|
3871 雑歌,山口,民謡,歌謡,歌垣,譬喩 [題詞] 角嶋之 迫門乃稚海藻者 人之共 荒有之可杼 吾共者和海藻 つのしまの せとのわかめは ひとのむた あらかりしかど われとはにきめ ・・・・・・・・・・・・
角島の瀬戸のわかめは他人と一緒だと荒々しいが 私には柔らかなわかめなんだ あの女は人には靡かないが俺にはなびくということだな ・・・・・・・・・・・・ * 角島 角島は、山口県下関市豊北町に属し、日本海(響灘)に浮かぶ島。山口県の北西端。北長門海岸国定公園に含まれる。本州とは海士ヶ瀬戸で隔てられていたが、2000年に1780mの角島大橋が竣工した。 3872 雑歌,女歌,恨,恋,民謡,歌謡 [題詞] 吾門之 榎實毛利喫 百千鳥 々々者雖来 君曽不来座 わがかどの えのみもりはむ ももちとり ちとりはくれど きみぞきまさぬ ・・・・・・・・・・・・
わが家の門にある榎木の実を啄みに 百千鳥が毎日やって来る ああ それなのに 貴方だけはどうしたものか おいでにならない ・・・・・・・・・・・・ * 「もり食む」は、もぎとって食べる意。 * 「百千鳥」は、いろいろな鳥。 * 「君ぞ」あなただけは。「ぞ」は、係助詞。 * 「来まさぬ」は、おいでにならない。いらっしゃらない。 「来」カ行変格動詞「来」の連用形。 「まさ」尊敬の補助動詞「ます」の未然形。 「ぬ」打消の助動詞「ず」の連体形。「ぞ」の結び。 3873 雑歌,女歌,遊行女婦,歌謡 [題詞] 吾門尓 千鳥數鳴 起余々々 我一夜妻 人尓所知名 わがかどに ちとりしばなく おきよおきよ わがひとよづま ひとにしらゆな ・・・・・・・・・・・・
わが家の門に千鳥がしきりに鳴てる 夜が明けるぞ起きろ起きろって 私は貴方の一夜妻よ 人に気づかれないように さあ お帰りください ・・・・・・・・・・・・ 3874 序詞,問答,恋雑歌,回想,歌謡 [題詞] 所射鹿乎 認河邊之 和草 身若可倍尓 佐宿之兒等波母 [いゆししを つなぐかはへの にこぐさの] みのわかかへに さねしこらはも ・・・・・・・・・・・・
その柔らかい草のように 身も心も若かった頃 抱いた乙女を思い出す ・・・・・・・・・・・・ * 「にこ草」葉や茎の柔らかい草。一説に、ハコネシダの古名とも。多く序詞に用いられる。 3875 雑歌,序詞,問答,恋 [題詞] ・・・・・・・・・・・・
琴酒乎ー琴酒をー[ことさけを]ー 押垂小野従ー押垂小野ゆーおしたれをのゆー押垂の小野から 出流水ー出づる水ーいづるみづー流れ出る水 奴流久波不出ーぬるくは出でずーぬるくはいでずー生暖かくは流れ出ないで 寒水之ー寒水のーさむみづのー冷たい水 心毛計夜尓ー心もけやにーこころもけやにー心清らかに 所念ー思ほゆるーおもほゆるー 思える 音之少寸ー音の少なきーおとのすくなきー音の少ない 道尓相奴鴨ー道に逢はぬかもーみちにあはぬかもー道で逢いましょう 少寸四ー少なきよーすくなきよー人通りが少ない 道尓相佐婆ー道に逢はさばーみちにあはさばー道で逢ったら 伊呂雅世流ー色げせるーいろげせるー納得できる 菅笠小笠ー菅笠小笠ーすげかさをがさー菅笠の小さな笠と 吾宇奈雅流ー吾うなげるーわがうなげるー私が頸にする 珠乃七條ー玉の七つ緒ーたまのななつをー珠で出来た七緒の首飾りと 取替毛ー取り替へもーとりかへもー取り替えましょう 将申物乎ー申さむものをー申し上げるのですが 少寸ー少なき道にーすくなきみちにー人通りの少ない道で 道尓相奴鴨ー逢はぬかもーあはぬかもー逢えないでしょうか ・・・・・・・・・・・・ [題詞]豊前國白水郎歌一首 豊國 企玖乃池奈流 菱之宇礼乎 採跡也妹之 御袖所沾計武 とよくにの きくのいけなる ひしのうれを つむやといもが みそでぬれけむ ・・・・・・・・・・・・
豊国の企救にある池一面に浮き生える 菱の先を摘んできたのかな 貴女のみ袖が濡れている ・・・・・・・・・・・・ 3877 雑歌,大分,民謡,恋愛,歌謡 [題詞]豊後國白水郎歌一首 紅尓 染而之衣 雨零而 尓保比波雖為 移波米也毛 くれなゐに そめてしころも あめふりて にほひはすとも うつろはめやも ・・・・・・・・・・・・
