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3971 天平19年3月3日,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,,書簡,枕詞,恋情,悲嘆,高岡 [題詞] 夜麻扶枳能 之氣美<登>i久々 鴬能 許恵乎聞良牟 伎美波登母之毛 やまぶきの しげみとびくく うぐひすの こゑをきくらむ きみはともしも ・・・・・・・・・・・・・
山吹の茂みを飛びくぐる鴬の声を 聞いてらっしゃるでしょうあなたがうらやましいですよ ・・・・・・・・・・・・・ 3972 天平19年3月3日,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,,書簡,恋情,悲嘆,高岡 [題詞] 伊泥多々武 知加良乎奈美等 許母里為弖 伎弥尓故布流尓 許己呂度母奈思 いでたたむ ちからをなみと こもりゐて きみにこふるに こころどもなし ・・・・・・・・・・・・・
立って出かけて行く力がないので家に籠もったままでいて 貴方に逢いたいと思うと もう心の在り処も失ってしまいます ・・・・・・・・・・・・・ * 「恋う」 思い慕う。愛する。懐かしく思う。 3973 天平19年3月5日,作者:大伴池主,贈答,枕詞,高岡,遊覧,大伴家持,書簡 [題詞] 昨日述短懐今朝汗耳目ー昨日短懐を述べ今朝耳目を汗(けが)すー昨日は拙い思いを申し述べ今朝また卑書で貴兄の耳と目を汚すことをお許しください 更承賜書且奉不次ー更に賜書を承り且つ不次を奉るーさらにお便りを賜りまた乱文を差し上げる次第にございます 死罪々々ー死罪謹言ー恐縮至極 不遺下賎頻恵徳音ー下賎を遺(わす)れず頻りに徳音を恵むー小生のような下賎の者をもお忘れなくしきりに御書をお恵み下さいました 英<霊>星氣逸調過人ー英霊星気あり逸調人に過るー貴兄の文才は星の如く輝き歌の調べは群を抜いておられます 智水仁山既ヒ琳瑯之光彩ー智水仁山は既に琳瑯の光彩を{褞}(つつ)みー山河の如き偉大な才は美玉の光彩を内に包み 潘江陸海自坐詩書之廊廟ー潘江陸海は自らに詩書の廊廟に坐すー潘江(六朝の文人潘岳の文才を大河に喩える)・陸海(同じく陸機の文才を海に喩える)に比すべき才はもとより文芸の殿堂に至っておられます 騁思非常託情有理ー思を非常に騁せ心を有理に託(よ)せー詩想は非凡に駆け心情は道理に委ね 七歩成章數篇満紙ー七歩章を成し数篇紙に満つー七歩歩く間に詩文を成したちまち数編の詩が紙を満たします 巧遣愁人之重患ー巧みに愁人の重患を遣りー愁いに沈む人の重い患いも巧みに晴らし 能除戀者之積思ー能く恋者の積思を除くー恋する者の積もる思いもよく除いて下さいます 山柿歌泉比此如蔑ー山柿の歌泉は此に比ぶれば蔑(な)きが如しー山柿の歌泉もこれに比べれば無きに等しい 彫龍筆海粲然得看矣ー彫龍の筆海は粲然として看るを得たり矣ー龍を彫る如き筆で描かれた詩は燦然と輝いて目を見張られますー 方知僕之有幸也ー方に僕(わ)が幸(さきはひ)有るを知りぬー(そのような詩文を贈られた)小生はなんと幸せ者か身に染みてわかりました 敬和歌其詞云ー敬みて和ふる歌其の詞に云はくー謹んでお答えする歌、その歌と申しますのは ・・・・・・・・・・・・・
憶保枳美能ー大君のーおほきみのー天皇陛下のご 弥許等可之古美ー命畏みーみことかしこみー命令を畏れ謹んで 安之比奇能ー[あしひきの]ー 夜麻野佐<波>良受ー山野さはらずーやまのさはらずー山も野も障害とせずに行き 安麻射可流ー天離るー[あまざかる]ー 比奈毛乎佐牟流ー鄙も治むるーひなもをさむるー都から天遠く離れた地方を治める 麻須良袁夜ー大夫やーますらをやーますらおの貴方が 奈邇可母能毛布ーなにか物思ふーなにかものもふー何をお悩みになるのでしょう 安乎尓余之ー[あをによし]ー 奈良治伎可欲布ー奈良道来通ふーならぢきかよふー奈良道を行き来する 多麻豆佐能ー玉梓のー[たまづさの]ー 都可比多要米也ー使絶えめやーつかひたえめやー使者が絶えることなどございましょうか 己母理古非ー隠り恋ひーこもりこひー家に籠もって恋いしがり 伊枳豆伎和多利ー息づきわたりーいきづきわたりー嘆息しつつ 