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3811雑歌,枕詞,恋,女歌,歌物語,伝承,作者:車持娘子 [題詞]戀夫君歌一首[并短歌] [左注](右傳云 時有娘子 姓車持氏也 其夫久逕年序不作徃来 于時娘子係戀傷心 沈臥痾エ 痩羸日異忽臨泉路 於是遣使喚其夫君来 而乃歔欷流な口号斯歌 登時逝歿也) ・・・・・・・・・・・
左耳通良布ーさ丹つらふー[さにつらふ]ー 君之三言等ー君がみ言とーきみがみこととー聞きたかった愛しの言葉 玉梓乃ー玉梓のー[たまづさの]ー 使毛不来者ー使も来ねばーつかひもこねばー伝える使いも来ないので 憶病ー思ひ病むーおもひやむー恋はつのり患う 吾身一曽ー吾が身ひとつぞーあがみひとつぞー私の身はただ独り 千<磐>破ー[ちはやぶる]ー 神尓毛莫負ー神にもな負ほせーかみにもなおほせー神のせいにはしない 卜部座ー占部据ゑー[うらへすゑ]ー 龜毛莫焼曽ー亀もな焼きそーかめもなやきそー亀の甲羅を焼くなどもしない 戀之久尓ー恋ひしくにーこひしくにー片恋するのが 痛吾身曽ー痛き我が身ぞーいたきあがみぞー痛ましい私の身の定め 伊知白苦ー[いちしろく]ー 身尓染<登>保里ー身にしみ通りーみにしみとほりー身に染み透り 村肝乃ー[むらきもの]ー 心砕而ー心砕けてーこころくだけてー心は張り裂けて 将死命ー死なむ命ーしなむいのちー死にいくこの命 尓波可尓成奴ーにはかになりぬー病は悪化していく 今更ー今さらにーいまさらにー今さらに 君可吾乎喚ー君か吾を呼ぶーきみかわをよぶー貴方は私を呼ぶでしょうか 足千根乃ー[たらちねの]ー 母之御事歟ー母のみ言かーははのみことかー母の行いか 百不足ー百足らずー[ももたらず]ー 八十乃衢尓ー八十の衢にーやそのちまたにー多くの辻に 夕占尓毛ー夕占にもー[ゆふけにも]ー 卜尓毛曽問ー占にもぞ問ふーうらにもぞとふー夕占に願を占う 應死吾之故ー死ぬべき吾がゆゑーしぬべきわがゆゑー死に行く私なのに ・・・・・・・・・・・ 3812 雑歌,恋情,女歌,歌物語,伝承,作者:車持娘子 [題詞](戀夫君歌一首[并短歌])反歌 卜部乎毛 八十乃衢毛 占雖問 君乎相見 多時不知毛 うらへをも やそのちまたも うらとへど きみをあひみむ たどきしらずも ・・・・・・・・・・・
* 「うら・べ」 【卜部・占部】名詞 律令制で、「神祇官(じんぎくわん)」に属し、占いをつかさどった職。また、その職にある者。卜の斎瓮にも 八十辻占にも問うが 貴方に直逢うことすらの 手段を知ることがない ・・・・・・・・・・・ 3813 雑歌,歌物語,女歌,枕詞,恋,伝承,作者:車持娘子 [題詞](戀夫君歌一首[并短歌])或本反歌曰 吾命者 惜雲不有 散<追>良布 君尓依而曽 長欲為 わがいのちは をしくもあらず [さにつらふ] きみによりてぞ ながくほりせし ・・・・・・・・・・・
私の命は惜しくはありません ただ 貴方に寄り添えてさえいれば 長く居たいと思うだけです ・・・・・・・・・・・ * 「さに‐つらう」[枕]「つらう」は「つら(頬)」の動詞化という。 赤く照り映える意で、「色」「黄葉(もみち)」「君」「妹」などにかかる。 3814 雑歌,求婚,譬喩,歌物語,伝承,恋 [題詞]贈歌一首 真珠者 緒絶為尓伎登 聞之故尓 其緒復貫 吾玉尓将為 しらたまは をだえしにきと ききしゆゑに そのをまたぬき わがたまにせむ ・・・・・・・・・・・
真珠を繋いでいた緒が切れてしまった そう聞きました その切れた緒をまた真珠に通して 改めて私の宝玉にしたいときめました ・・・・・・・・・・・ 3815 雑歌,譬喩,歌物語,伝承,恋 [題詞]答歌一首 [左注]右傳云 時有娘子 夫君見棄改適他氏也 于時或有壮士 不知改適此歌贈 遣請誂於女之父母者 於是父母之意壮士未聞委曲之旨 乃作彼歌報送以顕改適之縁也 白玉之 緒絶者信 雖然 其緒又貫 人持去家有 しらたまの をだえはまこと しかれども そのをまたぬき ひともちいにけり ・・・・・・・・・・・