紅色に染めた衣 雨が降り濡れて色が鮮やかになっても その色が褪せることがあるでしょうか ・・・・・・・・・・・・ 3878 雑歌,石川,枕詞,民謡,歌謡,中島町,伝承,嘲笑,戯笑 [題詞]能登國歌三首 [左注]右一首傳云 或有愚人 斧堕海底而不解鐵沈無理浮水 聊作此歌口吟為喩也 はしたての くまきのやらに しらきをの おとしいれ わし かけてかけて ななかしそね うきいづるやとみむ わし ・・・・・・・・・・・・
梯立の熊来の沼に新羅斧を落としてさ ほりゃしょ いささかもわあわあ泣くなよ 沼に沈んだ斧が浮いてくるかどうか見ていよう ほりゃしょ 熊来の女神さんが 浮かべてくださるかもしれんぞ ・・・・・・・・・・・・ * わし 感動詞 よいしょ。▽歌謡の中のはやしことば。 * 「かけ」心や口の端にかけること。口に出して言うこと。また、そのことば。 <chi**kokkk>さん著。【能登国の歌3首】 https://blogs.yahoo.co.jp/chiyokokkk/28538359.html?type=folderlist 中央の人々に対する歌語りで、3首は、別々の歌。 まず、第1首は、 ♪はしたて 熊来のやらに 新羅斧 落し入れ わし かけてかけて な泣かしそね 浮き出づるやと見む わし (万葉集・巻16・3878) (はしたて熊来の海底(やら)に、新羅斧、そんな大事な斧を 落っことしてしまって。わっしょい 気に懸けすぎて、泣きべそかかっしゃるな。浮き出てくるかもしれんぞ。見ていてやろう。 わっしょい。) この歌には、こんな伝えがある。 ある時愚か人がいた。持っていた斧が海の底に落ちてしまったが、鉄が沈んだら、どう見ても浮かぶはずのないのも わからずにいた。そこでまわりの者慰みにこの歌を作り、吟さんであてこすりに喩したという。 斧を落とす話は、西洋にも、「金の斧、銀の斧」がある。 「金の斧、銀の斧」は、正直者のハッピーエンドの童話になっているが、西洋でも、愚か者が、斧を落とす話が、あったと思われる。 愚か人には、愛嬌がある。わっしょい、からかいながらも、水泳の得意な者たちが、必死で探してくれたんでしょうかね・・・ 愛すべきドジは、世界中どこにでもいて、物語になっていくらしい。 能登半島は、暖地性の針葉樹が多く、船材の産地だった。 天平宝字 7年(763)の遣渤海使船の名は、「能登」だった。 日本人は、船・汽車など、乗物に、名前をつけますね。すてき!(*^▽^*)ノ だから、斧は、特に大事な道具だった。 対馬海流のおかげで、古代は、能登・出雲は文化先進国だった。(筑紫も(#´ο`#)) 朝鮮・中国とも独自に貿易していた。 鉄の質は、日本より新羅の方がよかったから、「新羅斧」は立派な舶来斧だった。 家持の歌に、能登の船材名産地の歌がある。 ♪とぶさ立て 舟木伐るといふ 能登の島山 今日見れば 木立繁しも 幾代神びそ (巻17・4026) (とぶさを立て 船材を伐り出すという 能登の島山 今日見ると 木立が茂っている 幾代経てこうも神々しくなったのであろうか) 「能登の国」は、養老 2年(718) 5月 2日、越中を割いて一国となり、天平13年(741)12月10日、越中に吸収合併されたが、天平勝宝 9歳(757) 5月 8日、再び、越中から独立した。 家持が、越中守時代(746〜751)には、能登の国はなかった。 だから、能登国3首は、家持以外の誰かさんの仕事らしい。<了> 3879 雑歌,石川,枕詞,中島町,民謡,歌謡,嘲笑,戯笑 [題詞](能登國歌三 首) [はしたての] くまきさかやに まぬらるやつこ わし さすひたて ゐてきなましを まぬらるやつこ わし ・・・・・・・・・・・・
