


【参考歌】紀貫之「拾遺集」

朝な朝な けづればつもる 落ち髪の みだれて物を 思ふころかな


【主な派生歌】

うちかへし 思ひぞわぶる ながからん 契もしらず いひし恨は  
(武者小路実陰)
ながからむ いのちもしらず 白みゆく このわが髪を 誰かいとしめ
(山中智恵子)


【作者や背景】

待賢門院堀河 たいけんもんいんのほりかわ 生没年未詳
別称:伯女・伯卿女・前斎院六条

村上源氏。右大臣顕房の孫。
父は神祇伯をつとめ歌人としても名高い顕仲。
姉妹の顕仲女(重通妾)・大夫典侍・上西門院兵衛はいずれも勅撰歌人。

はじめ前斎院令子内親王(白河第三皇女。鳥羽院皇后)に仕え、六条と称される。のち待賢門院藤原璋子(鳥羽院中宮。崇徳院の母)に仕えて堀河と呼ばれた。この間、結婚し子をもうけたが、まもなく夫と死別し(家集)、まだ幼い子は父の顕仲の養子に出した(新千載集所載歌)。
康治元年(1142)、待賢門院の落飾に従い出家し、仁和寺に住んだ(山家集)。
この頃、西行との親交が知られる。

院政期の代表的女流歌人。
大治元年(1126)の摂政左大臣忠通歌合、
大治三年(1128)の西宮歌合などに出詠。
また崇徳院が主催し久安六年(1150)に奏覧された『久安百首』の作者に名を列ねる。
家集『待賢門院堀河集』(以下「堀河集」と略)がある。
金葉集初出。勅撰入集67首。
中古六歌仙。女房三十六歌仙。小倉百人一首に歌をとられている。



【<恋> 出典: フリー引用句集『ウィキクォート(Wikiquote)】

散文
恋は狂気である。-プラトン『饗宴』
恋とは、明敏で、生き生きとして、陽気な興奮状態である。--ミシェル・ド・モンテーニュ
恋はどんな薬草でも癒せない。--w:オウィディウス、『変身物語』
"Nullis amor est sanabilis herbis." - Publius Ovidius Naso, Metamorphoses

詩歌
ほととぎすなくや五月のあやめぐさあやめも知らぬ恋もするかな -よみ人知らず『古今和歌集』

恋歌一巻頭歌。
夢にだに見で明かしつる暁の恋こそ恋のかぎりなりけれ
和泉式部『新勅撰和歌集』

都都逸
一つ消えてはも一つ灯る恋の炎と蛍火と-作者不明
恋にこがれてなく蝉よりもなかぬ螢が身をこがす-鴬亭金升
三千世界の烏を殺しぬしと朝寝がしてみたい-高杉晋作
人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ--作者不明
人の恋路を邪魔する奴は窓の月さえ憎らしい--作者不明

【小倉百人一首「恋」】
筑波嶺の 峰よりおつる みなの川  恋ぞつもりて淵となりぬる
-- 陽成天皇
難波潟 みじかき蘆の ふしのまも あはでこの世を すぐしてよとや
-- 伊勢
わびぬれば いまはたおなじ 難波なる 身をつくしても あはむとぞ思ふ
-- 元良親王
今こむと いひしばかりに 長月の 有明の月を まちいでつるかな
--素性法師
名にし負はば 逢坂山のさねかづら 人にしられで 来るよしもがな
--藤原定方
みかの原 わきて流るる いづみ川 いつみきとてか 恋しかるらむ
--藤原兼輔
有明の つれなく見えし 別れより あかつきばかり うきものはなし
--壬生忠岑
夏の夜は まだ宵ながら あけぬるを 雲のいづこに 月やどるらむ
--清原深養父
忘らるる 身をば思はず ちかひてし 人の命の 惜しくもあるかな
--右近
浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき
--源等
忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで 
--平兼盛 
恋すてふ 我が名はまだき 立ちにけり 人しれずこそ 思ひそめしか
--壬生忠見
ちぎりきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波こさじとは
 --清原元輔
あひみての のちの心に くらぶれば 昔は物を 思はざりけり
--藤原敦忠
あふことの たえてしなくば なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし
--藤原朝忠
あはれとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな
--藤原伊尹
由良のとを 渡る舟人 かぢをたえ ゆくへも知らぬ 恋の道かな
--曽禰好忠
風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな
--源重之
みかきもり 衛士のたく火の 夜はもえて  昼は消えつつ 物をこそ思へ
--大中臣能宣
君がため 惜しからざりし いのちさへ 長くもがなと 思ひけるかな
--藤原義孝
かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしもしらじな もゆる思ひを
--藤原実方
あけぬれば 暮るるものとは 知りながら なほうらめしき 朝ぼらけかな
 --藤原道信
なげきつつ ひとりぬる夜の あくるまは いかに久しき ものとかはしる
--藤原道綱母
忘れじの ゆく末までは かたければ 今日をかぎりの いのちともがな
--高階貴子
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に いまひとたびの あふこともがな
--和泉式部
ありま山 ゐなの笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする
--大弐三位
いまはただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな
--藤原道雅
うらみわび ほさぬ袖だに あるものを 恋にくちなむ 名こそをしけれ
--相模
憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを
--源俊頼
瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ
--崇徳天皇
長からむ 心もしらず 黒髪の みだれてけさは 物をこそ思へ
--待賢門院堀河
ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただありあけの 月ぞ残れる
--藤原実定
夜もすがら 物思ふころは 明けやらで  閨のひまさへ つれなかりけり
--俊恵
なげけとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな
--西行
難波江の 蘆のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき
--皇嘉門院別当
玉の緒よ たえなばたえね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする
--式子内親王  
見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色はかはらず
--殷富門院大輔
きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む
--藤原良経
わが袖は 潮干にみえぬ 沖の石の 人こそしらね かわくまもなし
--二条院讃岐
こぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くやもしほの 身もこがれつつ
--藤原定家

諺と格言
恋と戦争は、手段を選ばない。--英語の諺他
All's fair in love and war.
博打で幸運、恋愛で不運。--フランスの諺
恋するものは皆詩人。--出典不明




【出典・引用・転載元】
<三木幸信・中川浩文共著書本>・
<ブログ[北極星は北の空から〜ブログの中に] >・
<千人万首>・<Wikipedia>・
<小倉百人一首 注釈>・
<フリー引用句集『ウィキクォート(Wikiquote)>等から。

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