ニキタマの万葉集

当て字の繭玉をほぐそう、枕詞で古代を解明しよう。

万葉集索引第十四巻

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3368 東歌,相聞,神奈川県,湯河原町,恋情,序詞

[題詞]

阿之我利能 刀比能可布知尓 伊豆流湯能 余尓母多欲良尓 故呂河伊波奈久尓

あしがりの 土肥の河内に 出づる湯の よにもたよらに 子ろが言はなくに 

[あしがりの とひのかふちに いづるゆの] よにもたよらに ころがいはなくに
・・・・・・・・・・・
足柄山の麓土肥の河原に湧き出る温泉のように

二人の仲が絶えることはないと

あの娘は言ってはくれない
・・・・・・・・・・・
* 「よにもたよらに」は、温湯の湧き続ける様を、絶えることのない二人の仲と譬喩的に表現。



3369 東歌,相聞,神奈川県,足柄,民謡,宴会,口説き,恋

[題詞]

阿之我利乃 麻萬能古須氣乃 須我麻久良 安是加麻可左武 許呂勢多麻久良

あしがりの 麻万の小菅の 菅枕 あぜかまかさむ 子ろせ手枕 

[あしがりの ままのこすげの すがまくら] あぜかまかさむ ころせたまくら
・・・・・・・・・・・
足柄の麻方の小菅を束ねたような質素な菅枕をしなくても 

わたしの手枕のほうがいいですよ   娘さん
・・・・・・・・・・



3370 東歌,相聞,神奈川県,箱根,序詞,恋,恨

[題詞]

安思我里乃 波故祢能祢呂乃 尓古具佐能 波奈都豆麻奈礼也 比母登可受祢牟

あしがりの 箱根の嶺ろの にこ草の 花つ妻なれや 紐解かず寝む 

[あしがりの はこねのねろの にこぐさの] はなつつまなれや ひもとかずねむ
・・・・・・・・・・・
足柄の箱根の嶺に生えている若草が

花だけで実がならないように

あなたは「花つ妻」なのか

神祭りの「障りの妻」なのか

それなら紐を解かないで寝るしかない

そんなはずはないと思いつつ
・・・・・・・・・・・
* 「花つ妻」は実際に寝ない妻の意。



3371 東歌,相聞,神奈川県,足柄,恋,うわさ、防人

[題詞]

安思我良乃 美佐可加思古美 久毛利欲能 阿我志多婆倍乎 許知弖都流可<毛>

足柄の み坂畏み 曇り夜の 吾が下ばへを こち出つるかも 

あしがらの みさかかしこみ [くもりよの] あがしたばへを こちでつるかも
・・・・・・・・・・・
足柄のうっそうとした峠は恐ろしい

なにも隠し事はできない

曇り夜のような

朧げに秘めていた恋人の名まで

つい口に出してしまったことよ
・・・・・・・・・・・



3372 東歌,相聞,神奈川県,大磯,序詞,恋

[題詞]

相模治乃 余呂伎能波麻乃 麻奈胡奈須 兒良波可奈之久 於毛波流留可毛

相模道の 余綾の浜の 真砂なす 子らは愛しく 思はるるかも 

[さがむぢの よろぎのはまの まなごなす] こらはかなしく おもはるるかも
・・・・・・・・・・・
相模路の余綾の浜の真砂のように

美わしいあの娘は心切なく愛しいことよ
・・・・・・・・・・・



3373 東歌,相聞,埼玉県,東京都,多摩川,のろけ、作業歌


[題詞]

多麻河泊尓 左良須弖豆久利 佐良左良尓 奈仁曽許能兒乃 己許太可奈之伎

多摩川に さらす手作り さらさらに なにぞこの子の ここだ愛しき 

[たまかはに さらすてづくり] さらさらに なにぞこのこの ここだかなしき
・・・・・・・・・・・
多摩川の川面に流す手織り布

さらさら流して仕上げる手織り布

どうしてこの子がこんなにも 

抱くたびに愛しくてたまらないと

この娘がかわいくてたまらないと

いい人にいわれたよ いわれたよ

さらにさらに さらにさらに
・・・・・・・・・・・
* 多摩川河畔では手織りの麻布を朝廷に調(税)として献上した。今も調布の地名を残す。  
///////////
【名歌鑑賞】さん。
https://blogs.yahoo.co.jp/sakuramitih15/40396732.html?vitality
多摩川に晒(さら)す手作りの布のように、さらにさらに、どうしてこの子がこんなにもいとしくてならないのだろう。
川に布を晒すのは、柔らかく美しくするためです。
多摩川流域は麻の栽培が盛んであった。
律令時代に税の一つに「調」があり、麻布が収められていた。東京の「調布」や「麻布」の地名はその名残りです。
注・ 手作り=手織りの布。
  さらす=水に晒して布地を美しくする。
  さらさらに=「さらにさらに」を掛ける。
  ここだ=量の多いこと。はなはだしいこと。



