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3329 枕詞 [題詞] ・・・・・・・・・・・
白雲之ー白雲のーしらくものー白雲が 棚曳國之ーたなびく国のーたなびくくにのー棚引く国の 青雲之ー青雲のーあをくものー青い雲が 向伏國乃ー向伏す国のーむかぶすくにのー地平線に懸かる国の 天雲ー天雲のーあまくものー天雲の 下有人者ー下なる人はーしたなるひとはー下に住む人は 妾耳鴨ー我のみかもーあのみかもー私だけなのでしょうか 君尓戀濫ー君に恋ふらむーきみにこふらむー君に恋した 吾耳鴨ー吾のみかもーあのみかもー私だけが 夫君尓戀礼薄ー君に恋ふればーきみにこふればー君を慕っているからか 天地ー天地にーあめつちにー天と地の 満言ー言を満ててーことをみててー神に誓いを立てて 戀鴨ー恋ふれかもーこふれかもー恋慕っているからか ○之病有ー胸の病みたるーむねのやみたるー胸が病んでいるような 念鴨ー思へかもーおもへかもー重苦しい想いからか 意之痛ー心の痛きーこころのいたきー心が疼く 妾戀叙ー我が恋ぞーあがこひぞーわが恋であることよ 日尓異尓益ー日に異にまさるーひにけにまさるー慕情は日々に益してくる 何時橋物ーいつはしもーいつといって 不戀時等者ー恋ひぬ時とはーこひぬときとはー恋慕わない時 不有友ーあらねどもーあらねどもー はないのだけれど 是九月乎ーこの九月をーこのながつきをーこの九月を 吾背子之ー吾が背子がーわがせこがー愛しい人の 偲丹為与得ー偲ひにせよとーしのひにせよとー思い出にしなさいと 千世尓物ー千代にもーちよにもー千代に渡って 偲渡登ー偲ひわたれとーしのひわたれとー偲びなさい 万代尓ー万代にーよろづよにー万代に 語都我部等ー語り継がへとーかたりつがへとー語り継なぎなさいと 始而之ー始めてしーはじめてしー語らい始めた 此九月之ーこの九月のーこのながつきのーこの九月が 過莫呼ー過ぎまくをーすぎまくをー過ぎようとしているのを 伊多母為便無見ーいたもすべなみーなんとも仕方がない 荒玉之ー[あらたまの]ー 月乃易者ー月の変ればーつきのかはればー月が変わると 将為須部乃ー為むすべのーせむすべのー喪の物忌みをすませ弔うことも出来なくなって どうしたらよいのか 田度伎乎不知ーたどきを知らにーたどきをしらにーなすすべも思いつかず 石根之ー岩が根のー[いはがねの]ー岩山の 許凝敷道之ーこごしき道のーこごしきみちのー荒々しい険しい道を 石床之ー岩床のー[いはとこの]ー 根延門尓ー根延へる門にーねばへるかどにー岩に根が生え延びる門から 朝庭ー朝にはーあしたにはー朝には 出座而嘆ー出で居て嘆きーいでゐてなげきー家から出ては嘆き 夕庭ー夕にはーゆふへにはー夕べには 入座戀乍ー入り居恋ひつつーいりゐこひつつー家に戻って想い出し 烏玉之ー[ぬばたまの]ー 黒髪敷而ー黒髪敷きてーくろかみしきてー黒髪を床に流して 人寐ー人の寝るーひとのぬるー人が寝るように 味寐者不宿尓ー味寐は寝ずにーうまいはねずにー恋人と寝るような楽しく寝ることが出来ずに 大船之ー大船のー[おほぶねの]ー 行良行良尓ーゆくらゆくらにーゆらゆら揺れるように 思乍ー思ひつつーおもひつつー揺れる気持ちで思いながら 吾寐夜等者ー吾が寝る夜らはーわがぬるよらはー私が寝る夜を 數物不敢<鴨>ー数みもあへぬかもーよみもあへぬかもー数えることは出来ないでしょう ・・・・・・・・・・・ 3330 榛原,桜井,奈良,亡妻歌 [題詞] ・・・・・・・・・・・
