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3978天平19年3月20日,作者:大伴家持,望郷,恋情,悲別,枕詞,高岡 [題詞]述戀緒歌一首[并短歌] ・・・・・・・・・・・・・
妹毛吾毛ー妹も吾れもーいももあれもー妻も私も 許己呂波於夜自ー心は同じーこころはおやじー思いは同じである 多具敝礼登ーたぐへれどーたぐへれどー寄り添っていても 伊夜奈都可之久ーいやなつかしくーますます慕わしく 相見<婆>ー相見ればーあひみればー床に入れば 登許波都波奈尓ー常初花にーとこはつはなにーいつも初花のように新鮮で 情具之ー心ぐしーこころぐしーせつなく苦しい気詰まりもなく 眼具之毛奈之尓ーめぐしもなしにー気がかりで見苦しい思いも無しに 波思家夜之ーはしけやしー愛しい 安我於久豆麻ー吾が奥妻ーあがおくづまーわが心の奥の妻よ 大王能ー大君のーおほきみのー陛下の 美許登加之古美ー命畏みーみことかしこみーご命令を畏れ謹んで 阿之比奇能ー[あしひきの]ー 夜麻古要奴由伎ー山越え野行きーやまこえぬゆきー山を越え野を過ぎ 安麻射加流ー天離るー[あまざかる]ー 比奈乎左米尓等ー鄙治めにとーひなをさめにとー都から空遠く隔たった地方を治めるため 別来之ー別れ来しーわかれこしー別れてきた 曽乃日乃伎波美ーその日の極みーそのひのきはみーその日を最後 荒璞能ー[あらたまの]ー 登之由吉我敝利ー年行き返りーとしゆきがへりー年が改まり 春花<乃>ー春花のーはるはなのー春の花が 宇都呂布麻泥尓ーうつろふまでにー散る季節になるまで 相見祢婆ー相見ねばーあひみねばー共寝することが出来ないので 伊多母須敝奈美ーいたもすべなみー何とも致し方がなく 之伎多倍能ー敷栲のー[しきたへの]ー 蘇泥可敝之都追ー袖返しつつーそでかへしつつー袖を折り返しながら 宿夜於知受ー寝る夜おちずーぬるよおちずー寝る夜毎に 伊米尓波見礼登ー夢には見れどーいめにはみれどー夢に見るけれど 宇都追尓之ーうつつにしー現実に 多太尓安良祢婆ー直にあらねばーただにあらねばーじかに躰を触れるわけではないから 孤悲之家口ー恋しけくーこひしけくー恋しさは 知敝尓都母里奴ー千重に積もりぬーちへにつもりぬー千重に積もった 近<在>者ー近くあらばーちかくあらばー近くにいるのなら 加敝利尓太仁母ー帰りにだにもーかへりにだにもーちょっと帰るだけでも 宇知由吉○ーうち行きてーうちゆきてー都へ行って 妹我多麻久良ー妹が手枕ーいもがたまくらー妻と手枕を 佐之加倍○ーさし交へてーさしかへてー差し交わして 祢天蒙許万思乎ー寝ても来ましをーねてもこましをー寝て来ようものを 多麻保己乃ー玉桙のー[たまほこの]ー 路波之騰保久ー道はし遠くーみちはしとほくーなにしろ道は遠く 關左閇尓ー関さへにーせきさへにー間には関さえ 敝奈里○安礼許曽ーへなりてあれこそー隔てているのだから 与思恵夜之ー[よしゑやし]ー ままよ 餘志播安良武曽ーよしはあらむぞー手立てはあるはずだ 霍公鳥ーほととぎすー霍公鳥が 来鳴牟都奇尓ー来鳴かむ月にーきなかむつきにー来て鳴く四月に 伊都之加母ーいつしかもー(副詞「いつしか」に、係助詞「も」のついたもの)いつか 波夜久奈里那牟ー早くなりなむーはやくなりなむー早くならないものか 宇乃花能ー卯の花のーうのはなのー卯の花が 尓保敝流山乎ーにほへる山をーにほへるやまをー咲きにおう山を 余曽能未母ーよそのみもーよそ目にばかり 布里佐氣見都追ー振り放け見つつーふりさけみつつー眺めやりつつ 淡海路尓ー近江道にーあふみぢにー近江道に 伊由伎能里多知ーい行き乗り立ちーいゆきのりたちー足を踏み入れ 青丹吉ー[あをによし]ー 奈良乃吾家尓ー奈良の吾家にーならのわぎへにー奈良の吾が家で 奴要鳥能ーぬえ鳥のー[ぬえどりの]ー 宇良奈氣之都追ーうら泣けしつつーうらなけしつつーぬえ鳥のようにしのび泣きながら 思多戀尓ー下恋にーしたごひにー〕(「した」は心の意)面には出さず 於毛比宇良夫礼ー思ひうらぶれーおもひうらぶれー恋しさに打ちひしがれて 可度尓多知ー門に立ちーかどにたちー門先に立っては 由布氣刀比都追ー夕占問ひつつーゆふけとひつつーいつ逢えるかと夕占で占ったりしつつ 吾乎麻都等ー吾を待つとーわをまつとー私を待ち焦がれて 奈須良牟妹乎ー寝すらむ妹をーなすらむいもをー寝ているだろう妻に 安比○早見牟ー逢ひてはや見むーあひてはやみむー早く逢いたいそして共寝しよう ・・・・・・・・・・・・・ 3979 天平19年3月20日,作者:大伴家持,望郷,恋情,悲別,枕詞,高岡 [題詞](述戀緒歌一首[并短歌]) 安良多麻<乃> 登之可敝流麻泥 安比見祢婆 許己呂毛之努尓 於母保由流香 あらたまの としかへるまで あひみねば こころもしのに おもほゆるかも ・・・・・・・・・・・・・
年が改まるまで共寝しなかったので 心もうちしおれるばかりに妻が恋しく思えることだ ・・・・・・・・・・・・・ * 「相見る」は、単に顔を合わせる意から、性交渉のまで含む。ここでは妻の肌身を恋い慕っていることを強調。 3980 天平19年3月20日,作者:大伴家持,枕詞,望郷,恋情,悲別,高岡 [題詞](述戀緒歌一首[并短歌]) 奴婆多麻乃 伊米尓<波>母等奈 安比見礼騰 多太尓安良祢婆 孤悲夜麻受家里 ぬばたまの いめにはもとな あひみれど ただにあらねば こひやまずけり ・・・・・・・・・・・・・
夜の夢ではやたらと逢っているが じかに触れるわけではないのだから 恋しさは止みはしなかった ・・・・・・・・・・・・・ |
万葉集索引第十七巻
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