サ3374 東歌,相聞,埼玉県,東京都,女歌,うわさ,人目,恋

[題詞]

武蔵野尓 宇良敝可多也伎 麻左弖尓毛 乃良奴伎美我名 宇良尓R尓家里

武蔵野に 占部肩焼き まさでにも 告らぬ君が名 占に出にけり 

[むざしのに うらへかたやき まさでにも] のらぬきみがな うらにでにけり
・・・・・・・・・・・
武蔵野の占部神祇官に

鹿の肩焼で占ってもらった

まさしくそこに

私に名を告げなかったあなたの名が

真実 現れたわ
・・・・・・・・・・・
* 「まさで‐に」【正でに】[副]「で」は状態・方法の意の「て(手)」。本当に。真実に。
* 占部は、神祇官に属し、占いを司った者。また、その職。
* 「かた‐やき」〔名〕上代の占いの一つ太占(ふとまに)のこと。鹿の肩骨に溝を彫り、火にあてて、そのひび割れの形で吉凶を占う。亀卜(きぼく)も同様。
* 男が心を許さないために実名を告げずに男女の関係を持つと、名のりを拒否されたその女の一族に恥をかかせた恨みをかう。




3375 東歌,相聞,埼玉県,東京都,序詞,女歌,悲別,恋

[題詞]

武蔵野乃 乎具奇我吉藝志 多知和可礼 伊尓之与比欲利 世呂尓安波奈布与

武蔵野の をぐきが雉 立ち別れ 去にし宵より 背ろに逢はなふよ 

[むざしのの をぐきがきぎし たちわかれ] いにしよひより せろにあはなふよ
・・・・・・・・・・・
武蔵野の穴にすむ雉のように

あわただしく飛び立って

立ち別れたあの宵

あれっきり

あの人に逢えなくてせつないよ
・・・・・・・・・・・
* 「をぐき」は雉が住む洞。



3376 東歌,相聞,埼玉県,東京都,うわさ,人目,恋,女歌

[題詞]

古非思家波 素弖毛布良武乎 牟射志野乃 宇家良我波奈乃 伊呂尓豆奈由米

恋しけば 袖も振らむを 武蔵野の うけらが花の 色に出なゆめ 

こひしけば そでもふらむを むざしのの うけらがはなの いろにづなゆめ
・・・・・・・・・・・
恋しくなったら私が袖を振るでしょう

でも あなたは

武蔵野に生えるうけらの花のように

私への思いを表面に出してはいけませんよ 
・・・・・・・・・・・
* 「うけらの花」は、今は「オケラ」。屠蘇にも入っている薬草。秋に花をつける。



3376S 東歌,相聞,埼玉県,東京都,異伝,恋,序詞

[題詞]或本歌曰

伊可尓思弖 古非波可伊毛尓 武蔵野乃 宇家良我波奈乃 伊呂尓R受安良牟

いかにして 恋ひばか妹に 武蔵野の うけらが花の 色に出ずあらむ 

[いかにして こひばかいもに むざしのの] うけらがはなの いろにでずあらむ
・・・・・・・・・・・
どうすれば恋する妻へ思いを

武蔵野のうけらの花のように

表面に出さずにすむのだろうか
・・・・・・・・・・・



3377 東歌,相聞,埼玉県,東京都,女歌,恨,恋,序詞

[題詞]

武蔵野乃 久佐波母呂武吉 可毛可久母 伎美我麻尓末尓 吾者余利尓思乎

武蔵野の 草葉もろ向き かもかくも 君がまにまに 吾は寄りにしを 

[むざしのの くさはもろむき かもかくも] きみがまにまに わはよりにしを
・・・・・・・・・・・
武蔵野の草葉がいっせいにこちらを向くように

とにもかくにもあなたの思うがままに

私は寄り添うのだよ 君に向かって
・・・・・・・・・・・

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2016/6/23(木) 午後 9:08 [ ニキタマの万葉集 ]


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