隠来之ー隠口のー[こもりくの]ー 長谷之川之ー泊瀬の川のーはつせのかはのー泊瀬の川の 上瀬尓ー上つ瀬にーかみつせにー川上の瀬に 鵜矣八頭漬ー鵜を八つ潜けーうをやつかづけー鵜を沢山潜らせて 下瀬尓ー下つ瀬にーしもつせにー川下の瀬でも 鵜矣八頭漬ー鵜を八つ潜けーうをやつかづけー鵜を沢山潜らせて 上瀬之ー上つ瀬のーかみつせのー川上の瀬では <年>魚矣令咋ー鮎を食はしめーあゆをくはしめー上流の<年>魚をくわえさせ 下瀬之ー下つ瀬のーしもつせのー川下の瀬でも 鮎矣令咋ー鮎を食はしめーあゆをくはしめー下流のアユをくわえさせ 麗妹尓ーくはし妹にーくはしいもにー麗しい妻に 鮎遠惜ー鮎を惜しみーあゆををしみー食べさせる鮎を逃すのが惜しく <麗妹尓 鮎矣惜>ーくはし妹に鮎を惜しみーくはしいもにあゆををしみー麗しい妻に食べさせたいあゆなのに 投左乃ー投ぐるさのーなぐるさのー 鮎を逃さないように放った矢は 遠離居而ー遠ざかり居てーとほざかりゐてー水に流れて遠ざかって行ったようにあの世へ遠ざかり 思空ー思ふそらーおもふそらー亡き妻を思う 不安國ー安けなくにーやすけなくにー貴女を想う気持ちは穏やかでなく 嘆空ー嘆くそらーなげくそらー嘆いてみても 不安國ー安けなくにーやすけなくにー気持は穏やかでないので 衣社薄ー衣こそばーきぬこそばーこれが衣ならば 其破者ーそれ破れぬればーそれやれぬればー破けたら <継>乍物ー継ぎつつもーつぎつつもー縫い合わせれば 又母相登言ーまたも合ふといへーまたもあふといへーまた裂け目は合うといい 玉社者ー玉こそばーたまこそばー真珠ならば 緒之絶薄ー緒の絶えぬればーをのたえぬればー紐が切れれば 八十一里喚鶏ーくくりつつー括って結びなおせば 又物逢登曰ーまたも合ふといへーまたもあふといへーまた結び合うと云うのに 又毛不相物者ーまたも逢はぬものはーまたもあはぬものはー再び逢うことがないのは ○尓志有来ー妻にしありけりーつまにしありけりー妻だけなのでしょうか ・・・・・・・・・・・ 3331 桜井,奈良,亡妻歌,歌謡,山讃美 [題詞] ・・・・・・・・・・・
隠来之ー隠口のー[こもりくの]ー 長谷之山ー泊瀬の山ーはつせのやまー泊瀬の山と 青幡之ー青旗のー[あをはたの]ー青い葬旗の 忍坂山者ー忍坂の山はーおさかのやまはー忍坂の山は 走出之ー走出のーはしりでのー稜線がなだらかに続く 宜山之ーよろしき山のーよろしきやまのー流麗なる山 出立之ー出立のーいでたちのー山の外見だけではなく 妙山叙ーくはしき山ぞーくはしきやまぞー美しい山だ 惜ーあたらしきー亡妻の眠るその<「あたら・し」[形シク]それに相当するだけの価値がある、というところから、そのままにしておくには惜しいほどりっぱだ。すばらしい。>あたら惜しい山が 山之ー山のーやまのー墓地には 荒巻惜毛ー荒れまく惜しもーあれまくをしもー人が通わなくなり山が荒れていいくのは惜しいことだ ・・・・・・・・・・・ [題詞] たかやまと うみとこそば やまながら かくもうつしく うみながら しかまことならめ ひとははなものぞ うつせみよひと
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高山と海こそは 山はこのように現実にあり 海としてあるがまま真実に存在する ただ人は花のようにはかない はかないのは世の人間である ・・・・・・・・・・・ |
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