熊来の造り酒屋で怒鳴られるど奴め わし 誘い立てて連れて来たらよかったけれど やめた 怒鳴られているど奴め わし ・・・・・・・・・・・・ * 「熊来酒屋」は「熊来の酒造り所(醸造所)」の意。 * 「コメカミ」に始まる古の酒造りは、聖なる女性の天下。村落を成した。 * 「はしたて」は「はしご」のこと。「熊来」の枕詞と思われる。不詳。 * 「ま・ぬらる・奴(やっこ)」マは接頭語、ヌラルは罵(の)ラル、叱られる意。 * め 【奴】接尾語 人を卑しめののしる意。ドジ!。やられているのは多分男。 * 「さすひ」は「さすふ」の連用形。「さすふ」は東国訛り「誘(さそ)ふ」のこと。 * 「立て」は、命令形で「立て・立たせ」 * 「率(ゐ)」は上一動「率(ゐ)る」の連用形。「連れだし」 * 「まし」は反実仮想の助動詞、「もし〜だったら〜だっろう」。 * 「を」は接続助詞で、「〜が」「〜のに」 「わし」囃言葉。主に女性が親しい間柄で用いた。どんな囃言葉だったろう?。梯子から落ちたか?気を抜いたのを見とがめられ気合を入れられたか? 相当喝の入ったものだったにちがいない。 祭りのワッショイとは違うだろう。 <chi**kokkk>さん著。 https://blogs.yahoo.co.jp/chiyokokkk/28539153.html?type=folderlist ♪はしたて 熊来酒屋に まぬらぬ奴(やつこ) わし さすひ立て 率て来なましを まぬらむ奴 わし (万葉集・巻16・3879) (はしたて 熊来の酒蔵で、どやされているどじな奴。わっしょい。引っ張り出して連れて来てやりたいんだけどな。どじな奴。わっしょい。) 酒を盗んで、捕まった仲間をはやす歌。 古代、酒造りは、女性の仕事。 女にどやされているどじな奴、わっしょい。 若者の元気な声が、聞こえます。 第3種は、さしみのレシピ。 ♪鹿島嶺(かしまね)の 机の島の しただみを い拾(ひり)い持ち来て 石もち つつき破り 早川に 洗い濯ぎ 辛塩に こごと揉み 高杯(たかつき)に盛り 机に立てて 母にあへつや 目豆児(めづこ)の刀自(とじ) 父にあへつや 身女児(みめこ)の刀自 (万葉集・巻16・3880) (鹿島嶺近くの、世に名の聞こえる机の島の しただみ、そのしただみ貝を 拾って運んで、石でこつこつつき破り、早い流れで ざぶざぶ洗い濯ぎ、辛塩で ごしごし揉んで、足付き皿に盛り上げて、机の上にきちんと立てて、母さんにご馳走したかい、かわいいおかみさん、父さんにご馳走したかい、愛くるしいおかみさん。) わらべ歌。 小さい女の子が、ままごと遊びをしている場面。 「鹿島嶺」は、石川県七尾市東方の宝達山脈。 カシマシをかけて、評判の高い意をこめている。 「机の島」は、七尾沖の雌島。ホントニ、机のように平べったい。 「しただみ」は、円錐形の海産巻貝(ニナ)。 ざっとゆでて、爪楊枝で、ほじくり食べる。けっこう、おいしかった記憶があります。 「辛塩」は、煮詰めた海水。 「あへ」は、饗(あ)ふ。食事を整えて、もてなす意。 「刀自」は、主婦。 ♪ま〜ま〜ごとしましょ、・・・母さんご馳走いかがです〜♪ こんな童謡があったけど、歌詞は忘れました。てへ。 土団子のおご馳走、葉っぱをきざんでお好み焼き、、、私は広島産!(*^▽^*)ノ<了> 3880 雑歌,石川,能登島,民謡,歌謡 [題詞](能登國歌三首) ・・・・・・・・・・・・
所聞多祢乃ー鹿島嶺のーかしまねのー鹿島の峰伝いの 机之嶋能ー机の島のーつくゑのしまのー机の島の 小螺乎ーしただみをー小螺を 伊拾持来而ーい拾ひ持ち来てーいひりひもちきてー拾い集めて来て 石以ー石もちーいしもちー石で 都追伎破夫利ーつつき破りーつつきやぶりー殻をつつき破り 早川尓ー早川にーはやかはにー早川で 洗濯ー洗ひ濯ぎーあらひすすぎー洗い濯いで 辛塩尓ー辛塩にーからしほにー辛塩に 古胡登毛美ーこごと揉みーこごともみー転がして揉んで 高坏尓盛ー高坏に盛りーたかつきにもりー高杯に盛って 机尓立而ー机に立ててーつくゑにたててー机に立てて 母尓奉都也ーははにあへつやー母親に上げたか 目豆兒乃<○>ー目豆児の刀自ーめづこのとじー可愛い子のそなた 父尓獻都也ー父にあへつやーちちにあへつやー父親に上げたか 身女兒乃<○>ー身女児の刀自ーみめこのとじー愛し子が慕うそなた ・・・・・・・・・・・・ |
全体表示
[ リスト ]