之多毛比<尓>ー下思にーしたもひにー面には出さず 奈氣可布和賀勢ー嘆かふ吾が背ーなげかふわがせー悲嘆にくれなさる親愛なる友よ 伊尓之敝由ーいにしへゆー昔から 伊比都藝久良之ー言ひ継ぎくらしーいひつぎくらしー言い伝えられて来ましたように 餘乃奈加波ー世間はーよのなかはー現世とは 可受奈枳毛能曽ー数なきものぞーかずなきものぞー果敢ないものにございます 奈具佐牟流ー慰むるーなぐさむるー気休め 己等母安良牟等ーこともあらむとーにもなろうかと 佐刀○等能ー里人のーさとびとのー里の者が 安礼邇都具良久ー吾れに告ぐらくーあれにつぐらくー私に告げて曰く 夜麻備尓波ー山びにはーやまびにはー山辺では 佐久良婆奈知利ー桜花散りーさくらばなちりー桜の花が散り 可保等利能ー貌鳥のーかほどりのー郭公が 麻奈久之婆奈久ー間なくしば鳴くーまなくしばなくー絶えずしきりに鳴いています 春野尓ー春の野にーはるののにー春の野に 須美礼乎都牟<等>ーすみれを摘むとーすみれをつむとー菫を摘もうと 之路多倍乃ー白栲のー[しろたへの]ー 蘇泥乎利可敝之ー袖折り返しーそでをりかへしー真っ白な袖を折り返し 久礼奈為能ー紅のー[くれなゐの]ー 安可毛須蘇妣伎ー赤裳裾引きーあかもすそびきー紅の裳の裾を引き 乎登賣良<波>ー娘子らはーをとめらはー乙女たちは 於毛比美太礼弖ー思ひ乱れてーおもひみだれてー心を乱して 伎美麻都等ー君待つとーきみまつとー貴方を待つとて 宇良呉悲須奈理ーうら恋すなりーうらごひすなりー心の内に恋しています 己許呂具志ー心ぐしーこころぐしー心が晴れずうっとうしい。せつなく苦しい 伊謝美尓由加奈ーいざ見に行かなーいざみにゆかなーさあ見に行きましょう 許等波多奈由比ーことはたなゆひー◇ことはたなゆひ 事は・たな(しっかりと)・結ひ(約束して)の意かという。万葉集の原文は「許等波多奈由比」。『万葉集略解』の宣長説では「由比」を「思礼」の誤りと見てコトハタナシレと訓み、「さやうに心得たまへ」の意とする。 ・・・・・・・・・・・・・ 3974 天平19年3月5日,作者:大伴池主,贈答,大伴家持,恋情,遊覧,書簡,高岡 [題詞] 夜麻夫枳波 比尓々々佐伎奴 宇流波之等 安我毛布伎美波 思久々々於毛保由 やまぶきは ひにひにさきぬ うるはしと あがもふきみは しくしくおもほゆ ・・・・・・・・・・・・・
山吹の花が日ごとに美しく咲いていきます そのように麗しい貴方のことがしきりに思われます ・・・・・・・・・・・・・ 3975 天平19年3月5日,作者:大伴池主,贈答,大伴家持,恋情,遊覧,書簡,高岡 [題詞] 和賀勢故邇 古非須敝奈賀利 安之可伎能 保可尓奈氣加布 安礼之可奈思母 わがせこに こひすべながり あしかきの ほかになげかふ あれしかなしも ・・・・・・・・・・・・・
親愛なる貴方が恋しくてならず 蘆垣で隔てたように 他所ながら嘆き続けている私が 悲しくてやりきれません ・・・・・・・・・・・・・ 3976 天平19年3月5日,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,書簡,病気,恨,憧憬,恋情,高岡 [題詞]短歌<二首> 佐家理等母 之良受之安良婆 母太毛安良牟 己能夜万夫吉乎 美勢追都母等奈 さけりとも しらずしあらば もだもあらむ このやまぶきを みせつつもとな ・・・・・・・・・・・・・
咲いたと知らずにいたら黙ってもいたろうに 貴方ときたらこの美しい山吹をむやみに見せてくださって ・・・・・・・・・・・・・ 3977 天平19年3月5日,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,病気,恋情,高岡,書簡,孤独 [題詞](短歌<二首>) 安之可伎能 保加尓母伎美我 余里多々志 孤悲家礼許<曽>婆 伊米尓見要家礼 あしかきの ほかにもきみが よりたたし こひけれこそば いめにみえけれ ・・・・・・・・・・・・・
葦垣の外に貴方が寄り立って 私を恋い慕って下さったからこそ 貴方が夢に現れたのでした ・・・・・・・・・・・・・ |
万葉集索引第十七巻
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