白玉の緒が切れたことは本当です でも その切れた緒を白玉に通しなおして 他の人がすでに持ち去りました ・・・・・・・・・・・ 3816 雑歌,作者:穂積皇子,宴席,伝承,誦詠,戯笑,恋 [題詞]穂積親王御歌一首 [左注]右歌一首穂積親王宴飲之日酒酣之時好誦斯歌以為恒賞也 家尓有之 櫃尓カ刺 蔵而師 戀乃奴之 束見懸而 いへにありし ひつにかぎさし をさめてし こひのやつこの つかみかかりて ・・・・・・・・・・・
家に置いてある櫃に鍵を掛けて 人目を避けて大切に納めておいた宝玉を 恋の奴が掴みかかってきて奪い去ったのだ ・・・・・・・・・・・ 3817 雑歌,作者:河村王,誦詠,伝承,宴席,戯笑,恋 [題詞] [左注](右歌二首河村王宴居之時弾琴而即先誦此歌以為常行也) 可流羽須波 田廬乃毛等尓 吾兄子者 二布夫尓咲而 立麻為所見 [田廬者多夫世<反>] ・・・・・・・・・・・
二人で搗く唐臼(からうす)は 田圃の伏屋の中にあると 愛しい貴方が にこにこと微笑みながら 立っておいでになるのが見える ・・・・・・・・・・・ 3818 雑歌,作者:河村王,誦詠,伝承,宴席,戯笑,恋 [題詞] [左注]右歌二首河村王宴居之時弾琴而即先誦此歌以為常行也 朝霞 香火屋之下乃 鳴川津 之努比管有常 将告兒毛欲得 [あさかすみ] かひやがしたの なくかはづ しのひつつありと つげむこもがも ・・・・・・・・・・・
朝霞の中 鹿火屋の下で鳴く蛙の啼き声のように しのひつ しのひつと 忍びあう恋を告げてくれる そんな娘がほしいなあ ・・・・・・・・・・・ 3819 雑歌,作者:小鯛王,宴席,奈良,譬喩,恋,伝承,誦詠,置始工,置始多久美,遊行女婦 [題詞] [左注](右歌二首小鯛王宴居之日取琴 登時必先吟詠此歌也 其小鯛王者更名置始多久美斯人也) 暮立之 雨打零者 春日野之 草花之末乃 白露於母保遊 ゆふだちの あめうちふれば かすがのの をばながうれの しらつゆおもほゆ ・・・・・・・・・・・
夕立の雨が打ち降ったあとに 春日の野の尾花の穂先につく白露が また物を思わせることよ ・・・・・・・・・・・ * 「夕立ち」は、タ行四段活用動詞「夕立つ」の連用形が名詞化したもの。* 「うち」は接頭語。 * 「降れ」は、ラ行四段活用動詞「降る」の已然形。 * 「ば」偶然条件の接続助詞。 * 「尾花」は、すすきの花穂。 * 「末(うれ)」は、木の枝や草の葉の先端。 * 「思ほゆ」は、ハ行四段活用動詞「思ふ」の未然形。 * 「ゆ」は、(上代語)自発の助動詞。「おもはゆ」の転。 3820 雑歌,作者:小鯛王,置始工,置始多久美,誦詠,宴席,伝承,遊行女婦,恋 [題詞] [左注]右歌二首小鯛王宴居之日取琴 登時必先吟詠此歌也 其小鯛王者更名置始多久美斯人也 右の歌二首、小鯛王(こだひのおほきみ)、宴居の日に、 琴を取れば登時(そのとき)必ず先ず、この歌を吟詠す。 その小鯛王は更(また)の名を置始多久美(おきそめの たくみ)といふ、この人なり。 夕附日 指哉河邊尓 構屋之 形乎宜美 諾所因来 ゆふづくひ さすやかはへに つくるやの かたをよろしみ うべよそりけり ・・・・・・・・・・・
夕日が射している川辺の そこにに建っている家の形が美しい まことに 求めるものがあるのか 自然に引き寄せられることだなあ ・・・・・・・・・・・ |
万葉集索引第十六巻
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2016/11/2(水) 午後 7:36 [ ニキタマの万葉集 ]